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白服の男とメガプラント討伐

8月15日 本文中に追加の記述をしました。ストーリー全体としては、変更はありません。

「どうだい?我々の作った『メガプラント』は?」


場違いな程爽やかで華やかな声に、慎吾達は思わず声の方へと目を向ける。

魔物の足下から、一人の男が歩いてきていた。

キラキラとした真っ白な服を着た、気障きざったらしい男だ。


「作った?アイツ、お前が作ったのか?」


何だかムカつくなと思いながらも、慎吾は男の言った事を聞き返す。


「そうさ!このメガプラントは、我々『欠番者チスゥラー』が叡知を注いで作った魔物だ!」

(我々、ねえ…)


両手を広げて高らかに声をあげる男を他所よそに、慎吾は男の言った事について考える。

メガプラントと呼ばれた魔物は自然発生したものではなく、男の所属する『チスゥラー』という組織が作った物のようだ。

名前だけではどのような組織かは分からないが、少なくとも世界平和を目指す組織でない事だけは確かだろう。


「チスゥラーねえ…。それが、お前の所属する組織の名前か?」

「そうさ!魔王が居なくなった今、我々が闇と混沌を守るのさ!」


相手は喋るのが好きなのか、慎吾の聞いてない事まで話す。

情報が得やすいので慎吾としては嬉しいが、組織としてはどうかと思ってしまう。もっとも、それを指摘するほど慎吾は馬鹿正直ではないが。


(それにしても『闇と混沌を守る』か…)


何ともまたいかにもな目的だと、慎吾は思った。

もっとも、それが組織の総意かどうかは分からないが。


「おいおい。そんなに俺達に話しても、大丈夫なのか?」

「問題ないさ!なぜなら、君達はここで消えるのだから!」


ベタな台詞を吐きながら、気障男は懐から一本の杖を取り出した。


「今のメガプラントは、休眠状態だ!こいつが起き出したら、君達なんて一捻ひとひねりさ!」


その台詞と同時に、男から感じられる魔力が膨れ上がる。

男の取り出した杖は魔法具だったのか、男の魔力に反応するように先端の石から光を発している。

男の言葉が正しければ、その杖はその魔物ーーメガプラントを目覚めさせるための物のようだ。


「さあ!目覚めろ、メガプラント!」


天に向けるように男が叫ぶと、杖の光が一層強くなる。


キィィィーー


それとほぼ同時に、何かを引っ掻いたような音が頭上から響いてくる。

慎吾が顔をあげると、先程まで動きのなかった目の前のツルの塊に変化があった。先に付いた蕾が、徐々に開いているのである。

先程の音は、蕾の中から響いているようだ。


「ハハハハ!これで、君達は終わりだ!このメガプラントは、触れた者の魔力を吸い上げる性質がある。魔法具も人も魔法も、魔力を込めた武具だって関係なしだ!」


誰もが耳を塞ぎたくなるような音のなかで、男は勝ち誇ったかのように笑う。

その時ーー


パキッ


「ん?」


パキキキキッパキンッ!


音の頭上から何かの割れる音がしたかと思うと、男の持つ杖の先についている石が真っ二つに割れた。


「な!『魔操(まそう)魔石(ませき)』が!」


男は杖と割れた石を見つめ、呆然と呟く。

しかし、今の状況でそれは余りにも無防備過ぎた。

自分の持つ道具の事より、自分の命を気にするべきだったのだ。


「バカッ!避けろ!」


慎吾が男に叫ぶのとほぼ同様ーー


トスッ


「へ?」


軽い音と共に、男の胸から何かが生える。

先が尖ったそれは、蕾が開きかけているメガプラントのツルの一本だった。

メガプラントが伸ばした一本が、背中から男を貫いたのだ。


「え?な…が…」


男は口から血を流しながら、目を見開いて動きを止める。


ドスドスドスッ!


そこへ、四方から大量のツルが男を襲った。

すぐに、男の姿はツルに隠れて見えなくなる。

しばらくしてツルがそこから離れたとき、そこには無数に穴が開いてぼろ切れのようになった服しか無かった。

純白に染まっているそれは、先程の男の物で間違いないだろう。


「くそっ!」


目の前で起こった事に、慎吾は悔しさを募らせる。

男が魔操の魔石と言っていた物が壊れた理由は、おおよそ見当がつく。

魔石に込められた魔力が、メガプラントに吸い尽くされてしまったからだろう。

男が言っていた『触れた者の魔力を吸い上げる』と言う性質は、実際には『周囲の者の魔力を吸い上げる』性質だったわけだ。

魔力を吸われて魔石が機能しなくなった事により、メガプラントは近くにいた男を襲ったのだろう。


「シンゴ・・・」

「・・・大丈夫、分かってる」


心配そうに声をかけてくるエレイナの言葉に、慎吾は目の前の事に集中する。

そう、慎吾達には男の事を悔しがる余裕は無い。

覚醒寸前のメガプラントが、すぐにでも慎吾達に襲ってくる可能性があるからだ。


「さっさと、こいつを倒そう」


心を落ち着かせながら宣言する慎吾の前で、メガプラントの蕾が完全に開ききった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


キィィィィィィーーー!


