プロローグ 米中露の核を遠隔魔法で日本にぶっ放したわけだがwwww(1000)
シャレだから。
アメリカ合衆国ホワイトハウスに急が告げられたのは午前2時だった。
「大統領閣下。一大事です。」
「どうした?朝っぱらからかんべんしてくれよ。」
アメリカ合衆国大統領はベッドから立ち上がる。
「合衆国全軍がハッキングされ、核ミサイルが行き先を書き換えられた上に発射されました。」
「なんだと!?」
大統領は顔色を変えた。
「目標地点は判明したのか!?」
「同盟国・日本の首都東京です!」
「日本政府につなげ!事故で発射されたとな!自爆コードは試したか?」
「すでに対応してますが作動しません。」
北米防空司令部。
ここはクリスマスになるとサンタを追跡することで有名である。
もともとは間違い電話に当時の司令官がシャレで答えたのが始まりらしい。
「ロシア、中国からも核ミサイル発射を確認!目標地点は日本の大阪と福岡だ。」
ここは今、緊迫した状況に置かれていた。
「我が国の核ミサイルと同様にハッキングされて発射された模様。」
ホワイトハウスは緊迫していた。
そんな中、宇宙から次なる情報がもたらされた。
国際宇宙ステーションISSからである。
「大統領閣下、日本列島を見てください。」その写真は普通の光学カメラで撮ったものだった。
日本列島には巨大な魔法陣が展開していた。
まるでオーロラのように。
「な・・・なんだ?これは・・・。」
「光学カメラで撮ったものだけその模様が映ってました。X線などでは感知出来ません。」
「・・・国務長官、これはいったい何だと思うかね?」
「私にはファンタジー映画に出てくる魔法陣に見えます。」
「良かった。キミの目にもそう見えるか。私の目は正常だった。」
「中国の発射した核ミサイル、まもなく福岡に着弾!」
その時、福岡市上空で20メガトンの核爆発が発生した。
沖縄から輸送機が飛び立った。
しかしそれは報復の攻撃のためじゃなかった。
核ミサイル発射は事故とロシアと中国から通知されたのだ。
彼らは地獄と化したはずの福岡に救援に向かったのだ。
続いて大阪、東京が核の炎に包まれた。・・・・はずだった。
「東京は無傷だと!?寝ぼけてるのか!?」ホワイトハウスで大統領は軍の報告に怒鳴る。
「10メガトンだぞ!?キャッスルブラボー級だ!関東のどこに落ちても東京が無事なはずがない。」」
キャッスルブラボーはアメリカが1954年にビキニ環礁で行った核実験である。
日本人には第五福竜丸被爆事件といった方がなじみが深いのかも知れない。
この核実験の核出力は15メガトン。実験を行った島は文字通り消滅し、クレーターが残った。
「大統領閣下、大阪や福岡の無傷も確認されました。」
「いったい何が起こってる!?夢でも見てるのか?私は。」
ちなみに歴史上最大の核実験は旧ソ連が行った、ツァーリ・ボンバ(爆弾の皇帝)である。
広島型原爆リトルボーイの3300倍の破壊力で核出力は50メガトンだった。
軍のモニターには次の発射命令が表示された。
まだハッキングされてるらしい。
大統領は自分の無力さを感じてソファに座り込む。
核ミサイル発射基地からICBMが発射された。
「目標はどこだ?」
「広島のようです。」
「よりによってそこか。」
ICBMは大気圏外を巡航している。
その時その前に魔法陣が発生、核ミサイルはそれに包み込まれ、消滅した。
「消滅だと!?」
大統領は頭を抱える。
「大統領、これをみてください。」
彼の前にプリントアウトされた紙が出された。
「日本のネット掲示板おける魔法実験について」
これにはこう書いてあった。
半年前、あの国会での異変によりなぜか日本人に魔法が使えるようになった。
彼らはネット掲示板を通じて、次々と実験を繰り返しているようである。
今回大規模な魔法防御実験がvip板と呼ばれる板を中心に呼びかけられた。
それに応じたのは日頃から「近隣諸国」にすさまじい敵意を持つとされる、ニュース速報+、東アジア板、ニュース極東板、ハングル板、既婚女性板(通称鬼女板)である。
実験の項目は
●核爆発時のエネルギーの99.9999999999999999999999999%の消失
●核ミサイルそのものの消滅
「これは彼らの防御実験だというのか?・・・・・ロシアと中国の大使を呼べ。」
わざわざ実践(実戦じゃなく)で自分の国の首都や大都市を狙わせたと言うことは、よほど防御に自信があったことを意味する。
つまりそれは防御魔法システムの完成を意味していた。
そして本当にこれが彼らの実験なら、第2次大戦後続いた核ドクトリンそのものが消滅してしまう。
超大国アメリカにとってそれは決して容認できないものだった。
「彼らがワールドウエブを使ってるのなら、それを規制することが可能です。インターネットは元々米軍の戦略兵器ですから。」
いわゆるインターネットの原型は冷戦時代、核攻撃を受けた場合の迂回通信網である。
ウエブというのはいわゆる波ではなく、蜘蛛の巣の事だ。
・・・蜘蛛の巣を見れば一目瞭然だが、迂回路がたくさんある。
結果的にその迂回路を内包するワールドウエブの力で、「アラブの春」といった民主化を引き起こした実績がある。
(その民主化の結果がアメリカの希望通りだったかどうかは話は別だが)
だから、戦略兵器という表現は間違っていないのだ。
彼らが集う某掲示板は、その戦略兵器の成果を語る上で分かりやすいものだった。
ネームサーバーと呼ばれてるサーバがドメインとウェブの仲介を行い、管理している。
だからそれを停止すれば逆引きが出来なくなり、サーバーエラーを引き起こす。
世界中でネットが『落ちた』のだった。
西暦201●年、内閣総理大臣山家敏三は日本国国会議事堂衆議院本会議場に於いて、こう宣言した。
「我は這いよる混沌なり。われはここに宣言する。この世界の理を改変し、魔力を使えるようにする。」
最初に異変に気づいたのは事故現場だった。
首都高トンネルにて玉突き事故が発生した。
そこに大型トレーラーが突っ込もうとしていた。
最後尾の車の後部座席に乗っていた少女はそれに気がつき、思わず左手を上げた。
本能的な、身を守るための行動であった。
もちろん、大型トレーラーはそれすら無慈悲に蹂躙するだろう。
数十トンの質量をもつ物体が時速100キロ程度の運動エネルギーを持っているのだ。
その瞬間、大型トレーラーの運動エネルギーはゼロになった。
数十トンもの重量物がピタっと止まったのである。
それはニュートンの第一法則、いわゆる慣性の法則からは到底ありえない止まり方だった。
不思議そうにトレーラーの運転手が降りてくる。
その異変は確実に東京都、関東全域、そして日本全域へと確実に広がっていった。
「人間どもよ、新たなる力で踊れ。その混沌こそ我の望み。」
そう言い放った彼はその場に倒れた。
それまで中継を何気なく聞き流してた視聴者は、その時、初めて異常性に気が付いたのである。
後世に於いて、この日は「魔法解禁日」と呼ばれた。