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依頼達成と迷宮の管理者

8月16日 本文中に追加の記述をしました。ストーリー全体としては、変更はありません。

慎吾達がレプニーチェに入ってから、二日


慎吾達は、冒険者ギルドに程近い商店に居た。三階建てで、どっしりとした構えの商店である。

今日、冒険者ギルドに行った時にここに来るように伝言があったのだ。差出人は、例の護衛依頼の商人頭である。恐らく、報酬の事で話があるのだろう。


「いらっいませ!」

「悪いんですが、店長に取り次いでもらえますか?」


店に入って真っ直ぐカウンターへ向かった慎吾は、そこにいる店員に用件を話した。


「申し訳ありませんが、アポイント無しでのお取り次は・・・」

「冒険者ギルドで、こちらに向かうように連絡を受けたんです。『シンゴ・ツルギが依頼の件で来た』と伝えて頂ければ、分かると思います」


断りを入れる店員に、慎吾は苦笑いを浮かべながら返す。


「シンゴ・ツルギ様ですね?店長に確認して参りますので、少々お待ちください」


そう言って店員は、店の奥へと入っていった。

しばらくすると、慎吾達がレプニーチェまで護衛した商隊の商人頭が慌てた様子で出てきた。恐らく、店員からの連絡を聞いて、急いで出てきたのだろう。


「いやぁ、申し訳ない。本来なら、私から出向かなくてはいけないのですが・・・」

「大丈夫ですよ。泊まる宿を伝えなかった、私達も悪いですし。それに、帰ってきてすぐで色々と忙しいでしょう?」


頭を下げてくる商人頭にそう返して、慎吾達は奥へ案内される。

通された部屋は応接室のようで、慎吾達は商人頭と向かい合うようにソファーに腰かけた。すぐに出された紅茶を一口飲んで、商人頭が話を始める。


「先程言われた通り少し忙しいので、申し訳ないですが早速報酬の話に移らせていただきます」


そう言うと商人頭は人を読んで、何やら耳打ちする。

その人が部屋の外へと出てしばらくすると、数名の男達が部屋に入ってきた。それぞれの手には、小袋や剣、鎧などがある。


「・・・これは、なんですか?」

「そんなに警戒しなくても、大丈夫ですよ。危害を加えようと言うのでは、ありません。これらが、今回の報酬です」


ソファーの上で身構える慎吾達に商人頭は笑って言いながら、一枚の紙を渡してくる。

それは、報酬の目録であった。


「・・・かなり、多いですね」


目録に目を通した慎吾は、驚きながらも返した。

目録には『魔法付与済鎧一式』や『魔法刻印剣』、果ては『属性魔石』などの文字がある。恐らく、慎吾達が魔法と武器を併用する戦いかたをすると知って、用意したものだろう。

数も相当なもので、鎧は三セット、剣は十本、魔石に至っては百個もある。見たところ品質も一級品で、換金すれば当初の報酬の十倍以上はあるだろう。

冒険者やラマサンダの事があったとしても、過剰な報酬だと言える。事実、横から目録を覗き込んだエレイナとミーリャも目を丸くしている。


「そこに書いてある物に本来の報酬である金貨三枚を追加して、今回の報酬といたします」

「ここまで多いと、逆に何かあるかと疑ってしまうんですが・・・」


商人頭の言葉に、わずかに顔をひきつらせながら慎吾が返す。

慎吾のその反応も、当然と言えば当然だ。本来の報酬である金貨三枚でさえ、三人が五、六年は暮らしていけるのである。


「実はラマサンダで捕まえた冒険者達なんですが、『ロージス』と呼ばれる悪党の仲間だったのです」

「ロージス・・・ですか?」


聞きなれない単語に、慎吾は商人頭に聞き返す。


「殺人、強盗、違法売買などを行う、国際指名手配中の連中です。下っぱですら、褒賞が銀貨一枚出てるんですよ」

「なるほど・・・」


慎吾の言葉に返した商人頭に、慎吾は納得する。

商人頭の話によると、慎吾達が捕まえた連中はロージスの中でもそれなりに高い地位の人間だったらしい。なんでも、半数が金貨一枚を越えるような連中だったのだ。

結果として、ギルドや国の護衛団から多額の褒賞金が出たようだ。その額、およそ金貨数十枚だという。

ちなみに、アジトに居た者達はメガプラントに吸収されて影も形も無かったらしい。無事なまま確保できていればさらに倍以上の報酬があったと言うのが、商人頭の話である。


「ただし、全てを金で渡してしまうと国の予算やら色々と不都合が出るようでして・・・」

「それで、物でというわけですか・・・」


慎吾には、商人頭の言うことも分からないでもない。

金貨数十枚ともなれば、国の年間予算並みだ。正直、金で渡されても戸惑っただけだろう。


(まあ、それだけじゃ無い気もするけどな・・・)


