2-2 新仲間結成
彼女の話は止まらない。
「私は今一人である場所に住んでいるの、そして時折人里に出るの。お金を稼いでまた引きこもり生活をするためと妙に人恋しくなった時にね」
笑いながらそう語ってくれた。
「お一人で生活ですか?近くにお仲間や知り合いは?」
「ふふふ 残念だけど誰も近くには住んでいないわ、極たまに冒険者達が迷い込んでくるけど、私の結界魔法で辿り着く事は無いわね、、、」
何か凄い生活をしているんだな ぼんやりと彼はそんな生活を想像していた。
「ははは 魔物も誰も近寄れないから、ある意味安全で気ままな生活よ」
それでも偶に人恋しくなって、、、
「そうね でも年に何回か近くの町に買い物の為に出向いて気分転換しているからな、、、」
そうか生活の為に金を稼いでまた引きこもるのか、、、
「例えば生活費稼ぎならエルフの木製彫刻品を売ればかなりの高額になると聞いていますが?」
「ああ そうね でも私はそんな技術は誰からも教えられなかったし、一人で何回か作成したけれどどうもこれと言った品が、、、」
何か引っかかるな 一人で住んでいるのがまず問題だ、何故に一人で生活を始めたんだろう?余計な詮索をしたくはないが近くに仲間がいないと言う事に引っかかる。人柄を察しても何か村で問題を起して追放された様には見えないのだが、、うーむ 不思議だ。
「まぁまぁ 私の事はこの辺で、、それより現在は一人での活動で? いやそれよりタローのスキルの問題だね、、スキル3へ至急に上げてみる必要があるわね、、それで結論が出ると思うわ。それを見てまた考え方が変わる可能性もあるし、、、現在はどんな活動を?この地区では大した魔物も出ずに個人レベル上げにも困るのでは?」
「・・はい 一番の問題はやはりレベル上げですが、自分の個人レベルも上げて行かなければいいスキルは貰えないとも聞いていますし、、、」
「それなのよね スキルレベルの単独アップはどう言う理屈か個人レベルのアップの仕方によりギフトされるスキル内容は変化するのは間違いないと思うわ」
「・・つまり内容が伴わないスキルアップはそれなりのスキルしか貰えないと、、やはり俺も一緒に辺境伯領に向かうべきだったのかも、、、」
「今となればそうだったかもね、」
「でも今更彼等の後を追って行くのも少し、、」
どうするべきかと考え始めたタローに彼女は提案をする。
「ならば 一緒に私の住んでる古代の森について来る?私はその場所に戻る途中だったのよ」
「えっ?古代の森に棲んでいるのですか!あの秘境で有名な、、それと凶暴な魔物が出現すると聞いている古代の森、、、」
「ははは そんなに怖がることはないわ、私が住んでいるのは古代の森でも端の人族の町にも近い場所よ。偶にしか狂暴な魔物は、、、」
「偶にでも狂暴な魔物が、、でも手っ取り早く個人レベルも上げる必要があるしな、、よし 決めた。もし迷惑でなければ暫く居候しても宜しいでしょうか?」
「いいわよ それにその気になれば私は剣もそれなりに使えるのよ、しっかり扱いてあげれるわ。覚悟していて それと一番気になるのはタローがどんな特典が貰えるのか私も楽しみなの」
・・・早まったかな、、いや これからの俺の為にもここは耐えるべきだな。
「はい、、懸命に頑張りますので宜しくご指導ご鞭撻の程を、、、」
「貴男本当に15歳?何処でそんな言葉を教わったの?まぁ いいわ、そうなれば明日から必要品の買い出しよ、タローの虚空庫の出番よ」
可笑しそうに彼女は微笑みながらスケジュールの調整へと話し合う。
本来は彼女の住む森の近くの町で買い物をすればよいが、辺境の町は食料品以外はかなり割高になる為に、この町で安く買えるものは買っておく方が正解だ。
何せ今回は二人分の荷物となる、彼の虚空庫の出番が来たと言うべきかも。
「どう?まだ入るかしら、これもどうしても欲しい物なの」
どう見ても女性が使用する荷物が主に買い占められている気がする、、それに比べればタローの品物など吹けば飛ぶような存在しかない。
「まだいける?」
彼女は嬉しそうに店屋へと突入していく、やがて虚空庫は一切の品を受け付けることが無くなった。
「ふんふん 結構入ったな、後は森の近くの町で食料の買い占めね」
何時の世も女性は買い物に情熱を注ぐものらしい、、、
「そうそう これを預けておくわ、予備の私の魔法袋なの、重量は百キロ程度だけどこれに最終の食料を入れ込む予定だから今はあんなり収納しないでね」
いえいえこの袋に暫くは自分の大型リュック等を入れて運べそうだ、古代の森迄推定ひと月、、その間は身軽に移動できるのは何より助かります。
壮大な買い占め作業は3日間必要として各店舗を何軒この間に廻ったのか、、タローにしてみれば下手な冒険より疲れた3日間となった。
「いい天気ね、、いい旅行日和だ事、、」
漸く二人は目的の古代の森へと移動開始となる。
「先ずは前方の山を越して更に西へと進むわよ」
特に身軽な彼女は嬉しそうに前方の山を見つめて楽しそうに歩き出す。
さて これからどんな運命が待っているのかな?
