2-3 森の中の隠れ家
「・・・そうね道が迷いやすいからもしかしたらもう少しかかるかな?」
だったな、、この森の中に道がある訳が無い、、大木の樹木の間を掻き分けての行程になるんだな。
そう考えると少し寒気がしてくる 古代の森の名は伊達ではないのだ。
森の中に入り込んで全てを理解した、当初の二日ほどは冒険者や地元の人間が踏み入れた形跡が見られたが奥に更に入れば方向感覚も解らなくなるほどの大森林だ。
とてもじゃないが俺一人で目的地までは絶対に辿り着けないと確信する事となる。そして迷い込んだ人族を待っているのは魔物達の襲撃である。
突然先頭を行く彼女が止まれと手で合図をして前方に集中をしている。
「・・デビルモンキーね 約5匹かな少し厄介な相手よ、、」
背中に背負っていた弓矢にて隠れながら狙いをつけ始める。
「いい?数が多いから私一人では撃ち漏らしがあるのでその時はタローも対応しなさい」
その言葉に頷いてソードを引き抜き戦闘準備に入る。
「・・よしまず一匹、、、それ二匹目、、、三匹目、、ちっ 残りが此方に向かってくる」
矢を次々に流れるように射抜いて行くが残り二匹が突撃してくると言う。
「真上よ!飛び降りて来る くらえ! 命中よ!」
「よし 来やがれ!くたばれ エテ公!」
確かにデビルモンキーが上から落ちてくるようにタローへと向かって来た。その一頭に狙いをつけてタローも渾身の力で切り付けるが、敵も体を捻り僅かに致命傷から逃れると地面に着地してほぼ反射的にまたもや空中高く飛び上がりタローへと襲い掛かる。
「くそったれ 今度こそくたばれ!」
デビルモンキーの攻撃を今度はタローが身をかわしながら剣を横殴りに相手の腹部に叩き込む。
「はあ はぁ どうだ?やったか・・・」
「用心しなさい 確認が取れるまでは無暗に近寄らない事」
反撃に注意して恐る恐る落下地点へと足を進ませる。
「うん 虫の息ね、止めを刺しなさい、、」
彼女から指示が出る、相手の喉元へ剣先を深く突き刺して一息を入れた。
「こいつらは群れて狂暴 そして空中戦が得意なのでやりにくい相手よ」
彼女は本来はこのレベル位なら森を走り抜けるか木に登り枝から枝に移動しながら相手を迷わせていくのだが、デビルモンキーだけはエルフをも上回る身の軽さの為に意外とレベルの割にやっかいな存在だと言う。
・・確かに 俺一人なら囲まれての空中戦で鋭い牙と爪でズタズタにされるな。
弓使いのエルフは森の中では無敵に近い存在なのかも?深いため息交じりに次第に強く狂暴な魔物達と対戦しながら更に奥地へと進んでいく。
今日の宿泊予定地に着いて彼女は半径5メートル程の結界を張り始める。
「・・何回見ても凄い魔法ですね、、安心感が違う、、、」
張られた結界にため息をつく彼であった。
「本格的ではなく 簡易結界だから油断は禁物よ でもここらの魔物であるなら問題ないかな?」
野営も今日で4日目となる、彼女が言うのには明日余程の魔物と出会わなければ、間違いなく明日中に隠れ家まで到着出来るだろうと教えてくれた。
この森の初日は何となく心が落ち着かずに恐怖に近い感覚があったが、4日目にしてかなり魔物達にも慣れ始めて心の平静を保つ事が出来てきた。
「どう? この森で修行したらそこそこレベルが上がりそうかな?」
「勿論です、、正直俺一人での対応はかなり恐ろしいのも事実ですが、、」
「ふふ 大丈夫よ 私も幼い頃に恐怖で眠れなくて、、おっと 余計な心配をさせてはいけないわね」
幼い頃? まさか住み始めたのはまだ成人になる前なのか?
余計な詮索は相手に失礼だと考えない様にしていたが、そんな昔から一人でこの森で暮らしていたとは流石に驚いてしまう。
「・・はい 夕食が出来たわよ 食べたらゆっくり寝なさい」
森の中は時折不気味な声が響いてはいるが、焚火の暖かさと疲れからいつしかタローは深い眠りに就いていく。
「くっ す 済みません、手助けを・・・・・」
彼は現在この辺りに住むホブゴブリンとタイマン勝負をさせられていた。只のホブゴブリンではなくこの地区のホブゴブリン達は自分の知っている強さとは段違いの体格と強さを兼ね持っていた。
例えるなら彼の人族の住む世界でのゴブリンソルジャークラスに匹敵するのだろう、圧倒的な力で武器で叩きつけてくるが受け方が甘いと自分の武器を跳ね飛ばされる可能性がある。
「・・しっかり相手を見て対応しなさい もたもたすると次のゴブが来るわよ!」
そうは言っても通常のホブゴブリンならば単独でも倒せる実力にはなっていたが、ソルジャークラスは全くの別物と考えなければならない。今の彼では冷汗を流しながらギリギリ状態で対応している。
「・・うん?ほら時間がかかり過ぎるから仲間がやって来た様ね 仕方ない、、」
突然素早く彼女は魔物に近寄ると後ろから蹴飛ばして転倒させる。
「ほら 早く止めを!次が来るわ、、」
その言葉に転倒していた魔物の隙を狙い剣を繰り出す。
「はあ はぁ 次ですか?」
「早く構えなさい 来た!」
前方の藪から物凄い勢いで二匹目のホブが襲い掛かって来る。
「うわぁー す 少し待て、、この野郎、、、」
先のホブにて力を使い果たしたタローは忽ち劣勢になっていく。
「・・待てと言うのに、、し 師匠 助けてくれ、、、」
その言葉にピクンと反応する彼女だ。
「し 師匠と言ったのか? へへ 初めて言われた、、はっ しかたないな 手伝ってあげる、、」
キリキリと弓を弾き搾りホブの喉元深くに突き刺さった。
「・・はぁ はぁ、、助かった、、、師匠 凄いな、、」
「ははは まぁ 当然と言えば当然だな なんせお前の師匠だからな、、」
何となく照れている素振りで嬉しそう微笑んでいた。
ちょろい! 次回も使えるか?