慎吾は何か裏があるかもと思うが、警戒するに留めた。

この手の事は、考えたところで答えが無いことも多い。何かされたときに対処できれば、問題は無いのだ。

その後、商人頭の持ってきた物を全て受け取り、依頼報酬の受け取りは終了した。すぐに仕事に戻ると言って、商人頭は急いで奥へと戻って行った。

ちなみに、魔石を除いた武具は全てインゴットになった。性能が、慎吾達の使っている物より大きく劣っていたためだ。

全て魔石で渡せば、そういうことにもならなかっただろう。しばらくしてそれを知った商人頭が、全て魔石にしていればと嘆いたのだがそれはまた別の話。

商人頭から報酬をもらった慎吾達は、とりあえず宿へ戻ることにする。報酬が予想以上に多く、迷宮に持ち歩くことができなかったためだ。

ちなみに、できるだけ軽装でと思っていたために保存鞄はおろかレプニーチェに入るときに持っていた鞄さえ持っていない。さすがの慎吾達も、それだけの物を持って戦闘をするのは避けたかったのだ。


「はあ。迷宮はまた今度かな・・・」

「仕方ないだろう」

「報酬があんなに多いなんて、完全に予想外だもんね」


溜め息を一つついて、慎吾達は宿へ戻って行った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


商人頭の元で、予想外に多い依頼の報酬を貰った翌日。


慎吾達はレプニーチェの町の中央、魔迷宮ニリバルトの前に来ていた。理由はもちろん、迷宮に潜るためだ。

バータル皇国に向かうような馬車が、向こう一ヶ月無かったためである。ちなみに、直近の馬車は慎吾達の来る前日にレプニーチェを出発したらしい。


「すいません、迷宮へ潜りたいのですが」

「あ、かしこまりました。迷宮へは、初めてですか?」


塔の前にある受付のような場所で、慎吾達は受付の言葉に頷く。


「では、この誓約書を確認してサインをお願いします。あと、本人確認のためにギルドカードの提示をお願いします」

「分かりました」


受付から手渡された紙に目を通し、一番下にサインをしてギルドカードと一緒に返す。

迷宮内部へ入るのは、ギルドの管理による許可制だ。実力の無い者が塔に入って、大事になることを防ぐためである。

さきほど渡された紙は迷宮の利用に関する注意と、迷宮内で起こったことは自己責任とすることの誓約書である。つまり、迷宮に関するトラブルにはギルドは一切関わらない、と言うことだ。


「シンゴ・ツルギ様、エレイナ・ティアラール様、ミーリャ・スカイハール様。ランクは・・・6!?ええと、これは本当でしょうか?」

「はい、間違いありません」


ギルドカードを確認して驚く受付に、慎吾達は頷く。

ランク6と言えば、それなりに力のある冒険者ということである。慎吾達程の若さでその域に達している者はそうは居ないため、受付の驚きも当然の事だろう。

ちなみに、本来なら慎吾とエレイナの二人がランク10でミーリャがランク4になる予定であった。ミーリャを二人と同じランクにするために、三人ともがランク6に落ち着いたのだ。


