2-1 新生活
毎日昼の12時に投稿予定です。
タローが仲間の3人と正式に別れたのは、それから一週間後の事であった。
彼等3名は別天地の辺境伯領へと出発したのだ、当日の朝に皆を見送った後にタローは改めて一人の生活になったと感じていた。
「さて、、皆には黙っていたが空間スキルがどうも発展しそうなんだな、、、」
現在スキルレベルは2であるが、もう少し単独で頑張ればスキルレベル3になりそうであった。
だからどうしたと言う訳ではないが、そもそも前とそんなに変化がないと考えるのが一番の正解なのだが微妙な胸騒ぎが感じられていた。
「結果的には変化なしかも知れないが、まずは一人で至急にレベル3まで上げてみよう」
そもそもスキルレベル2に上がった時にも大した変化はなかったのだが、ステータス板の詳細に空間魔法レベル3にて特典あり とのメッセージ欄を見つけたからだ。
何の特典なのか不明ではあるが一途な希望を抱いたのも事実であった、それならレベル3になるまで仲間と一緒にいれば良かったと言えたが、何となく皆のお荷物になりそうな気配が濃厚であった。
つまり確信ではなく希望に近い思い込みでもあり、その期待に反する結果となった時のショックは今より更に大きくなると感じていたのだ。
虚空庫の大きさは元の倍 縦 横 奥行は1メートルまで増えている、つまり元の8倍の容量になった事で重たい荷物は彼が収納して活動して来た。
他のスキルに縁がなくせめて皆の荷物ぐらいと少し卑屈になりかけていたからだ。そんな状況から脱却できるかもと一人の生活を選んだのも理由のひとつであった。
小まめに倹約して来たので当座の費用には困らない、魔物退治や他のパーティの荷物持ち等で小遣い稼ぎも可能なので、今後もそんなに苦労はしないだろう。
ひたすら最後の願いに近い 特典 狙い?を待ち受けていたのだ。
うーん 冒険者も良いが一人での行動となると、、趣味の薬草集めでポーション作りは出来ないだろうか?
簡易なポーション作りは民間にも伝わっている、但し実際に売られている低級ポーションに比べても効能は1/5程度であり、買い手などはつかない。あくまで緊急用のひとつとしての認識でしかない。
民間用は腹いっぱい飲んでも効能はたかが知れているからな、、、
正式に専門家に入門して将来の生計を立てる手もあるが、趣味と生業とは違う。
自分に本当にその道があっているのかは正直不安でもあった、ならば薬草集めにて日銭の方が遥かに有利だ。Fランク冒険者達では到達できない場所に彼は入り込めるからだ。当面は何でも屋に近い職でスキルレベルの上がる日を待つ彼であった。
「こんにちは!マーリーさんいらっしゃいますか?」
とある薬剤師の運営する店に品物を運び込んだ彼であった。
「・・あら タローじゃないの、、うん?依頼の品がもう手に入ったの?」
出てきたのは店主で30前になる女性だ、近頃やや体形の崩れを気にしているが中々の美人さんでもある。
「ええ ネーム草に ヒヨドリ草 それに黄金草のご注文でしたね?」
「・・早かったわね 近頃近辺の森では取れなくなって往生していたのだけど 助かるわ、、」
ギルドに正式依頼であれば納期期限不明に近い品も彼に頼めば揃う。
「えーと 各20本依頼ですよね お確かめください」
手に取りじっくりと眺めていた。
「・・いいわ まるで採取したばかりの品ね 高く買い取るわ」
こんな時に虚空庫持ちは有難い、品の劣化がほぼ無いと言ってもいいからだ。
「・・はい 規定より2割上乗せしとくわ」
代金を受け取りながら ふと尋ねてみる。
「・・マーリーさん 少し尋ねますがポーション作りに興味がありますが、どの位の期間頑張れば可能になりますか?」
「あら 興味があるの、、そうね基礎知識習得に約2年 技術習得に3年が基本かな?」
計5年か、、、余程の金に余裕が無ければ無理な状況だな。
「ふふふ お金の問題ね? そうね、、タローは若くて元気そうだし、、何なら私の言う事を聞いてくれるなら優遇するけど、、?」
少し斜に構えて流し目にてタローを見つめる。
「・・えっ そのー 嬉しい提案ですが、、ご迷惑を掛けますし あっ、次の配達がありますのでこれで失礼致します」
危ない 危ない こんな女性は要注意と前世の知識?が激しく警告を鳴らしたのだ。
同日に3件配達予定がある、本来ならば鮮度を守るために1つの店を終えて次のクエストに挑戦するが虚空庫持ちなら数件の依頼を同時に聞いて必要な品を補完し、一斉に配達が可能となる。
森の深くに入るのに半日近くかかる、往復だけでも無駄な時間が過ぎて行くのだ。
次の店に着いた時に事件は起きる。
「こんにちはー ジェジェさんは、、、あれ?」
店に入った時に店主と誰かが商談中であったが、その後ろ姿に見覚えがあった。
いや 彼女の少し尖った耳に が正解であろう。
タローの声に反応して店主と顧客の二人が振り向いた。
「あっ、、、閃光パーティのキャロルさん?!」
あら 久しぶりね そう笑ったのはハーフエルフの彼女であった。