不遜な弟子はキャロルの攻略法?を見つけた様だ。
「・・師匠 この先に何かある?進めないぞ、、」
「ああ ようやく我が家に到着したんだ、この先からは私の私有地?だな、、」
そう言うと片手をかざして何やら念じている。
「・・よし 私の後から付いて来なさい」
彼女が一歩進むと途端にその姿が姿が崩れて結界の中へと入り込んでいく。
何なんだ、、師匠の姿が今歪に変形したような、、はっ いかん、、
慌てて彼も結界内へと足を踏み込んでいく。
「遅い、、直ぐに結界は元に戻るから入れなくなるぞ」
彼女から叱りの声が飛ぶが、自分の身に起きた不可思議な現象に呆然としている。
「・・師匠、、結界に侵入するとあんなに気持ち悪いものですか?」
「うーん 私は慣れたからあまり感じないが、言われればそうかもな?」
「あの周りの視界がぐにゃぐにゃと気持ち悪く変形して、、、」
「通過すれば元に戻るだろう?」
・・もっともだ これは慣れるしかないな そう彼は自分に言い聞かせる。
「所で・・ここは別天地ですね、、、」
先ほどまで懸命に密林状態の森を突き進んでいたが、今目の前に見える景色は綺麗に整備された風景が展開していた。適度な大木が陽を遮らない様に点在し歩くのに不自由ない雑草?の背丈であり、遠くまで視界も広がっていた。
先を見ると綺麗な泉が淡々と設置されており、その泉の畔に少し古びた建物が見える。恐らくあれが彼女の住処なのだろうと推測する。
日当たりの良さそうな場所に恐らくは簡易農園らしきものが見えるが、何年も留守にしていた為か各種の野菜の花が咲き乱れている。
「ふふん 暇に任せて何十年も開墾作業をして来たからな、、さて家に入るぞ、、」
家の前で先ほどと同じく手を翳していたが、、、
「・・いかん 魔石のエネルギー切れだ、、」
つまり家にも結界をかけて二重防御をしていた様だ。
「・・入るぞ」
ドアを押すと家の中へと入り込む、彼もそれに続きへと進む。
「うーむ 少しかび臭いな、、窓を全て開けてくれ、そして箒で室内のチリを掃き出して綺麗に掃除お願いする。この家でのお前の初仕事だな。私はこの家の魔石と外の結界用魔石を交換してくる」
後は任せたと出て行く彼女だ、
「えーと 勝手に各部屋の室内に入っても良いのかな、、」
既に彼女は外へと向かっていた、タローが少し躊躇したのは 彼女が窓を全て介抱して内部を掃除しろと言っていたが、彼女の寝室等に入っても問題ないのかと考えたからだ。
師匠とはいえ女性の部屋である そこを綺麗にしろとの命令だが彼女の部屋を下手に掃除したら何か不都合なことがあるかもと躊躇したのだ。
「・・・まぁ まずはこのかび臭さを解消するために彼女の部屋は窓を開けるだけにしよう、、そのうちに帰ってきたらあらためて指示に従おう、、」
まずは急いで各窓を全開にすると、何年も溜まっていた塵関係を外へ吐き出さねばならない。
「・・ごほん ごほん、、結構溜まるもんなんだな、、」
依頼があって何年間も留守にしていたと言っていたな まぁ この位は当然かも。 ふと 思うが依頼のつなぎはどう伝達するんだろう? ここまでかなりの冒険者でなければたどり着けないし、、年に何回は辺境の町へ出かけるとは言っていたが、そんなのんびりした伝達でも支障はないのだろうか?
「うん だいぶ綺麗になったな、今回は少し期間が長かったからな、、」
「お帰りなさい 魔石交換?でしたか 無事に終わったのですか?」
「ああ これでまた何年か問題なく作動するじゃろう」
「あっ まだ掃除が途中なので片付けますから、、」
「済まんな、、そう言えば私の部屋に入ったか?」
「ええ でも窓を開けただけで他はまだ手をつけていません」
結構乱雑に各荷物が置いてあった気がする。極力見ない様にしていたから詳細は良く解らずだ。
「・・もしや 私の居ぬ間にこれ幸いと私の下着を探し出して、、頬ずり等は?」
ぶふーっ 誰がそんな真似をするか!そんな疑いが嫌ですぐさま部屋から出たのに、、、
「ははは 可愛い反応だな 冗談だ、まぁ 下着に頬ずり程度なら見逃してやるぞ?!」
間違えても絶対にしません!
「ふむ 少し寂しいな、、私はそんなに魅力が無いかな?」
そう言う問題とは違います!兎に角そんな変態みたいな真似はしませんのでご安心ください。
当面は修行に明け暮れる毎日だ、俺の感では毎日のしごきで疲れ果ててそんな変態みたいなことをする暇などはない筈だ、、、、、。