「申し訳ありませんが、少々お待ちいただけますか?」


慎吾達の返事を聞いた受付は、そう言ってどこかへ走っていった。

しばらくして戻ってきた受付の後ろには、初老の女性がついてきている。とはいっても見た目が老いているだけで、動きなどはそこらの冒険者よりも良く見えるが。


「あんた達かい、迷宮に初めて潜るランク6ってのは?」

「はあ、そうですけど・・・」


女性の言葉に、慎吾はいささか気の抜けた返事を返す。

慎吾としては迷宮に潜る許可をもらいに来ただけなので、早くしてくれというのが本音である。正直、面倒だから適当に切り上げようとすら、思っていたのだ。


「私は、リヴィル・シュトライゼ。この迷宮の管理を上がる任されてるギルドの、ギルドマスターだよ」

「はぁ・・・。で、そのギルドマスターが俺達に何か?」


紹介をした女性ーーリヴィルに、慎吾が率直な質問をする。


「・・・なにさ。えらく、気の抜けた返事だね」

「いや、あなたが本当にギルドマスターなのかなぁと」


不機嫌そうな顔をするリヴィルに、慎吾は率直に答えた。


「・・・どういうことだい?」

「別に、疑ってるって訳じゃないですよ?ただ、魔力の雰囲気のようなものが変な感じがしたんで」


慎吾がそう言った途端、リヴィルが目の色を変えた。


「伊達にランク6って訳じゃ、なさそうだね。迷宮の事だけど、それだけの実力者をビギナークラスの連中と一緒にするわけにはいかない」

「わかっています」


関心しながらのリヴィルの言葉に、慎吾が頷く。

当然の事だろう。本来は実力の無い者達を鍛えるために、下層の迷宮を使っているとも言えるのだ。

そんなところに実力が上の慎吾達が行けば、それにすがって実力に見会わない層へ行くものが出てくる。そんなことになれば、最悪は迷宮の本質を歪めることになりかねないのだ。


「わかってるなら良いよ。できれば、こっちで百層くらいまで送ってやりたいんだけどね」

「見た感じ、この迷宮は完全に自立してるんでしょ?」

「よくわかったね。管理を任されてるっていっても、迷宮に入る者のチェックぐらいのもんさ。正直、形だけの物だよ」


自嘲気味に言うリヴィルに、慎吾は苦笑する。


「愚痴っぽくなってしまったね。こっちとしては五層ごとのボス以外との戦闘は、五十層辺りまでやらないでほしい」

「別に暇潰しに来てるだけなので、こっちとしては下層で抑え気味にやっても良いんですけどね」

「そうすると、ランクに関して色々と言ってくる輩が出てくるんだよ。実力者の義務だと思って、勘弁してほしいね」


肩を竦めながら言うリヴィルに、慎吾達はまたも苦笑しながら了承した。

そのあと色々と迷宮の事を聞いて、今日の用事は終わる。本格的な攻略は、明日からとなる。


「一日目の挑戦で、六十層まで行ってくれれば嬉しいんだけどね」

「それは、やってみないと分かりませんね。まあ、努力はしてみますよ」


そう言って、慎吾達は宿へと戻って行った。

その後ろ姿を、リヴィルは真剣な表情で見詰める。その姿は、初老の女性と言うよりも、歴戦の戦士を彷彿とさせるものであった。

 「まさか、私の正体を見破る可能性のある者が現れるとはね・・・」


リヴィルの頭のなかには、慎吾の最初の言葉が繰り返されている。


「世を照らす英雄か、はたまた世に陰る魔王か・・・。どちらにしろ、あの子達は苦労しそうだね・・・」


リヴィルのその呟きは、レプニーチェの風に乗って誰の耳にも届かぬまま消えていった。

海香「金貨一枚で、大体いくらくらいなの?」

慎吾「日本円で、大体一千万くらいか?」

勝間「結構高いんだね」

ティル「装備の更新なども含めると、冒険者が三から四年は暮らせますね」

エレイナ「私と慎吾はその必要がないから、もっと長く暮らせるな」

海「慎吾の場合、別の出費がありそうだけどねー」

エ「ん?なんだ、それは」

海「薄い本を買ったり、見目麗しいお姉さんがたとキャッキャウフフしたり・・・」

慎「ねぇよ!そんな出費は!」



今回は、お金の事やらギルドの事やら、色々と説明する必要がありました。もっと違う所で出したがったのですが、ごちゃごちゃやったらこんなことになってしまっています。

さて、次話は迷宮攻略。色々と苦労しそうですが、頑張ります!

では、また次話。


P.S.アクセス数が、二万pvを突破しました。ありがとうございます!

今後も頑張っていきますので、どうぞ、宜しくお願いします。

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