2-5 辺境の町で
這う這うの体で辿り着いた辺境の町の門番に師匠は片手をあげながら挨拶をすると、逆に門番の方がやけに緊張して姿勢を正して入場を見送ってくれる。
「・・師匠考えれば前回も門番たちが師匠の顔を見ると少し恐怖の目になっていた様な、、」
「そうか?礼儀正しくていいじゃないか?」
・・いや 絶対違う、推測だがこの町で師匠は何か事件を起こしたはずだ、、でなければ辺境へ行けば行くほどに門番たちはかなり偏屈で傲慢な態度が多いと仲間の冒険者達が話していたのを聞いた覚えがあるからだ。
ましてはここはそれこそ古代の森に隣接する辺境中の辺境に近い場所なのだから、、、
「まずは持ってきた物を処分するぞ、、」
裏町の小汚い店へと彼女は入っていく。
「お邪魔するよ 元気かい?」
「・・あら キャロル久しぶりだね、帰って来たと言う噂は流れていたけど元気そうだね。うん?隣の若い男はお前さんのいい人かい?」
中年の女性店主が彼女を見つめ何やら意味深く微笑む。
「ははは 残念ながら違うな、森で修行したいからと言うのでな、、」
「へっ?!あの森で修行、、もの好きな まぁあんたが傍に居れば問題ないか?そうそう依頼が数件入っているがどうする?」
「うーん 前回立て続けで長い間仕事したし、今回この子の面倒も見なければならないからパス!」
「そうか まぁのんびりすればいいさ、元勇者メンバーのあんたが出張る程の依頼は今回は入っていないしね、、」
二人の会話からとんでもない会話が飛び出し、思わず目を見開くタローだ。
「あっ あのー、、師匠は元勇者メンバーだったのですか?」
「おや 知らなかったのかい?余計な事を話したかな?」
「ははは もう何十年も前の話だし、人族では昔話みたいに聞こえるだろうから構わないよ。それにあの時のメンバーで残っているのは勇者 ケンタロウしかいないからな、、、」
「おう その勇者ケンタロウだが流石に近年衰えたと聞いているぞ、もしかしたらもう先が短いと思われる、、最後に顔を見せに行けばどうだい?」
元勇者メンバー?! それに名前がケンタロウ?それって、、、、
・・・うーん まぁ考えておく。
少し歯切れの悪い師匠はその話はそこまでと商談の話を開始する。
「何だい この薬草関連の新鮮な事、、途中で採取しながらここまで、、、いや この薬草が生えている危険な場所でのんびり大量の採取何てできっこないわね、、、、、」
師匠と彼は只曖昧な笑顔を浮かべているだけだ。
「・・かと言ってこの薬草関係が自家栽培何て話も聞かないしね、、、もしかして鍵は隣の坊やかい?」
「さて どうしてかね?それより幾らになるのかな?」
「・・・詮索はしない方がいいみたいだね、、了解 今薬草関係は手薄で高く買い取る事にするよ 有難うね」
長い付き合いらしく二人の会話はそれ以上は進まずに、清算を進めて行く。
「あっ そうだ、魔道具を作るのに高品質な魔石を頼まれているのだけど、、あんた手持ちをもっていないかな?」
「どの程度の魔石が必要?」
「高品質であればあるほど高く買い取るよ」
チラリと彼女は隣のタローに目配せをする。
彼は頷いてダミーの魔法袋から大量の魔石が入っている麻袋を取り出した。
「袋の中から自由に選んで下さい、、、一応この小袋の方がかなり大きめの魔石を入れてある」
大小の袋二つをカウンターの上にドサッと置くタローだ。
「な 何だい、、これ全て魔石なのかい?どれ程の魔物を、、、」
小袋と言ってもかなりの大きさの袋になる、先に出した大袋があまりにも大きくて小袋が小さく見えるだけだ。
「・・・中を見るよ、、これは また・・・うん これいいね これも貰う そしてこれも、、、、」
袋の中を掻きまわしながら気に入った魔石を10程度選ぶと感心しながら、、、
「・・そうかこれは修行の副産物かい?恐れ入ったよ、、、」
「うん?それでいいのか?もっと大き目な魔石が入っているが、、」
「いやいや 相手の注文はこれ程で十分さ それにその魔石は価格が飛び跳ねる程の大きさだよ。早くギルドにて清算するんだね あいつ等が慌てる様子が浮かぶよ。流石古代の森産は立派な魔石が多いわ、、でもこの大き目な魔石を一つは私が買い取ろうかな?見せ見本にするよ。」
なんだかんだと言いながら中年店主は嬉しそうに大きな魔石を一つ選ぶと喜んでいる。
「えーと 店の現金が足りるかな?ちょっと待っておくれ、、、」
店主は店の奥へバタバタと走り込むと やがてしなだれて帰ってきた。
「・・残念だけど金貨20枚程足らないね 残念だけどその大きな魔石は、、」
「構わんぞ 別の機会に融通を計ってくれればそれでいい」
途端に目が輝き店主は店の奥からありったけの金貨を運んで来て並べる。
「す 凄い金額が、、、」
「うん? 坊やはまだ品物の価値が良く理解できないのか?彼女に良く教えてもらえばいい」
「ははは ギルドにて清算すれば嫌でも覚えて行くだろう、、」
御尤も、、今迄高額な魔石などギルドに納品した事もなかった、物の価値と言うか 高品質の魔石の価値など言葉で知っていても体験などはした事は無かった。
