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召喚と再会

8月12日 本文中に追加の記述をしました。ストーリー全体としては、変更はありません。

ドサッ


光に包まれて気を失った慎吾は、何かにぶつかる感覚で目を覚ました。


「イテテ・・・」


床に強く打ち付けた尻を擦りながら、慎吾は周りを見渡す。

床は、感触からして石張りだろう。

そんなところに落ちて怪我が無かったのは、冒険しているときに鍛えたからだ。


「どこだ、ここ・・・?」


周りを見渡しながら慎吾はそう呟くが、それに答える声は無い。

照明の無い室内は暗く、ほとんど周りの様子を知ることができない。

少なくとも、周りが魔物だらけと言う訳ではなさそうだ。


(っと、そう言えばエリーも来てるのか?)


ここに来る前の状況を思い出し辺りを見渡すが、さすがにこの暗さではなにも見えない。

エレイナがこの近くに居るのならば、少なくとも先にどこかへ行ったということは無いだろう。

一人で行動することの危険さは、冒険者なら誰でも知っていることだ。

とは言ってもここが安全かどうかも分からないので、慎吾は少し焦る。


(光源が必要だな・・・)


冷静さに欠ける自分を叱責しながらも、慎吾はエレイナを探すために魔力を行使しようとする。

とその時、少し離れた所で何かが動く気配がした。

気配の場所は、慎吾の右後方。


「・・・エリーか?」


慎吾はその辺りに声をかける。


「・・・う、うん・・・」


気配がした辺りから、小さくうめき声が聞こえる。

聞き覚えのあるその声は、間違いなくエレイナの物だ。


(エリーは無事みたいだな・・・。っと、光源を出そうと思ってたんだ。)


エレイナの無事に安心しながら、再び魔力を行使しようとする。

それと同時に


カッッッ!


部屋の中に強烈な光が発生した。もちろん、慎吾が使った魔法によるものではない。


「な、なんだ!?」


予想外の出来事に、慎吾は驚きのあまり思わず大声を出してしまう。

辺りを見渡すと、慎吾の居る場所から少し離れた所に光る模様が浮かんでいる。

円と五芒星などの図形が組合わさる複雑な模様は、ここ数年の間に馴染み深くなった物だ。


「・・・魔方陣、か?」


そうこうしている内に辺りを照らす光が弱まる。

慎吾は落ちた場所から歩いて、魔方陣の方に向かう。


(・・・俺の知っている魔方陣じゃない。それにこんなに規模が大きくて複雑な魔方陣、それこそ大規模召喚術くらいにしかーー)


そこまで考えていると、急に頭上に影がさした。

何事かと上を見上げると、そこには視界いっぱいに白い布が広がっていた。


「・・・へ?うわっ!?」


思考が停止したのも一瞬。

すぐにその場を飛び退いた慎吾は、その落ちてきたモノの全体像を知ることになる。

そこに居たのは、二人の人間の男女だった。

どちらも気を失っているらしく、このままでは床に激突することだろう。

落下の速度がどれ程かは分からないが、さすがに無事で済むとは思えない。

そう考えるより早く、体は動いていた。

床を強く蹴って男女に駆け寄り、女の方を受け止める。

しかし男の方は意外と離れており、手を伸ばすも少し届かない。


(クソッ!間に合わねぇ!)


慎吾が諦めて助けられない悔しさから目を背けようとした時ーー


風が吹いた。


慎吾と同じように駆け込んで来た、エレイナだった。

エレイナは滑り込むかのように床と男との間に体を入れ、男を受け止める。


「イタタタ・・・。ギリギリだったな・・・」


背中の方に手を当てながら立ち上がり、エレイナが呟く。


「サンキュウ、エリー」


ほっと肩の力を抜きながら女を床に下ろし、慎吾はエレイナにお礼を言う。


「う、うん・・・」


その時、女が軽くうめき声をあげる。

同時に、男の方も目を覚ましたようだ。

目を覚ました女と、慎吾の目が合う。

その目は大きく見開かれ、驚いたかのようだ。

男の方も、ビックリしたかのように慎吾の方を見ている。

その顔に見覚えがあるなと考えていた慎吾は、やがて一つの結論に達する。

それは、エレイナと会うずっと前。

もう会うことも無いと、半分忘れていた記憶である。


「もしかして・・・」


そこで、3人の声が重なった。


勝間しょうま海香みか・・・か?」

「慎・・・吾?」

「鶴城・・・くん?」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ーーと言う訳で、気付いたらここに居て目の前にお前が居たんだ」


