盗賊討伐と未知の魔獣
注意:読者の想像力によってはグロテスクに写る場面があるので、十分に注意して下さい。
8月15日 本文中に追加の記述をしました。ストーリー全体としては、変更はありません。
ラマサンダから東に半日程歩いた洞窟の地下に、盗賊達とそれに協力する冒険者のアジトがあった。
人が来る事がない場所である上に壁に隠蔽の魔方陣が彫刻されていて、人が隠れる事にはこの上なく良い環境。
その上、迎撃のためのトラップ用の魔方陣や小型バリスタが設置されている。
偶然この場所を見つけた者が居たとしても、仲間に知らせる事なく蜂の巣になるだろう。
そんな盗賊達にとってはうってつけの場所は今、謎の恐怖に怯える者達で一杯になっていた。
「な、なんだ!何が起こってる!」
「し、知るか!」
目の前に広がる光景に、混乱した盗賊達が叫びあう。
「出入り口近くの連中が、急に倒れだしたんだ!」
「毒か何かか!」
「いや、眠って・・・いる・・・だけ・・・」
ドサッ
「お、おい!どうした!起き・・・」
ドサッ
広間に集まって酒を飲んでいた盗賊達が、次々と倒れていく。
死んだ訳では無いらしく、緩やかな寝息を立てていた。
ーー数分後。
広間に居た盗賊達が全員寝てしまうと、出入り口から三つの人影が入ってきた。
盗賊達を眠らせた張本人、慎吾達だ。
「・・・本当に、全員寝てやがる」
「相等、薬が強力だったのだろう。それにしても、無防備過ぎるとは思うがな」
「送風や換気の魔方陣があるから、普通は全員寝るまで薬が回らないんだと思うよ?」
辛口な感想を口にする慎吾とエレイナに、ミーリャがあきれたように返す。
事実、眠り薬が全員に回ったのはシルヴィが強制的に奥まで風を送り込んだからではあるが。
盗賊達も、送風や換気を無視して薬を送り込まれるとはさすがに思っていなかっただろう。
「だからと言って、全員集合して酒飲むのはどうかと思うけどな・・・」
「トラップがあんな力業で抜けられるとは、誰も思わないよ・・・」
やや辛口な感想を口にするエレイナに、顔をひきつらせながらミーリャが返す。
「あれで力業?見つかると面倒だから、あまり力業には走ってないけどな」
「魔方陣は魔力を流して自己崩壊起こさせて、バリスタは使えないようにバラバラにしただけだぞ?」
「普通の冒険者なら、どっちの方法もできないよ…」
慎吾とエレイナが惚けたように言うと、ミーリャは頭に手をやりながら突っ込む。
魔方陣を自己崩壊させるほどの魔力を出せる人間は普通はいないし、バリスタにいたっては離れた場所に剣を召喚できるエレイナだからこそできる事だ。
普通の冒険者では、考え出すことすら出来ない突破法だろう。
「なんにせよ、楽ができたんだから良いだろ」
「うぅ・・・。なんか、自分の常識が崩れていく感じがする・・・」
「私はともかく、慎吾はいつもの事だからな。気にしていると、この先眠れなくなるぞ」
慎吾の言葉に頭を抱えるミーリャを、エレイナが苦笑しながら慰める。
それを気にせず、慎吾は奥の部屋へと向かう。
この手の話に下手に突っ込んではやぶ蛇だと、経験から感じ取ったからだ。
「それはともかく、奥に行こう。さすがにこの先は薬が回ってないと思う」
そう言って扉を開けた慎吾だが、すぐにその扉を閉めた。
「どうした?」
エレイナの質問に上げた慎吾の顔は、先程とは打って変わって真っ青であった。
「・・・見ない方が良い。特にミーリャは、絶対に見るな」
「・・・何があった?」
真剣な顔の慎吾が後ろの二人に注意すると、エレイナが心配そうに聞いてくる。
それに答えたのは、慎吾ではなくミーリャだった。
「・・・シンゴが扉を開けたとき、何が腐った臭いがした」
「な!それは・・・」
二人の目線の先で慎吾は手を強く握りしめながら、悔しさをにじませながら返す。
「・・・たぶん、村で拐われた人達だ。もう、助からない」
「クソッ!」
慎吾の答えに、エレイナが舌打ちする。
その時、急にアジト全体が強い揺れに襲われる。
「な、なんだ!」
「チッ、地震か!」
「違う、足下から何かが這い上がって来てるみたい」
急な事に動揺していると、パラパラとアジトの天井から小石や岩の欠片が落ちてくる。
「ヤバイな、ここが崩れるぞ。さっさと、上に上がろう」
慎吾の言葉に、三人は急いで出入り口の方へと走った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
三人がどうにか洞窟の外へ脱出するのと同時に、大きな音を立てて洞窟が崩れる。もうもうと立ち上がる砂煙をシルヴィの風で散らすと、目の前には洞窟の大きさ分抉れた山があった。
「・・・ギリギリだったか」
「でも、盗賊連中は下敷きか。この状態だと、助け出せそうにないな」
抉れた場所を見ながら慎吾とエレイナが話していると、一歩下がっていたミーリャが急に顔を上げる。
