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神からの依頼と新しい仲間

「受けるのは構いませんが、なぜ俺達に?」

頭を下げてきたシュミール神に、慎吾はそう聞いた。

この依頼を受けるのは、慎吾達にとってもメリットがある。

神であれば、慎吾がリーンヘイムに帰る方法も知っているだろうと思われるからだ。

だが、シュミール神の方にはわざわざ慎吾に限定して依頼する理由が無い。

それこそ、神託のようなモノで力のある者をかき集めれば良いのだ。

「理由はいくつかあるんだけど、君達に深く関係のある理由を言っておこうか」

そう言って、シュミール神は足を組み替えて話しはじめた。

「彼ら『欠番者』は我々神から身を隠す際に、いくつか我々の技術を盗んでいる。その中にはもちろん、攻撃手段として使う者も含まれているが・・・」

そう言ってシュミール神は慎吾達、と言うより慎吾の方に目を向けた。

「その技術の一つに、『果てなき繋門(インヴルートポーター)』というものがある。召喚魔方陣の上位互換にあたるもので、一度繋がった他の世界と自在に行き来できるというものだ」

「それって・・・!」

シュミール神の言葉の先を察して、慎吾は声を上げる。

「そう。これを使ってシンゴ・ツルギとその仲間が地球と今回新しく繋がった世界とを行き来することを許可する事を、今回の報酬にするつもりだ」

慎吾の様子に頷きながら、シュミール神はそう断言した。

「リーンヘイムだけじゃなく、地球にも帰れるのか・・・?」

シュミール神のその言葉に、慎吾思わずそう呟く。

正直なところ、慎吾は地球に帰るということにあまり執着していない。

今の親とは血がつながっていないため、うまくいってなかった。

勝間や美香の他にも友人は居たものの、二人以外はそれほど親しいというわけでもない。

そして何よりリーンヘイムと地球の時間の差の問題があり、慎吾は地球への帰還は諦めかけていたのだ。

とは言え、やはり帰れるなら帰りたい。

その上地球とリーンヘイムのどちらかを選ぶ必要が無いと言うのであれば、慎吾としては願ってもない提案だった。

「・・・ちょっと、待ってくれないか?もしもシンゴが両方の世界を行き来したいと思わなければ、この依頼を受ける意味は無いのではないか?」

しかし、エレイナがそこへ待ったをかけた。

このままでも、少なくとも地球かリーンヘイムのどちらかへの帰還は叶う。

それでも良いのでは無いかと、エレイナは言っているのだ。

もっとも、エレイナとしても慎吾にリーンヘイムだけに留まって居てほしいからそう言っている訳ではない。

ほとんど縁の無いこの世界で、慎吾が命を賭ける必要は無いと言っているのだ。

「シンゴ・ツルギの様子を見る限り、それを聞いてくる意味はなさそうだけど・・・。元々話すつもりではあったし、今話しても大丈夫か・・・」

エレイナの言葉に少し考えたシュミール神だが、やがて真剣そうな顔を慎吾達に向けてきた。

「実は、今のこの世界は次元的に隔離状態にある」

「は?それって、どういう・・・」

いきなりのシュミール神の話に、珍しく慎吾がキョトンとする。

「どうもこうも、そのまんまの意味さ。正確には地球から勇者達が来たときを境に、天上の神域を初めとする全ての異世界との縁が切れた状態にある」

そんな慎吾の様子に、シュミール神は肩を竦めながら説明した。

「それって・・・」

「ああ、恐らくは『欠番者』の仕業だろうね。地球の勇者が来たときに不可解な時間の誤差があったのも、多分その影響だ。神域からの監視を気にせずに、おおっぴらに動けるようにってところだろう」

