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とある男の驚愕とハプニング

8月15日 本文中に追加の記述をしました。ストーリー全体としては、変更はありません。

立て続けに目の前で起こった出来事に、彼は身動き一つ出来なかった。

目の前に居るのは、先程まで彼が盗賊に繋がっているかもしれないと言うことで拘束させた少年だ。

もちろん彼は、少年達が盗賊と繋がってなどいないことは知っている。

彼らを隠れ蓑として、自分達は依頼主の盗賊と合流するつもりだったのだ。


「それじゃ、反撃開始といきますか」


拘束を破った少年は、獰猛な笑みを浮かべながらそう言った。

その背後では、少年と一緒に拘束した二人の女が同じく拘束を破っている。

その手にはいつの間に出したのか、15センチ程の短剣が握られている。


「拘束を切った…だと?俺達が切っても、傷一つ着かなかったんだぞ…」


彼の隣にいた男が、呆然と呟く。

拘束が確実であることを見せるために全員に刃物で切り付けさせたので、その事を言っているのだろう。

屈強な男が鉈のような剣で何度切り付けても切れなかった縄が、女の持っている短剣で切られた事に驚いているのだ。


(いや、驚くのはそこじゃ…そんなところ(・・・・・・)じゃねぇ…)


しかし彼はその男とは違うところに驚愕し、言葉を失っていた。


(あの少年、拘束を素手で引きちぎりやがった…)


彼の目線の先には、少年が切った縄があった。

それは女達を拘束していた物とはちがい、何かに引っ張られたように切れていた。

恐らく強力な力で、無理矢理引きちぎったのだろう。


(切ったのなら、まだ分かる…。いや、普通なら切れねぇが。まだ切るのなら、やりようはある…)


冒険者になってからそれなりに長い彼は、常人では出来ないことをやることのできるいわゆる『達人』というものを知っていた。

なので、女達が縄を切ったことには大して驚かない。


(だが、いくらなんでも刃物を使わずに引きちぎるのはあり得ねぇ…。しかも、あれはシェルスパイダーの糸を紡いだ特注品だぞ…)


少年を拘束していた縄は、彼が用意した物だ。

当然、その性能も知っている。

シェルスパイダーとは、大陸東部の砂漠地帯に住む大型の蜘蛛の魔物だ。

その名の通り、全身が甲殻に覆われている。

シェルスパイダーの糸はとても硬く、常人では切る事も引きちぎる事もできない。

しかも、シェルスパイダーの糸には魔力に反応してさらに硬化する特性がある。

ただ硬いだけならば魔力で強化すれば引きちぎる事もできるだろうが、特性によって魔力を使えば使うほど縄も硬化するのだ。


(まずい…。あいつ、只者じゃねぇ…)


彼の驚愕をよそに、5人組の冒険者が少年の前に出た。

彼と同じく盗賊から依頼を受けている冒険者の仲間なのだが、彼は知るよしもない。


「おい、何が『反撃開始』だ?お前ら、俺達全員から疑われてるってこと分かってんのか?」


5人組の一人が、少年を睨みながらドスの効いた声で詰め寄る。

しかし、普通の者なら震え上がるようなこの状況で、少年は軽く笑いながら紙を開いて突き出した。

それは、先程のリトルワイバーンが持ってきた物だ。


「俺達は、元聖国リックハーン第三王女ティルキア・ラ・リックハーンの命を受けた使者だ」


その紙には少年達が北の聖国の使者であることと、行く先々での少年達の権限の行使を認める旨が書かれていた。

つまり、少年は北の聖国の王女と何らかの関わりを持つものということだ。


「きっちりと、それを証明できる物もある。ほら、リックハーン王家の紋章と示証魔石(ししょうませき)


少年は紙に続いて、レリーフの彫られた掌程の大きさの金属の札と親指程の大きさの魔石を持ち出した。

先程の紙を含めた三種で一つとなる特殊な魔法具で、王家のみに伝わると言われている物だ。

もっとも、彼が知っていることからも分かるように、特に世間に秘匿されている物ではない。

ただそれは『神聖魔具アーティファクト』と呼ばれており、複製や製作は不可能である。


(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ…)


それを見た瞬間、彼は冷や汗をかきながらどのように逃げ出すかの算段を立てていた。

先程の5人組が何やら捲し立てながら少年に迫るが、それすらも焦っている彼の耳には入ってこない。


(リックハーンの第三王女が生きてるって事は、勇者召喚の噂は本当だったのか!しかもこのタイミングで王女の使者を名乗るって事は、その関係者にちがいねぇ!下手すりゃ、本人だ!)


5人組は知らなかったようだが、ビランツァで勇者召喚が行われたらしいことはある程度の人間に知られている。

そして、勇者もしくはその関係者がビランツァ防衛戦で活躍したこともだ。


(そんな連中に喧嘩売るなんざ、死ぬようなもんだ!さっさとヅラかるに越したことはねぇ!)