タローは半分期待と不安に包まれながら遠い山々を見つめながら彼女の後を歩き出す。
「ふう 先ずは目的の山越えが終わった・・・」
山の麓から幾つもの山を越してきて漸く展望の見える場所までたどり着いた。
「山越えにここまで3日か、、個人レベルは18だったわね かなりスローペースだったけど、ほら遠くのあそこに町が見えるでしょう?あそこまで行けば馬車移動になるわ」
彼の現在では山越えするのが精一杯で、途中で出没した魔物達は全て彼女が鮮やかに倒してきた。
初めて彼女の剣捌きを見たが驚くほどの手練れだったな、、もしかして閃光パーティのグラン氏より上かも知れない。
「・・何故に弓を主体に参戦したのですか?剣の腕前はかなりのものですし、、」
「あら エルフは弓でしょう それに遠距離攻撃の方が安全だし、、」
確かに接近しての交戦はもしかと言う危険性はある、深い森で一人で暮らしていると言う、そこでの怪我はある意味致命傷になる可能性がある。誰も助けてくれる仲間がいないからだ。
「・・確かに一人を前提にすれば常に安全策が一番ですよね」
「ははは 正解よ、常に最悪を計算して行動しなければね」
楽しそうに笑う彼女であった。
そうか、、俺も一人になって全てを自分一人で解決せねばならなかった、、仲間の有難さは失って初めて大切なものと理解したな、、、
「さぁ あの町まで急ぐわよ、、、、」
そうは言っても山の急斜面を滑り降りるように動き回る彼女に付いて行くのは大変であった。
「ほらほら 頑張りなさい、、、」
あの細身の体でどれだけの体力が、、もしかして想像以上にレベルが高いのかも、、 彼は改めて深い森で一人で住む彼女の実力を感じていた。
這う這うの体でようやくたどり着いた町で彼女は隣町へ向かうための馬車予約を手配してくれる。
「幸運よ 明日の朝出発の馬車に予約を入れる事が出来たわ」
「そうですか もし今回間に合わなければ次の馬車は?」
聞くと3日後だという、3日間町で待機も辛いものがある。暇の潰しようがなく宿賃もかかる。
「その隣町迄馬車でどの位なんですか?」
「確か4日の予定よ そして最終の辺境の村まで更に馬車で8日かな?」
素早くこの町に到着するまでの一週間の行程を入れて計算すると、、辺境の町まで20日あまりかな?
今回は場所の乗り継ぎが上手くいったが馬車の待ち時間が最大3日のロスがある、すると古代の森に向かって森の中の家に到着まで歩いて更に5日間近く必要なのか?!
・・ああ 私の足でなら3日ほどだけど、タローの足ならうーん 最低5日以上かな?
エルフは森の住人と呼ばれている、かなり森の中の移動には慣れていると推測されるので5日~最大7日必要かもしれないな、、
「ははは まぁ出てくる魔物の種類と数により多少の日程誤差はあるかな?」
了解です、、、心がけておきます。
翌日からガタガタと揺れる馬車で快適とはいかないが歩くことを考えればそれなりに快適に近い4日間の旅を行い、更に乗り継ぎの馬車で秘境の町まで8日間揺られる馬車で過ごし、彼は全身の苦痛にようやく解放される事となった。
「くぅ、、、全身に痛みが、、、」
「若いのにだらしないわね、でも明日は最後の買い出しで一日のんびり出来るから」
済みません あまり馬車には乗り慣れていなくて、、お尻は痛いし全身の筋肉が、、、
それでも彼は馬車移動から解放された喜びに包まれていた。
「さーて 懐かしい我が家へと戻るわよ」
翌日最後の食料関係を魔法袋に詰め込み忘れ物は無いかと確認作業を終えた一日が過ぎ去った。今日の朝から彼女は浮足立った様子で朝から上機嫌な様子であった。
魔法袋の空きスペースに自分の荷物を押し込み、少しは軽くなった大型リュックを背負い古代の森へと歩き出した二人だ。
辺境の街から数時間歩くとやがて目標の森がくっきりと視線に入って来る。
「キャロルさん、、かなり特異な森の様に見受けられますね」
「うーん そうかな?慣れ親しんだ森だから私はあまり感じないけど、、」
森に近付けば近づく程この森が何やら異様な気配を感じる、自分の知っている森より薄暗く深い緑に一面が覆われている、なにより森内に漂う魔素の量が桁外れにこの森は多いと判断した。
「あら そう?この森の中心部近くにエルフの里があるけど、其処の方が魔素は濃いわよ?」
この森の中心部って、、そこまではどの位かかるのだろう?
「うーんとね 私の家から最低10日程かな?疎遠になりかなり行っていないけどそんなものよ」
するとこの森の端から中心部までエルフの足でも半月かかる行程?!通常の人間なら下手するとまるまるひと月は覚悟しなければ、、
「・・・そうね道が迷いやすいからもしかしたらもう少しかかるかな?」
だったな、、この森の中に道がある訳が無い、、大木の樹木の間を掻き分けての行程になるんだな。
そう考えると少し寒気がしてくる 古代の森の名は伊達ではないのだ。