慎吾の呟きに、シュミール神が頷く。

シュミール神がわざわざ塔から出てきてまで慎吾達に依頼したのも、これが原因の一つだ。

神々がこの世界に干渉できないため、大勢の人間で事態に対応させるという事ができないのである。

唯一例外的に動くことのできるシュミール神は、塔に縛られている上に元々それほど信仰者が多いわけではない。

よって、このような苦肉の策に出たのだ。

「というわけで、このままでは君達だけでなく地球から来た勇者達も元の世界に戻ることはできない」

「マジか・・・。勝間達に、どうやって伝えようか・・・」

シュミール神の言葉に、慎吾は頭を抱えた。

正直神云々の話は知ったことではないが、元の世界に戻れないというのは相当ショックが大きい。

その上、勝間達はこの世界の魔王を倒したら地球に帰れると信じているのだ。

彼らに本当の事を話すかどうか考えると、頭がいたくなってくる慎吾であった。

「それは、君に任せるよ。正直、神の身である僕は色々と制約が多くてね。で、この依頼は受けてもらえるかな?」

シュミール神はそう言って、慎吾達の方へと手を差し出してきた。

慎吾達三人はお互いに頷きあい、エレイナがその手を取る。

「もちろんだ!」


依頼を受けることが正式に決まると、報酬等の相談に移った。

とは言え、慎吾としては先ほどの『果てなき繋門』だけでも十分である。

シュミール神がそれだけでは足りないと言ってきたので、ミーリャの両親を探してもらう約束を追加した程度だ。

ミーリャの両親がどうなったにしろ、神に頼んだ以上すぐにでも何らかの結果は出るだろう。

「さて、正式に依頼を受けてもらえる事が決定したけど・・・。こっちから何も出さないのは気が引けるから君達に仲間を付けようと思うんだけど、どうかな?」

「仲間、ですか?」

シュミール神からの突然の提案に、慎吾は首を傾げる。

それは、隣のミーリャとエレイナも一緒だ。

わざわざ、依頼をしてきたシュミール神が慎吾達に仲間をつける理由が分からなかった。

あるとすれば、案内役か監視役といったところだろうか。

慎吾達のことを知らない以上、それも仕方がない。

「あ、別に監視役とかそういうんじゃないよ?付ける子も普通の・・・とは言えないけど人間だし、気に入らなかったら拒否してくれて構わない」

「一応、一度会ってみても良いですか?」

慎吾達の懸念を見抜いたシュミール神の言葉に、慎吾は少し考えてそう返した。

監視役でないなら、なおさら慎吾達につける理由が分からない。

とは言え仲間が増えるのはありがたいので、一応会うだけ会ってみようと思ったのだ。

考え方や戦闘スタイルが慎吾達と合わなければ今後にも影響するので、それを踏まえて決めようと考えたのである。

シュミール神も拒否して良いと言っているので、その点気楽だった。

「分かった。オーイ、入っても良いよ」

「・・・失礼する」

慎吾の言葉に頷いたシュミール神が扉の方へ声をかけると、頭からマントを被った小柄な人物が入ってくる。

シュミール神が塔からやって来たときに、一緒に居た最後の一人だ。

その人物はシュミール神の傍らまで行くと、慎吾達の方を向いてマントを脱ぎ去った。

「・・・女の子?」

マントの下に隠れていた顔を見て、ミーリャが声を上げた。

顔立ちは勝間達より少し下の15歳といったところで、どこかの貴族令嬢と言っても通じるような整った造形をしている。

髪は明るい黄金色、瞳は澄んだエメラルドカラーだ。

やや眼光が鋭い気がするが、十人中八人は可愛いと評するだろう。

「失礼だな、シンゴ・ツルギ。向こうの世界では無茶苦茶にしてくれたと言うのに、もう忘れたか?」

呆然としていた慎吾を見て、少女は少し不機嫌そうに言った。

その言葉に、部屋の空気が凍る。

カチッと隣で小さく音がなったのを聞いて、嫌な予感にかられた慎吾は壊れたゼンマイ人形のように首を回す。

「・・・シンゴ、貴様リーンヘイムで何をやったのだ?場合によっては、この場で剣を抜くことになるぞ?」

「い、いや!ちょっと待て、エリー!そもそも俺は、こんな子の事なんて知らねーよ!」

腰に帯びていた剣の柄に手をかけたエレイナが出した凍えそうな声に、慎吾は必死で首を横に振る。

その横では、ミーリャがジト目で睨んでいた。

そもそも慎吾がリーンヘイムでいた3年間の内、最初の1年は戦闘訓練ばかりやっていた。

そのあとはエレイナ達のパーティーに誘われたので、年がら年中拠点と戦場の行き来で終わっている。

このような少女をどうこうする余裕など、あるはずも無かった。

「貴様もだぞ、精霊神の加護を受けた『戦剣姫ヴェーラ』よ」

「む、なぜお前がその名を知っている?」

続いた少女の言葉に、殺気立っていたエレイナの気配が和らぐ。

戦剣姫とは、エレイナがいつの間にやら付けられていた二つ名である。

もっとも勇者としての知名度が高かったので、その名前を知っている者は極めて少ない。

エレイナが『戦剣姫』だと把握しているのは各国の重鎮など、多くても五十人は居ないだろう。

「そういえば、なんでこの子がリーンヘイムの事を知ってるんだ?」

と、ここまで来てようやく慎吾が違和感を覚えた。

普通に考えるとシュミール神が教えたと考えるべきだろうが、それにしては少女の話し方はえらく当事者ぶっている。

そもそも、エレイナの二つ名などシュミール神ですら知っているかどうか怪しい。

どういうことかと慎吾がシュミール神に目線を向けると、彼は目線を少女の方へ向けた。

「当然だろう。我もお前達と共に、あの召喚魔方陣でこの世界に飛ばされたのだからの」

「俺達と、一緒に?」

胸を張って答える少女に、慎吾はますます分からなくなる。

あの時魔方陣の現れた魔王の部屋に居たのは、慎吾達の仲間だけだ。

このような少女など、どこにも居なかったはずだ。

と、そこで慎吾はある事に気づく。

「いや、待てよ。まさか・・・」

「ふん、ようやく気付きおったか。聡明な御主にしては、ずいぶんと時間がかかったの。この世界に来て、腑抜けたのではないか?」

思わずといった様子で呟く慎吾に、少女は不機嫌げに鼻を鳴らした。

あの部屋には慎吾達だけでなく、もう一人居たはずだ。

そう、あの部屋の主とも言える存在が。

思わずといった様子で顔を向ける慎吾に、シュミール神はその名前を口にした。

「彼女・・・シーム・ヘルゲールは、君達の世界で魔王と呼ばれていた者だ」

まさかの、魔王登場。

しかも、女の子。

一話で死んだんじゃ、というツッコミは無しでお願いします。

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