そんなことを考えながら、彼は振り返って駆け出そうとした。


「よう、オッサン。どこに行こうとしてんだ?」


ーー次の瞬間。


耳横でそう声が聞こえたと思えば、彼は誰かに足を払われて地面に倒れていた。

慌てて立ち上がろうとするが、体を押さえられて身動きがとれない。

辛うじて目線を上げると、先程まで5人組に囲まれていた少年が彼を拘束していた。


(お、おい…あの5人組はどうしたんだよ!)


驚愕に、彼は目を見開く。

それが伝わったのか、少年が肩を持って彼を立ち上がらせ後ろを向かせた。

そこに広がっていたのは、先程まで少年の周りに居た冒険者の約半数が地に伏せている光景だった。

かなりの実力者もいたのだろうに、少年に一瞬で蹴散らされたのだ。


「とりあえず、あんた以外の怪しげな動きをした人達には眠ってもらった。俺達の


正体が分かったみたいだが、あの程度の連中で止められると思ったか?」

彼の耳元で、少年の声が聞こえる。

よく見れば、倒れている冒険者の中には彼が顔を知っている者も居た。

つまり、彼と同じ目的でここに来た者のことだ。


「さてと。あんた達にここに来るように指示した人間と、そのアジトを教えて…もらえるか?」


少年の言葉に、彼が持つ選択肢は一つしか無かった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「ここが、盗賊のアジトか…」


ラマサンダに程近い自然にできた洞窟の近くの木の枝で、慎吾はそう呟いた。

ティルキアから手紙を受け取ってから、親切な冒険者(・・・・・・)にこの場所を教えてもらったのだ。

とは言え集合の時間帯などは定められていなかったらしく、その場所に来いという指示だけを受けたらしい。

ちなみに、長時間拘束されかねないため村には入らずにここへ来ている。

どちらしにろ盗賊を捕らえた後には村に入る必要があるのだが、そこには目をそらしている慎吾である。


「シルヴィ、中の様子はどうだ?」


慎吾は風を操作して洞窟の中を探っているシルヴィを見て、そう聞いた。


「うーん…。中は小さな部屋が、いくつもあるみたいだね。全部で1、2・・・9部屋かな。でも、人がほとんど居ない」


中の様子を探るために閉じていた目を開いて、シルヴィは頭を捻りながら答えた。

洞窟の内部や地下を探るのは苦手とは言っても、探知が得意なシルヴィである。

彼女が居ないと言うならば、本当なのだろう。


「ここは合流地点か何かで、アジトは他にあるのか?だとしたら、見つけるのは一苦労だな」

「とりあえず、今中に居る人達にはマーカー付けとくよ。あとは、アジトに向かうのを待つ…ん?」


げんなりとしながら慎吾が呟いていると、それに返していたシルヴィが急に顔を上げる。


「どうした?」

「なんか、中の様子に変化があったみたい。ちょっと待っててね…ふーん、成る程。そういうことか…」


慎吾の質問に答えながら目を閉じたシルヴィは、やがて納得するような声をあげながら目を開いく。


「部屋の一つに地下に繋がる階段があって、その下がアジトになってるみたいだね」

「成る程。村から人が調査に来ても、分からないようにか」


シルヴィの報告に、慎吾は納得した。

確かに地下ならば、入口さえ隠せば地上から探し出すのは不可能だろう。

事実、シルヴィですら入口が開くまで分からなかったのだから。


「そうみたいだね。結界が何重にも張られてるから、私も中は見れないよ」

「シルヴィでもダメか…。でも、場所が分かれば十分だ。ありがとう、シルヴィ」


報告をするシルヴィに労いをかけてから、慎吾は一度そこから離れる。

洞窟から歩いて数分の場所にある水場の所で、慎吾は地面に降りた。

盗賊達のアジトを見付けるのに時間がかかるかも知れないため、湖のほとりで野宿をすることにしたのだ。

商隊と共に寝泊まりしていた場所はここから遠すぎるため、そことアジトを往復する訳にはいかなかった。

さすがに、移動だけに何十分もかけるわけにはいかない。


「エリー、ミーリャ、盗賊のアジトを見つけ…た…」


ガサガサと草を掻き分けながら同行者2人に話しかけた慎吾だが、目の前の光景にその声は消えるように小さくなっていった。


「シ、シンゴ!?」

慎吾の目線の先に居た相手ーー一糸纏わぬ姿をした(・・・・・・・・・)エレイナが、驚きの声を上げる。

慎吾は思わず生唾を飲み込んで、その裸体に見入ってしまった。

本当に剣を振れるのかというような細い腕にすらりと伸びた足、女らしい曲線を描く体に双丘がその存在を主張していた。

水浴びをした直後なのか長く伸ばした髪は濡れて体に張り付き、いつもとは違う扇情的な雰囲気を醸し出している。


「み、見るな!」


硬直していたエレイナが慌てて持っていた布で隠そうとするが、焦っていたのか足に絡ませて体勢を崩す。


「お、おい!危ない!」


慌てて慎吾が飛び出して、その体を支えようとする。

しかし、慎吾も焦っていたのか、足を滑らせて倒れ込んでしまう。

それも、エレイナに覆い被さるようにして。


(ヤバ…)