「何か来る!二人とも下がって!」
慌てた様子のミーリャの忠告に、二人が急いで後方へ下がる。
それとほぼ同時に、二人のいた場所へ瓦礫の下から何かが突き刺さった。
ミーリャの忠告がなければ、二人に当たっていたことだろう。
それでやられるとも思わないが、動きが鈍るのは避けられない程の一撃であった。
「あぶねぇ・・・。ありがとう、ミーリャ」
「あれは・・・ツルか?」
慎吾はミーリャに礼を言い、エレイナは突き刺さった物を観察している。
突き刺さっているものは、エレイナの言う通り植物のツルのようだ。
ただし、太さは周りにある木の幹よりも太かったが。
「本体がくる。二人とも、注意して」
ツルを観察しながらも警戒を解いていなかった二人に、ミーリャが再び警告を発した。
ミーリャの勧告と同時に、瓦礫の下から巨大な影が飛び出してきた。
よく見るとそれは、先程のツルが複数より合わさってできているようだ。
およそ十メートル程の高さになったその先には、花の蕾のようなものもついている。
「何だ?見たことねぇヤツだな」
「リーンヘイムには、無いのだろう。異世界なのだから、不思議ではないな」
「たぶん、『ギガプラント』っていう植物系の魔物だと思う。でも、図鑑では大きさは最大2メートル前後ってなってたけど・・・」
ギルドの依頼や勝間達の訓練を手伝って忙しかった慎吾とエレイナに代わって、ティルの屋敷にあった図鑑を読んでいたミーリャが説明をする。
「図鑑に載ってない、別の魔物か?」
「ティルは、最新版だから大抵の魔物は載ってるって言ってたよ?ギガプラントは、地域別に大きさの違うような魔物じゃないし・・・」
「じゃあ、変異種か?それにしても、シルヴィの探知に引っ掛からないのは何でだ?」
慎吾はミーリャとエレイナの話に参加しつつも、別の事に疑問を抱いていた。
目の前に明らかに存在しているのに、シルヴィの使っている探知魔法に反応しないのだ。
地中に居た時に反応が無かったのは頷けるが、空気に触れている状態で反応が無いのは明らかにおかしい。
「これだけ大きい魔物が、探知に反応してないのか?」
「ああ。幻覚なら何処かに核があるはずなんだが、それも見当たらない」
首を傾げるエレイナに頷きつつも、慎吾は探知に全神経を集中させてみる。
すると、魔物の周辺になると魔力が極端に少なくなる事が分かった。
魔物を中心に半径五メートル程の地点から、急激に魔力が減少するのだ。
「もしかして・・・」
「何か、分かったのか?」
「念のため、確認させてくれ」
エレイナの質問に返しながら、慎吾はエアロスラストの魔法を使う。
放たれた風の刃は魔物の近くに行くと急激に小さくなり、最後には跡形もなく消えてしまった。
それを見て、慎吾は自分の考えが間違っていなかったことを確信する。
「・・・なるほど。周りの魔力を吸収して、自分の物にしてるのか。だから、魔法が効かなかったんだな」
「それでは、直接あれに攻撃しなければならないのか?」
納得したような慎吾に、うんざりしたようにエレイナが続ける。
「たぶん身体強化も使えないし、魔力強化した武器もダメだろうな。遠隔操作系の魔法を使ったら、体の魔力を吸われかねないぞ」
「そこまでか・・・。だが、あれを魔法の補助無しでは面倒だぞ」
「無理だとは、言わないんだね・・・」
言外に『できるけどやりたくない』と言うエレイナに、呆れたようにミーリャが返す。
完全に無防備そうな会話であるが、全員が警戒は怠っていない。
それ以前に、魔物に動く気配が無いが。
天辺の蕾が開いたら動き始めるのではと慎吾は推測しているが、確証が無いので黙っている。
そんな事をしていると、急に魔物の下から大きな声が聞こえてきた。
「やあやあ、どうだい?我々の作った『メガプラント』は!」
ミーリャ「シンゴの魔法って、探知にも使えるんだね?」
慎吾「とは言っても、基本的にはヴルは探知には向かないけどな」
エレイナ「探知は魔力の属性に大きく左右される。空気に触れていたら、風の魔力が有効だからな」
慎「探すためだけに、周りを火の海にするわけにもいかないからな」
ミ「じゃあ、地中や水中はどうするの?」
エ「シルヴィの探知に頼れないから、いつもよりも警戒してるな」
慎「そもそも、そんなところで戦闘になることが少ないしな。それに、探知に頼らなくても気配でどうにかなる」
ミ「へえ、そうなんだ」
ちょっと、更新が早くなりました。
なんか、中途半端な所で終わった感じです。これ以上行くと終わりが見えないので、一旦ここで止めました。
なんか、超雑魚キャラ的なのが出てきましたね。本当に雑魚かどうかは、お楽しみで。
さて、次話は今回の魔物との決着です。今思えば、二話続けて同じ魔物を出すのは初めてかも知れません。
ラマサンダもそろそろ終わり、慎吾達も次の町へと旅立ちます。
では、また次話。




