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迷宮攻略開始と一日目の戦果

慎吾達が魔迷宮〈ニリバルト〉に潜る許可を得た、次の日。


慎吾達は、ニルバルトの入り口前に来ていた。

もちろん、今日から迷宮の攻略を始めるからである。


「さてと、迷宮攻略開始と行きますか!」

「なんか、妙にテンションが高いね、シンゴ・・・」


両手を打ち合わせながら宣言する慎吾に、引き気味のミーリャが欠伸を堪えながら返す。

ちなみに、迷宮の入り口付近には慎吾達以外の人影は見られない。

人で溢れかえって賑わいを見せる大通りも、今は静寂に包まれている。

それもそのはずで、今は地球で言うところの午前5時ごろ。

ちょうど、東の空に太陽が出てきた時刻である。

当然、町の住民はまだ寝ている時刻だ。

店も夜に営業する所を除いて、その扉を閉めている。

朝が早いギルドでさえ、まだ扉がしまっている頃である。

依頼を受けた冒険者も、この時間帯にはいるはずもない。

なぜそんな時間にここに居るかと言うと、単純に慎吾が興奮で早く起きすぎたためである。

エレイナとミーリャはそれに巻き込まれた形で、慎吾に引っ張られて来たのだ。


「だって、迷宮の攻略を始めるんだぞ?男なら、一度は夢見るだろう!」

「それにしても、早く起きすぎたろ・・・。後、周りの家の迷惑になるから静かにしろ」


珍しく熱弁する慎吾に、エレイナが冷静な突っ込みを入れる。

本音としては、『お前の都合に私達を巻き込むな』と言ったところだろう。

もっとも、その意図が慎吾に伝わったかどうかは不明だが。

爛々と目を輝かせて塔を見上げる慎吾を見るに、少なくとも慎吾はエレイナの本音を汲み取ってはいないだろう。

頭の回る慎吾にしては珍しい光景で、相当興奮していることが分かる。


「シンゴって、そっちの世界でも迷宮とか行くときはこんなかったの?」

「少なくとも、私達と一緒に旅をしていたときにはこんな事は無かったな。もっとも、迷宮自体に行ったことが無かったがな」


若干戸惑い気味のミーリャからの質問に、エレイナは肩をすくめながら答える。

リーンヘイムにも迷宮は存在するが、エレイナ達は行ったことがない。

迅速に魔王の元へ向かうために、寄り道は必要ないと思われたからだ。

そのため、今の慎吾の様子はエレイナも初めて見る光景だったりする。

リーンヘイムで迷宮に行かなくて良かったと、内心少し安堵しているエレイナであった。


「あれ?シンゴとエレイナって、旅に出てから知り合ったの?」

「そう言えば、ミーリャには言ってなかったか。私達とシンゴは、旅の最初から一緒に居たわけではないんだ。私達と会ったときで、シンゴが召喚されてから一年だったと聞いたことがある」


続くミーリャの疑問に、エレイナはそう説明した。

リーンヘイムに召喚されてから力をつけていた慎吾の噂を聞きつけたエレイナ達が、慎吾をパーティに誘ったのだ。

その頃には、既に慎吾は『精霊拳帝』と呼ばれていた。

そのため、慎吾のことでエレイナにも分からない事も多くある。


「あれ?皆さん、お早いですね?」


そうこうしていると、ギルドの制服を着た女性が話しかけてきた。

よく見ると、昨日慎吾達の受付をしてくれた女性だ。

攻略を始める時間は言っていないので、単純に早番で受付をするために来たのだろう。


「ああ。連れがあんな状態でな・・・」

「・・・なるほど」


女性の質問にエレイナが疲れた表情で慎吾を指しながら返すと、相手も納得した様子で苦笑いを返してきた。

なんでも、初めて迷宮に入る者には珍しくないのだと言う。

ある人いわく、迷宮は一部の男の冒険のロマンの一つなんだとか。

女性が受付の場所へ行き、準備をしていく。

やがて準備が終了したとの声がかかったので、慎吾達は受付を済ませて迷宮に入ることにした。

とは言っても今回はほとんど時間は取られなかったため、すぐに三人は迷宮の入り口へと向かった。


「さてと、行くか!」

「早く終わらせて、帰って寝たい・・・」


張り切る慎吾に、うんざりしたようにエレイナが返した。

ミーリャもエレイナに賛成のようで、しきりに首を縦に振っている。

もっとも、慎吾がそれを加味する事は無さそうだが。

そんなやり取りをしながら、三人は虹色に輝く迷宮の入り口に入っていく。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