慌てて体勢を立て直そうとするも、バランスは完全に崩れてしまい魔法も間に合わない。

静寂に包まれた森に、盛大な水しぶきが上がった。


「イテテテ…エリー、大丈夫、か!?」


倒れたときに打った頭に手をやりながら目を開けた慎吾は、そこで再び硬直する。

倒れたときに上に来たのかエレイナが慎吾の上半身に倒れ込む形になっており、肌が女性の柔かな感触を伝えて来ている。

しかも、慎吾の右手はエレイナの胸を鷲掴みにしていた。


「な、な…!」


エレイナは顔を真っ赤にして、胸を隠しながら上半身を持ち上げた。

しかし、不運は幾度も重なるらしい。

ガサガサ…


「エレイナ、山で食材を採って…来た…」


慎吾の頭の方で音がしたかと思うと、ミーリャの声が聞こえてくる。

慌ててそちらに顔を向けると、木の実や山菜などの入ったかごを持ったミーリャが驚きに目を見開いていた。

驚きが過ぎたためか、かごが傾いて中に入っていたものが地面に落ちている。


「ご、ごめんなさい…。私はもう少し向こうに行ってるから、2人はどうぞごゆっくり…」


硬直から立ち直ったミーリャは、顔を真っ赤にしてそう言いながら再び森の方へ戻っていく。


「ち、ちょっと待て、ミーリャ!お前、盛大に勘違いしてるぞ!?」


慎吾は慌ててミーリャを止めに行った。


ーーそれから数十分後。


盛大に勘違いしていたミーリャに事情を説明したりエレイナが顔を真っ赤にして暴れまわるということがあったものの、どうにか慎吾はその場をおさめて夕食をとりおえていた。

食後に火を囲ってミルク飲みながら、慎吾は盗賊のアジトについて話す。


「成る程、地下か。意外と、頭の回る連中らしいな」

「いや、シルヴィが言うには地下の穴はずいぶん前に作られた物らしい。誰かが連中に、そこの場所を教えたんだろう」


関心するように呟くエレイナに、慎吾は頭を横に振りながら言った。

洞窟の地下にあった結界に少し綻びがあったため、シルヴィが継続して調べたのだ。


「けど、厄介だな。地下だと大きな魔法は使えないし、下手をすれば私の剣もまともに振れない」


それを聞いて、エレイナが顎に手を当てて考えるように言う。

シルヴィの調べで地下に大きな空間があることはわかっているが、その耐久性などは分からない。

もしも脆い場所があったら、生き埋めは無いにしても少々面倒な事になる。

土属性の魔法が使えれば問題ないが、あいにく事情があって慎吾もエレイナも使えない。

ミーリャが土属性を使えるが、本人いわく制御に難があるようだ。


「ま、どうにかなるだろうさ。最悪、上の土ごと吹き飛ばす。さあ、さっさと寝よう」


物騒な事を気軽に言ってから、慎吾は火を消した。

エレイナはうつらうつらとし始めたミーリャを抱き、少し離れた寝袋の所へと向かう。

ちなみに、寝袋は3人分持ってきてある。

慎吾はそのまま、水場の近くへと向かった。空を見上げると、満月が顔を出している。

しばらく慎吾が月を眺めていると、シルヴィとヴルカンが慎吾の近くへ現れた。

2人とも、心配そうに慎吾の顔を覗き込んでいる。


「シンゴ。本当に、私とヴルだけでやるの?」

「そうだぜ?今あの2人(・・・・)を起こしても、文句は言われねぇと思うぞ?」


心配そうに話しかける二人に、慎吾は軽く微笑みながら返した。


「いや。あいつらには、眠らせる前に約束したからな」


その瞬間、慎吾の瞳に僅かに悲しみの色が浮かぶ。


「次に起こすときは、戦いの無い平和な時だって」


慎吾の決意にも似た意思を含んだ言葉は、静寂に包まれた空に溶けて消えていった。

海香「なんか、アクセスが10000pv突破したらしいよ?」

勝間「そういや、そうらしいな。まあ、別に何が変わる訳でもないと思うけど」

慎吾「じゃあ、いつも通りやろうか」

エレイナ「そうだな、変態」

ミーリャ「これからも頑張ろうね、変態」

勝「慎吾、何があったの?」

エ「裸を覗かれた」

海「変態だね」

ティル「変態ですね」

慎「エリー、わざと勘違いさせてるだろ」

エ・海・テ・ミ「黙れ、変態」

慎「俺の話を聞いてくれー!」

勝「ハハハ…」



大変、遅れました。とは言いつつも、次からもこのペースで更新を続けそうです。

それはともかく、アクセスが10000pvを達成しました。最初の閑話を書くのとどっちが早いか気にしてましたが、予想以上に早くて驚いています。今後も精進しますので、温かく(生暖かく?)見守って頂けると幸いです。

さて、次話はとうとう盗賊討伐です。なんだかんだで三話続いてるラマサンダも、終わりが近づきました。

では、また次話。

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