表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

キーマカレー用のキッチン

作者: 辛井 蛙

私は厨房機器メーカーの営業マンだ。だから、飲食店に行ってはどのような厨房機器を使っているのか気になり、キッチンを覗いたりする。やはり、うまい店というのはキッチンの使い方も丁寧で、清掃も行き届いているものだ。

ある日、私は出先で昼ごはんを食べるために、とあるカレー屋に入った。厨房の中にはインド人らしき店主がいて、なかなか本格的だ。私はキーマカレーを注文した。

ほどなく、店主がキーマカレーを持ってきた。私は、あれ?と思った。カレーの香りが、何かカレーっぽくない、非常に珍しいものだったからだ。

職業病か、私はこのカレーをどのようなキッチンで作っているのかが気になった。でも、この店は構造上客席からキッチンの中は見えない。私は、店主に、自分は厨房機器メーカーの人間であることを伝え、差し支えなければ、キッチンの中を見せてもらえないかと頼んだ。店主は、イイヨ、と、かたことの日本語で答え、キッチンに案内してくれた。

キッチンは、何の変哲もない平凡なものだった。長年厨房機器を扱ってきた経験から、どうもこのキッチンからあの独特のキーマカレーが生まれるとは思えなかった。私は独り言のように言った。「あのキーマカレー、このキッチンで作ってるのか・・・」

すると、店主は、「チガウヨ。アノカレーハコッチ」と言って、キッチンを出て行くではないか。そうか、キーマカレーは、こことは別の場所で作って持ってきてるんだ。だよなあ。こんな平凡なキッチンで、あの独特のカレーができるはずはない。きっと、すごい独特なキッチンに違いない。そう思いながら、私は胸を高鳴らせながら店主の後についていった。

店主は客席の端の扉のところまで来て、「ココ」と言った。扉を開けてみると・・・狭い部屋の真ん中には、和式の便器が鎮座していた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