「本当に、、あっ 商談中ですか?俺待っていますので、、、」
「いえいえ 商談は終わって雑談中よ 君こそなにか用があるのでは?」
「ああ キャロル、この子は私の依頼にて薬草を届けに来てくれたのよね?」
はい 依頼の品が手に入りました そう言って彼はカウンターへ並べ始める。
「あらあら 高価な薬草が、、これ君が一人で?」
「ええ 今は私一人で頑張っていますので、、」
「・・何か訳がありそうね いいわ商談が終わるまで待っているから、、」
先に用件を済ませるとお金を受け取り更に次の注文も聞き終えると、にこにこ笑うキャロル女史に強引に連れ出されてとある店にて紅茶をご馳走になる。
本来もう一軒店巡りがあるが明日でも可能と言えば可能であり、それより久しぶりの彼女は明るい笑顔を浮かべながらも鋭い突っ込みを入れて彼と仲間の経緯について聞き入る。
「・・・ふーん そんな事情があったの、、すると彼等は今は隣の辺境伯領を活動の場としているんだ、、」
「はい 元気にしていればいいのですが、、もうひと月以上前の話です」
「うーん 問題は付属のスキルがなかなか発生しないのね?空間魔法のスキル2の詳細を教えて頂戴」
問われてタローはその内容を全て話し出す。
「・・特典あり ですって?」
何やら彼女は頻りに考え込んでいた。
「・・・もしかしてだけど かなり特殊なケースでスキル3になった時に現れる可能性があるわよ、、」
「・・特殊なケースですか?」
「そうよ 確か数十年前にも、、ごほん そんなケースがあった記憶があるわ」
「そうなんですか、、、、?」
彼女が言うのにはその人物もタローと同じように付属のスキル発生が無くて苦労していたが、ある時を境にして全てが変ったと話してくれた。
「・・それもやはりスキルレベルが3の時に発生したのですか?」
「そうよ しかも その人物は、、、異世界人だったの」
肝心なところはかなりの小声で彼の耳に届く。
えっ?!異世界人 それってもしや、、、。
「そうね彼は他国の勇者としてその後は今でもその地で暮らしているわ、、」
でたー 勇者伝説が、、やはり同族の仲間が他国とは言え住んでいるんだ。
何やらそんな俺を彼女は観察する様にじっと見つめながら、、
「似てるわね 貴方、、その黒髪 目の色 考え方も、、、」
「わ 私ですか? いえ 私は生まれはこの都市の近くの寒村ですし、、」
「そうなの?ふふふ そういう事にしておきましょうか?」
えーと その考え方ですか? 少し気になるのですが?
「うーん どう言えばいいかな、、物事の筋と言うのか やたら理論的な所があるでしょう?そしてはっきり言えば知っているのに惚けて知らぬふりをしている?そう言う感じかな、、、もっと言えば長く生きた私より物事の真理を知っている、、でも意外とこの世界に疎い そんな感じかな ふふふ」
はぁ 俺はこの世界に疎いのは事実ですが、それは片田舎の村しか知らないのが現実で、、、
「そう言う意味もあるけど発想と知識が桁違いと言った方がわかるかな、、何故にそう感じたかと言えばほらあの閃光パーティの研修時に、太陽と月の関係を教えてくれたでしょう?」
太陽と月の関係? あっ皆既日食事件か!
真昼間と言うのに突然太陽が陰りだして辺りが暗闇状態にまで展開していったのだ。
当然皆が大騒ぎをして狼狽えだしたが、その中で平気な顔でいたのは彼とその昔に同様な経験をしたこのエルフの二人だけであった。
「あの時貴男は少し微笑みながら皆に平気ですよ 直ぐに元に戻るからと全員に語り始めたわね。その言葉の通りやがて太陽は元の姿へ戻りつつ陽の光も回復して来たわ。その後にご丁寧に今の現象の説明を地面に図を書いて教えてくれたわね?私も感心して聞いていたのよ、私もその昔に経験したけれど原理までは知らなかったわ、、ふふふ 不思議な人ね?」
し しまった、、あまりにも皆が怖がるので、つい皆が安心する様に図で説明したよな。
だらだらとタローは冷汗が流れて行く。
「いいのよ そのうちに話す気があれば、、それを楽しみに誰にも秘密にしておくわ」
慌てて会話を何とか変えようと躍起になる彼であった。
「と ところで何故にキャロルさんはこんな場所にお一人で、、?」
「あら 私の事に移るの? ははは 休暇中です!」
呆気にとられた彼に彼女は話を続ける。
「もともとあのパーティは1年間の期間限定契約だったのよ」
その後他のパーティから是非にとも頼まれてまた数年の契約に至ったとの事だ。
「期間限定契約?」
「まぁ ある意味用心棒代わり は言い過ぎかな、当然実力が無ければ出来ない商売よね?」
愉快そうに笑う彼女はその仕組みを教えてくれた。
「つまりは実力はあるがパーティ内の人数不足とか、ランクを上げる為に助っ人が長期で欲しい とかの要望に応えているのが私と言う事よ」
ははぁ 何となく理解したぞ、確かに彼女はあのパーティに溶け込んではいたが、何処かに一線を引いている所があった。それを長命族の血を引く彼女だから と見ていた自分がいた。