考えれば前に住んでいた都市は比較的魔物の数も少なく、危険度の高い魔物などは年に何回しか噂話でしか聞いたことが無かったのだ。
その為に前に所属していたパーティはあの地からより魔物が多い場所へと移動した原因のひとつでもあったと言う事になる。
「では また来るので、、、」
店主に挨拶を終えて冒険者ギルドへと足が向かう。
「・・あの 師匠、、先ほどの金子を私がこのまま預かっていて宜しいのでしょうか? つまり あまりの高額に落ち着かないと言うか、、、」
「ふむふむ ならば その小道の陰にてお前の虚空庫へと仕舞い込んでくれ 一番安全だろうからな」
小心者のタローは持ち慣れぬ大金にびびり 対応を相談したのだ。
師匠の魔法袋に収めた大金を裏小路に移動して虚空庫に素早く入れ替えてほっと一息を入れる。これでもしかの時は腰にぶら下げている魔法袋だけの被害で収まりそうだ。
当然この魔法袋の中身は彼の風体に似合った?品しか入れ込んでいない、万一の場合でも最低の被害で済む可能性が高くなる。
「おっ ここも久しぶりだわね、、、」
ハーフエルフとまだ幼さが残るタローの二人が冒険者ギルドへと入り込む。
そろそろ夕方になろうとして冒険者達も一段落して美人受付嬢を何とか口説こうとするもの、ギルド内の食事コーナーにて安酒を飲み干す者、今日の仕事の成果を自慢げに語り合う者とかなり殺伐とした雰囲気が溢れている。
「・・夕方の忙しい時に済まんな、、ギルマスに私が話があると伝えてくれ」
「はい お久し振りですね、、 ギルマスに連絡いたします」
彼女とは昔からの知り合いなのかこんな時間帯でも迷いなく業務を中断して席を外す。
「なぁ エルフのお姉さんよ 横入りにて彼女との話を中断させるとはどんな了見なんだ?」
「彼女との話?どうでもいい口説き文句しか聞こえてこなかったが?」
かなり厳つそうな顔の冒険者が不満げな顔を近寄せて絡みだす。
「あん?俺にとっては一息入れる大切な時間なんだよ 邪魔をしやがって、、それともお前が責任を取って一晩俺と付き合うか?たっぷりと可愛がって、、、げふ?!」
相手の言葉を最後まで聞く必要が無いとキャロルが強烈な裏拳を男の顔面に叩き込むと男の体は数メートルは弾き飛ばされて側面の壁に激突する。
「「「ガハハ キャロル姐さん勘弁してあげてくれ、そいつは最近他国から流れて来た者だ。姐さんを知らないモグリ当然なやつなんだ!」」」
途端に周りの冒険者達が楽し気な声が上がり出し一気に気分が盛り上がる。
「「あいつは馬鹿だ 少しは腕に自信があってでかい顔をしていたがざまぁ無いわ」」
大笑いの声がギルド内に響き渡る。
「・・おいおい 何なんだこの騒ぎは?」
「「「ギルマス あいつが姐さんにちょっかいを出して弾き飛ばされたんだ ガハハ、、、」」」
ちらりとその男と彼女を見て 途端に深いため息まじりに頭を左右に振りだす。
「ここでは騒がしい 応接室に来てくれ、、」
ギルマスを先頭に彼女とタローが続いて歩き出す。
「・・久しぶりだな 今回は随分長かったな?」
「ああ 本契約と現地で飛び入りの契約の二つを熟してきたからな、、」
「そいつはご苦労な事だ、、で その若い男は姐さんの何なんだ?」
「ああ 森での修行に私の家をベースキャンプに利用している」
「あの森で個人レベルアップをか、、、坊主昔のレベルと今のレベルは?」
何やら興味を引いたのかギルマスはタローに問いかけた。
「・・森に入った時はレベル18で約半年で30に到達しただと?」
「・・・これは驚いた レベル18であの森の内部に?自殺行為だな、、しかし約半年で今は30か、、、」
古代の森は入り口近くであってもレベル20を必要とする、彼女の住んでいる場所なら最低30レベルが必要となる。
「・・姐さんにかなり扱かれたのか?」
途端に彼は少し顔を歪めて頷く。
「・・・同情するぜ ふう しかし何故に姐さんが物好きな真似をして、、、うおっと!」
彼女の目が一瞬険しくギルマスを睨んだのに気づいたのだ。
「・・了解 詮索はしない で いつまであの森へ?」
「・・そうね 今は最終段階かな?もう少しで卒業ね」
元々の計画は彼のスキルレベルアップに関して付与される項目に興味があったからだ。
何故かと言うと彼が異世界人であろうと推測していたからでもある、異世界人はこの世界の者とはかなり違う形での付与スキルがある事を前の勇者で彼女は知っていたのだ。
それも個人レベルが低レベルだと大した付与にならないと言う。ならばまずは個人レベルを上げておいて本命のスキルレベルを上げる作戦を採ってみることにした。
「レベル18だとギルドランクはEランクなのか?」
「はい、、ここでのギルドの貢献はまだ無かったので、、」
「・・それは現状のお前の実力では少し歪なランクだな、至急ランク上げも必要だろう?」
「それでだ お前に少し相談がある、、、」
何事かとギルマスは怪訝な顔を浮かべる。