慎吾達が迷宮に入ってから、およそ三時間後。


「どっせい!」


拳帝の服を着た慎吾が叫びながら拳を繰り出し、敵の腹を抉る。

それを受けた五メートル程の大きさの鋼色のサソリーー75層に居るボスのメタルスコーピオが、二十メートル頭上の天井まで吹き飛ぶ。

そのまま重力にひかれて落ちたスコーピオは、僅かに痙攣してその動きを止めた。


「ふぅ、やっと終わったか。硬すぎだろ、コイツ・・・」


かいてもいない汗を拭うふりをしながら、慎吾が愚痴る。


「こちらから見てたら、それほど苦戦しているように見えなかったぞ?」

「一応、『ターミナルボス』なんだけどね・・・」


そんな慎吾の様子を見ながら、呆れたようにエレイナとミーリャがこぼす。

ターミナルボスとは、迷宮の25層ごとに居るボスのことである。

5層ごとに居る通常のボスに比べて、全ての能力が格段に高くなっている。

とは言え、慎吾はともかくエレイナやミーリャにとってもあまり強敵とは言えない存在ではあるが。


「魔法が使えないってのも、地味にキツいな」

「100層から上のターミナルボスは、基本的にその状態らしいよ」


元の姿に戻りながら慎吾が言うと、ミーリャがいつの間にか調べていた情報を披露する。

迷宮内には『トラップ部屋』や『居るだけで延々と体力の削られる部屋』など、特殊な環境の部屋もいくつか存在する。

『魔法無効部屋』も、その一つだ。

部屋の所々に魔法陣が書かれていて、部屋に居る者の魔法を吸収してしまうのだ。そのため、あらかじめ使用していた魔法以外は使えない。

もっとも、慎吾達にはほとんど意味が無かったりする。

エレイナとミーリャはそもそも魔法を多用せず、慎吾も拳帝状態では魔法を使う必要がないからだ。

事実、慎吾は先程のメタルスコーピオ相手に身体強化以外の魔法を使わずに勝っている。


「それにしても、ここまでボス以外と全く出会わなかったな」

「俺達が強すぎて、雑魚達がビビってたんじゃね?」


首をかしげるエレイナに、慎吾が返す。

この75層まで、慎吾達はボス以外の魔物とは戦って来なかった。

理由は不明だが、慎吾達の前にそれらの魔物が現れなかったのだ。

そのボスも慎吾達の相手をするには弱すぎたため、これまで一人ずつ交代で戦ってきた始末だ。

もっとも、全員でかかろうが一人ずつかかろうが相手の運命は変わらなかったのだが。

後から聞いた話によると、迷宮の魔物は一定以上の力量差のある相手には襲ってこないらしい。

とは言っても問答無用で襲ってくる魔物も居るため、単純に運が良かったと考えるべきだろう。


「さて、次に行くか!」

「ちょっと待て、シンゴ。そろそろ昼だし、今日はここまでにしないか?」


張り切って次の層へ向かう扉へと歩こうとする慎吾を、エレイナが止める。

ちょうど慎吾達の耳に、カーンという高めの鐘の音が聞こえてきた。

現在時間を知らせる、『時刻みの神器』と呼ばれる物の音である。

音の高い小鐘と低い大鐘の二つで一組の神器で、奇数になる時間と偶数になる時間で交互に鳴って知らせてくれる。

時計という道具が開発されていないこの世界において、時間を知る唯一の方法だ。

ちなみに、どういう訳かは分からないがこの迷宮は中から外の音を聞くことができる。

そのため、音が聞こえずに時間が分からないという事はないらしい。


「小鐘が一、二、・・・六回。ちょうど、十一時か・・・」


その音の数を数えて、慎吾が小さく呟いた。


「一応昼食も持ってきているが、あまりやり過ぎても不味いだろう?」

「まあ、そうだな・・・」


エレイナの言葉に、慎吾は少し考える。

エレイナの本音としては、『朝早くから来てるんだから、そろそろ終わりにしろ』といったところか。

もちろんできるだけ目立つ事はするべきではないので、先程言った事もあながち間違いでもないが。


「あの婆さんも60層で良いって言ってたし、そろそろ帰るか」


やがて、顔を上げた慎吾がそう言った。

エレイナの本音を悟ったのかは不明だが、どうやら慎吾もこれで帰ることに決めたようだ。

エレイナとミーリャはこっそりとリヴィルに感謝したのだが、慎吾の知るところではない。

慎吾が帰ることを決めると、エレイナとミーリャは慎吾の気持ちが変わらないうちに外へ出ることにした。

正直、早く宿に帰って寝たいからだ。

メタルスコーピオの居た部屋の奥へ行くと、赤と青に輝く二つの魔法陣がある部屋に入った。

赤が次の階層に向かう転移用の魔法陣、青が迷宮の外へと出る転移用の魔法陣である。

フラフラと赤の方へと歩いていく慎吾を引っ張って、エレイナとミーリャは青の方へと入った。

魔法陣が一際強く輝くと、三人の姿はそこには無かった。

海香「そう言えば、慎吾って地球に帰ったら何歳って扱いになるの?」

慎吾「ウーン・・・。俺の感覚的には、もう二十歳なんだよな」

勝間「けど、地球の時間で言ったら僕達と一緒だよね?」

エレイナ「世界の時間の流れが違うなら、そうなるだろうな」

海「ってことは、『頭は二十歳、見た目は十六歳』ってこと?」

勝「なんか、どこかのアニメのフレーズみたいだね・・・」

エ「身体的には、向こうの時間に最適化されるかも知れないな」

慎「世界を移動するたびに、身長が伸び縮みするのか・・・。なんか、嫌だな」



先週はこれまでの話の改稿やら追加やらで、結局更新できませんでしたm(__)m

これから先も、たまにこういうことがあるかも知れないので、ご了承ください。

それはともかく、今回は慎吾達が迷宮に突入する話です。

なんか、慎吾のキャラが崩壊寸前?になってます。わざとじゃ、ないんだけどな・・・

さて、次話は、続けて迷宮攻略の予定です。

そろそろ、溜め込んだフラグを回収しときたいな。

では、また次話。

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