蕾が開ききったメガプラントは一際大きな音を出し、慎吾達の方へとツルを伸ばした。

男を貫いた事を見るに、ツルの硬さは相当のもののようだ。

少なくとも、先日慎吾達が拘束されていた縄よりは硬いだろう。


「チッーー」


流石にツルに捕まって無事で居れる自信も無いので、舌打ちをしながらも三人は大きく後方へ下がった。

慎吾はついでとばかりに拳サイズの火玉をばら蒔くが、ツル当たると霧散してしまう。

当然、ツルには焦げあと一つ無い。


(ツルも魔力を吸収できるとか、どんなチートモンスターだよ!)


慎吾は内心毒づきながらも、次の一手を考える。

不幸中の幸いなのは、ツルが魔力を吸収できるのは『触れた者』という点だろう。

そして追撃が無いことから、ツルの長さは制限がある事も分かった。


「とりあえず、片っ端から射ってみるか…」


そう言って、慎吾は両手の周りに魔法陣を展開する。

右手に緑の風の魔法陣、左手に赤の炎の魔法陣だ。

それも、それぞれ3個ずつが展開されている。

他人が見たら卒倒しかねない展開速度と数、これが精霊の力を借りない状態での慎吾の全力だ。


「『エアロスラスト』『ウィンドランス』『ストームバースト』『フレアショット』『フレイムアロー』『ファイアショック』」


慎吾の声と共に、魔法陣からそれぞれの魔法が放たれる。

しかし、メガプラントのツルに触れた瞬間、切り刻む事も燃やす事もなく霧散した。

吸収量の飽和を狙ってみたのだが、どうやら失敗に終わったようだ。


「チッ、『ドラゴニックブレス』!」


魔法が吸収されたことを見るや否や、慎吾は即座に魔法陣を消して次の魔法を使う。

慎吾の目の前に展開された巨大な魔法陣から、火山の噴火のような炎が吹き出す。

しかしメガプラントがツルを網のように展開すると、そこに当たった炎は一瞬で消え去った。

一本では吸収しきれないと判断し、複数のツルで分散させたようだ。


「おいおい・・・。流石に無傷ってのは、凹むぞ・・・」


生身では最大の火力を無傷で乗り越えられたことに愚痴を漏らす慎吾に替わり、エレイナが魔法陣を展開しながら前に出る。


「『刀剣弾幕(ソードバレット)』!」


エレイナが発動したのは、短剣を射出する魔法だ。

射出される短剣には魔力が込められていないため、メガプラントを、傷つけられるとの判断だろう。

もっとも、射出できればの話だが。

メガプラントの周りに展開された魔法陣にツルが延びたかと思うと、ツルに触れた魔法陣は次々に消失する。

どうやら、ツルは触る必要がある代わりに、魔法陣を消すこともできるようだ。

辛うじて残った魔法陣から短剣が射出されるが、威力と数が足りなくダメージはほとんどない。

硬いツルに弾かれた短剣が、カンカンと鋭い音を響かせる。


「くそっ!」

「次は私が!」


舌打ちするエレイナの横を、ミーリャが駆け抜ける。

ミーリャは周りにある木を使って上空へ飛び出すと、空中で魔法陣を展開する。ミーリャの身長程もある魔法陣が、ミーリャの目の前に展開された。


「押し潰せ、岩の弾丸!『ロックショット』!」


未だ詠唱無しでは魔法を発動できないミーリャが叫ぶと、魔法陣から頭ほどの大きさの岩がいくつか降り注ぐ。

さすがに単純に射出されただけの岩は吸収できないようで、ツルがいくつか千切れる。

しかし、千切れる側からすぐに再生してしまった。


「再生能力まであるのかよ!」


余りの能力の高さに、一度下がって息を整えていた慎吾が毒づく。


「六属性のうち、三つ吸収されたか。この分だと、六属性全てが吸収されてしまうだろうな。光属性なら、行けると思ったんだが…」

「あれ?エリーのあの魔法って、無属性じゃなかったのか?」


隣で吐き捨てるエレイナの言葉に、慎吾は疑問を抱いた。


「いや、あれは光属性の魔法だ。無属性は、生活魔法以外に使えないぞ?」

「そうなのか?てっきり無属性だと…ん?ちょっとまてよ…」


エレイナの説明に、慎吾はとある可能性に気が付いた。