驚きの再会から数分後、慎吾とエレイナは勝間と海香からここに来た時の話を聞いていた。

それによると、2人は学校からの下校途中に何かに巻き込まれてここに来たようだ。


「それでだ、慎吾。今度はお前の番だ。お前、今まで何してたんだ?」

「そうだよ、鶴城くん。君が居なくなってからもう2ヶ月もたってたんだからね?」


矢継ぎ早に投げ掛けられる勝間と海香の質問に答えようとして、慎吾はそこに疑問を抱く。


「ちょっと待て、2ヶ月だって?」

「そうだよ?鶴城くんが居なくなったのが6月、私たちがここに来たときが8月だもん」


真剣な顔の慎吾に、何を言っているのかと言うようにキョトンとした海香が返す。


「マジかよ・・・」


慎吾は思わず手を額に当て、傷一つ無い床を見下ろす。


「どうしたんだ?そんなに変なこと言ったか?」

「・・・よく聞けよ」


何の事か分からない勝間と海香に対して、重々しく口を開く。


「俺が地球から別世界に飛ばされてお前達に合うまで、大体3年かかってる・・・」


リーンヘイムに召喚されて魔王を倒し、ここに来るまでどう考えても2ヶ月ではないのだ。


「え?どう言うことだ?3年が経ってる?それに、別世界に飛ばされたって・・・」

「そうだ。俺は地球じゃないリーンヘイムって世界で、3年生きてきてる」


混乱する勝間に、慎吾はもう一度言った。


「・・・それって、どう言うことだ?」

「それを説明したいのは山々なんだが・・・」


そう言いながら、慎吾はこの部屋への唯一の出入口であろう扉へと向かい合う。


「・・・どうした?」

「・・・誰かがこっちに向かってる。危ないかも知れないから、2人はもう少し下がってて」


慎吾の敏感な感覚は、この部屋へ向かう3人の気配を感じていた。

しかもそのうち2つの気配は、明らかに一般人の領域を大きく越している。

強さ的には、ここに来る前に戦った魔王と同程度か。

後ろに下がる2人を守るように立ち、さらにその前にエレイナが立ち塞がる。

気配が扉の前で立ち止まり、小さな音を発てて扉が開いた。


「シンゴォ"ォ"ォ"ー!!!」

「は?」


開きかけた扉を破るような勢いで、何かが慎吾に向かって物凄い勢いで向かってくる。

警戒していた慎吾は、思わず変な声を出してしまった。

ソレは向かってきた勢いそのままに、慎吾の腹部に突っ込んで来る。


「ゴフッ」

気の緩んだ所に思いっきり溝尾に突撃された慎吾は、衝撃で一瞬息が止まりかける。


「シンゴ、シンゴー!!」

「ゴホッゴホッ。な、なんだ?」


咳き込みながら腹の上を見ると、白い服を着た少女が抱きついていた。

歳は10歳くらいで、今まで泣いていたのか目尻に涙が溜まっている。

どこかで会ったかと考えるが、全く覚えが無い。


「えっと・・・誰?」

「オイ、その格好のままで飛び込んでもシンゴにゃわかんねぇぞ・・・」


見知らぬ子供に混乱していると、別の声が聞こえてきた。

そちらを見ると、赤い服を着た少年が立っている。

服から覗く肌は活気ある褐色で、少女に呆れたような視線を送っている。


(な、何なんだ?一体・・・)

「あ、そうだった」


慎吾の困惑を他所に、少女がその場で目を閉じて体から力を抜いた。

その瞬間、少女の体が光に包まれる。

光が消えるとそこには先程までの少女の姿はなく、代わりによく知る者が立っていた。


「シルヴィ?さっきのは、シルヴィだったのか?」

「うん。そうだよ、シンゴ」

「ってことは、もしかして・・・」


慎吾が少年の方を向くと、そこには同じくよく知った者がいた。

「ヴル・・・」

「ったく、来たときに俺達が居ないのくらい気付けよな?」


慎吾の呟きに、ヴルは呆れたように返した。


「あの時は慌ててたからな・・・スマン」

「・・・ねぇ、慎吾くん」


慎吾がヴルの指摘に頭を掻いていると、後ろから海香の声が聞こえる。

振り替えると、呆気にとられたような顔をしている海香と勝間の顔があった。


「・・・ソレ・・・ナニ?」

「えっと・・・ナニって・・・」


海香の質問に、慎吾は返答に困る。

正直に話して良いかどうか、判断できないからだ。

慎吾が返答に困っていると、ヴルが間に飛んできた。


「俺達は、シンゴの相棒みたいな者だ。詳しい事は、また今度にしよう」


ヴルカンはそう言って、扉の方に向き直る。

そう、この部屋に来ていたのは3人。

すなわち、シルヴィとヴルの他にもう1人いた。

最後の人物は部屋の中を歩いて勝間の前まで行くと、膝を突いて口を開く。


「ようこそ。お待ちしておりました、勇者様」

「「「「・・・はい!?」」」」


その人物の口から出た言葉に、部屋の中に居た4人の声が綺麗に重なった。

シルヴィ「やっと、シンゴに会えたよ~」

ヴル「お前、ホントにシンゴの事好きだよな?」

シ「だって、シンゴ優しいもん。」

エレイナ「お前、そういう趣味があったのか?」ソソソッッ

慎吾「どうしてそんな風に繋がるんだ?」


次話のフラグを立てるのに苦労して、書き終わってみればかなり長い話になってしまいました。

さて、新しい登場人物が出てきました。シンゴくんの地球での知り合いとのこと。シンゴとの地球トークに乞うご期待。

次回は、異世界での最初の試練(?)にシンゴがぶち当たります。

出来る限り早く上げれるように頑張ります。

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