第八話
六歳になりました。なんと、こんどの賢者試験を受けることになっちゃいました。
賢者学園の最上階にある試験会場は、厳かな空気に満ちています。
学園長のアルフレッド先生と、宮廷魔術師団長のイグナーツさん、そしてもちろん、不老の魔術師リリアーナ師匠です。
「ルークちゃん、不老とかあまり言わないでね、なんか、おばあちゃんみたいだから」
「うんわかった、不老のお姉ちゃんだよね」
「あまり、わかってないような」
「さあ、ルーク君。賢者試験の最後の課題だ。君の知識と、魔法の力を我々に示しなさい」
イグナーツ先生の尖ったメガネごしの眼差しが、ちょっと怖いです。
そんなイグナーツ先生に向けられる、師匠の笑顔が怖いです。なんか、口元がヒクヒクしてます。
前世の知識とこの世界で学んだ魔法を融合させ、高度な魔法を次々と披露していったんです。
魔法を披露するたびに、おおとか、なに!とか歓声と悲鳴があがります。
なんだか、珍しい魔法だったみたいだね、みんな口が開いたままだったよ。
「な、なんだと……!この魔力の制御、そしてこの魔法理論は……!そんな、ありえん」
イグナーツさんは、なぜか僕を睨んでる。
「素晴らしい……!ルーク君。君は、間違いなくこの時代最高の賢者だ」
褒めすぎですよ、アルフレッド先生。ほら、師匠なんか何にも動じてないよ。
試験が終わり、合格発表の時が来た。
「ルーク君。賢者試験、見事合格だ」
アルフレッド先生が、僕に賢者の紋章をくれました。
師匠じゃないんだ。なんか、しゅんとしちゃうね。
「おめでとう、ルークちゃん。今日から、氷の賢者だ」
師匠は嬉しそうだった、僕をぎゅっとしてくれた。
「あら、どうしたの?ルークちゃん、師匠からメダルが欲しかった。まぁ!可愛すぎるわ!もう、私どうにかなっちゃいそう!」
僕は賢者として認められたことに、少しだけ誇らしげな表情を浮かべた。
その時、イグナーツがルークに話しかけてきた。
「ルーク君。君ほどの才能を持つ者は、宮廷魔術師になるべきだ。私のもとで、魔法の探求に生涯を捧げないか?」
イグナーツの言葉に、いや、なに言ってんのこの人。
「宮廷魔術師、ですか?」
「そうだ。王宮には、君の才能をさらに伸ばせる環境がある。君ほどの才能を、冒険者稼業などで浪費するのは惜しい」
イグナーツさんがそんなことを言ってきた。でも、僕の心は決まっている。
「もちろん、断ります。僕の夢は、冒険者なんです」
イグナーツさんは驚愕した。断ると思ってなかったらしい。
「冒険者だと?君ほどの才能を持つ者が、なぜそんな危険な真似を……?」
そんなのは、僕の勝手だと思うんでよね