「もしかして…」

「ん?どうした?」

「…試してみる価値はあるか。エリー、ミーリャ、ちょっと手伝ってくれ」


一人で考えていた慎吾は、立ち上がってエレイナとミーリャを呼ぶ。


「俺が今から攻撃の準備をするから、攻撃するまで援護してくれ」

「どういうことだ?」


慎吾の言葉に、エレイナが怪訝げな顔をする。


「射程が短い上に肉体強化もできなくなるから、援護無しじゃ厳しいんだよ」

「そう言う事か。了解した」

「了解」


エレイナとミーリャの返事を聞いた慎吾は、魔力の操作に集中する。

今から使う技は、エレイナも知らないであろう物だ。

その上永らく使ってなかったため、現状でどこまで使いこなせるか分からない代物である。

そのため、ギリギリまで近づくつもりなのだ。

慎吾は自分の体内で魔力を高めながら、それを凝縮して腕へと送る。

イメージとしては、手に持った銃にエネルギーを充填する感じだ。


「よしっ、できた!突っ込むから、援護頼む!」


およそ二分後、慎吾は腕の魔力を保ったままメガプラントへと走り出した。

エレイナがそれに続き、ミーリャは後方でツルを牽制している。

そのまま本体から五メートル程の所まで来ると、慎吾は両手を前に突きだし掌をメガプラントの花の下の部分へ向ける。

慎重に照準をつけたいところだが、周りのツルがそれを許してくれない。

長引けば、それだけエレイナ達への負担が大きくなる。

慎吾は内心舌打ちしながらも、意を決して叫んだ。


「いくぜ!『マギブラスト』!」


慎吾が叫ぶと、手から大量の魔力が放たれた。

さながら、巨大なレーザーのようである。

慎吾の放った魔力は前に塞がるツルを消し飛ばしながら、真っ直ぐに前進する。

途中本体の一メートルほど手前の所でわずかに減衰したものの、消えることなく慎吾の狙った場所を撃ち抜いた。

そのまま上空へ飛び去り、見えなくなってしまう。

メガプラントはというと、花の下に大穴が空いたまま動く気配がない。

あれほど動き回っていたツルも、力なく地面に落ちている。

そのまま警戒していると、端からパラパラと崩れ、最後には跡形も無くなってしまった。

恐らく、そのまま復活することはないだろう。

それを見届けて、慎吾達はその場から離れていった。


「ふぅ、終わったか。流石に魔力が少ないから、さっさと村で寝たいな」

「入れてくれると良いがな」

「もう盗賊もいないし、安全が確認されたら入れてくれると思うよ?」

「ダメなら、ティルから貰った書類を出すさ」


他愛もない話をしながら、三人は村の方へと帰っていった。

そのあとメガプラントの残骸から拳ほどの光が飛び出してどこかへ飛んでいったが、それを見ていたものは誰もいない。

海香「そういえばさ、慎吾とエレイナが出会ったのっていつなの?」

慎吾「俺がリーンヘイムに行ってから、1年くらいたった頃だったか?」

エレイナ「その頃には、慎吾はすでに最上位精霊と契約していたな」

海「って事は、知り合ってまだ2年くらいか」

慎「まあ、そんなもんだな。それが、どうした?」

海「いや、二人の関係はどこまで進んでるのかなぁって」

エ「ん?どういうことだ?」

海「例えば、もうヤっーー」

勝間「はーい、そこまで!それ以上は、言っちゃダメだよ?」

エ「ん?勝間はどうしたのだ、慎吾?」

慎「いや、何でもないだろ(エリーって、結構鈍感なんだよな…)」


と言うわけで、第16話です。

なんだかんだで、前半部分は単なる時間潰しになりかけてました。

あと、メガプラントさんは結構長生きしましたね。

後々も出てきそうな雰囲気醸し出してますし。

さて、次話はやっとラマサンダから出られそうです。

これが終わったら、閑話かな。

ここまで、作中では二ヶ月ちょっとくらいですかね。勝間達の訓練やら何やらで、結構時間飛ばしてますし。

では、また次話。

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