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我が子供たち

かあさまサイドのおはなしです。

実は今のところ、一番強いのはかあさま。とうさまは叶いません。年の功ともいいますが、単に尻に敷かれているだけとも言います。


 この部屋に幽閉されて幾年かたった。毎日毎日飽きのくる日々ではあるが、ここ最近変化がおきた。我の伴侶であるあやつの子を、ようやっと授かったのだ。

とは言うたものの、あやつはつい最近、お役目に選ばれてしまったのじゃ。従ってこの篭の中に易々とは来れぬ。幾ら我とは言え、子を一人きりで育てるのは不安で仕方がない。あほかあやつは。

 しかし哀れなものよ。まだあやつは若く、お役目の本当の意味を知らないのだろう。あんなに浮かれて行きおった。


 お役目についてしばらくして、同胞から説明があるであろう。気落ちしなければよいが。

 いや、あやつは優しい心根をしておる。気落ちするなと言う方が無理じゃろう。見よ、あやつのせいで耳も尾も、ひげも垂れ下がってしまったではないか。


 それにしても、長く生きてきたが子を孕むのは初めてであった。

 そこに子がいると分かった途端、なぜか腹が暖かく、いとおしく感じる。守らなければと、強く感じるのじゃ。それはこの子らの産まれてくる環境のせいかも知れんの。

 人の世にいる子は、恐らくこの子らのみであろう。ならばこの子らは、必然的に重い運命を背負っていかねばならぬ。例えその子が病弱であっても。何かしら欠陥を持っていたとしても。

 無論、無事に産まれてくるのが一番である。しかしな、何か悪寒がするのじゃ。あやつがいないからかも知れないがの。


 のう、子らよ。産んだ我を恨むか。憎むか。


 なれど。それでも。我はこの子らを授かったことに感謝しようぞ。




 授かったのは四匹であった。力の強い子、美しい子、賢い子、霊力の強い子。どれもみな、愛らしい。


 どの子もとても強い力を秘めておる。これは将来、あやつを抜くかもなぁ。勿論、我が抜かれる気は更々ないがの。


 名は、まだつけない。つける時期ではない。あの子らが、自らの役目を知り、力を知り、そして初めて名を知ることができる。我もまた、そうであったように。


 にしても、なんと子の愛らしいことか!!

 ぽてぽてと頼りなく歩くその姿も、ぴったり寄り添ってすよすよと寝息をたてる様も、やんちゃして引っ掻きあいの喧嘩をする騒がしさも、我にほっこりとした暖かい気持ちしか運んで来ぬ。

 子とは、良いものよの。幸せそのものじゃ。手はかかるが、それも愛しい。愛おしくてたまらん。


 そういえば、あれからあやつの姿を見ておらん。よほどお役目の真実に衝撃を受けたのか、それとも巫女を哀れに思ったのか。

 時々訪ねてくる世話役が言うには、あやつは巫女にベッタリとくっついているらしい。


 一度やって来た気もするが、我はあれでは姿を見せたとは認めん。情けない、それでも我の伴侶か。

 子が成長するにつれ、悲しみよりも怒りが沸いてきおった。あやつ、ただではおかん。


 そういえば、当代の巫女は珍しく下級市民の中から選ばれた。それだけ力のある巫女であるということだ。だが、同時にその命も短いものとなるだろう。削られる生命力、皇族や華族どもから狙われる命。あやつが情を移し、守ろうとするのは当然と思える。


 とは言え、我が子を生んでから一度も顔を見せに来ないことを許すつもりはない。我は母であやつは父じゃ。子を優先させるのは当然ではなかろうか。


 子が大きくなるにつれ、あやつに対する怒りが更に増していくのを感じる。今度顔を見せたら八つ裂きにしてくれる。何、あやつのことじゃ。けろりとした顔でやってくるじゃろう。この子らは受け入れんじゃろうがの。良い様じゃ。

 つい先日には、あやつのことを聞いてきた長男に対して怒りをぶつけてしまった。悪いことをしたのう。


 そう、子らを見ていて気づいたことがある。

 次女に対する次男の執着が、並々でないものであることじゃ。あれは家族としてのものではない。恐らくは、だが。


 もともと兄妹のなかでも、末っ子である次女は可愛がられておった。

 次女は兄妹のなかでも霊力が一番強く、うまく制御できないのか寝てばかりおった。最近はましになったがの。そしてそのそばには必ず次男が付き添い、長女はともかく、長男が近くによると軽く威嚇するのじゃ。長男はあまり気にせず、片割れに対する兄としての責任であると思っているようだが、あれは違うだろう。あれは、男としての顔じゃ。

 妹の霊力に酔っているのか、または違う理由からか。


 妹の霊力に心酔してるだけならまだよい。どうにもできる。しかしどちらにせよ、あまりいいものではなかろう。









 ふと、巫女の霊力が消えるのを感じた。

 同時に、あやつの霊力が不安定に揺れるのも。大きな揺れじゃの。子らも何か感じるのか、不安げに辺りを見回しておる。特に末っ子か。不安を通り越して、警戒を高めておる。

 敏感なことじゃ。まだ霊力も目覚めておらんだろうに。優秀である証じゃな。


 そして、気脈が大きく動いたのも感じ取れた。この国から大きく外れ、あそこに丁度被さっている。


 気脈が動いたことで、この世界も動き出すであろ。いや、動き出すのは人か。我らはそれに巻き込まれるのみ。

 運命かなんなのか、力の強い子らも生まれ、覚醒も間近となっている。


 また、歪みが幾つか生まれたのも感じ取れた。大きいものもある。これは人も感じ取れたようで、ばたばたと動き出しているのもわかる。



 あぁ、あぁ。子らよ、我の愛しい子らよ。

 哀れな、悲しい定めの子らよ。きっとこれからつらいことがたくさんあるだろう。そなたらにはなんの責もないと言うに。けれど、それでも。

 幸せになってほしいとねがうのは、間違いであろうか。






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