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第五話


ルークがまだ三歳だった頃。


彼は孤児院で、不思議な力を持っている子供として、少し周りから距離を置かれていた。魔力を制御する方法を知らなかったルークは、感情の昂ぶりと共に無意識に魔法を使ってしまい、よく周囲を困惑させていた。


ある日、ルークは小さな花壇に水をやろうと、無意識に水魔法を使った。しかし、魔力が暴走し、花壇は巨大な氷に包まれてしまった。


「う、わぁ……ごめんなさい……!」


ルークは慌てて魔力を抑えようとしたが、制御できずにそのまま意識を失ってしまった。その時、彼の脳裏に、この世界とは全く異なる光景が流れ込んできた。


*これは……なんだろう?*


それは、純粋な知識の奔流だった。物理学、化学、数学、そして魔法とは異なる「科学」という概念。ルークの小さな頭脳は、その膨大な情報にパンク寸前だった。


---


ルークが目を覚ますと、そこは孤児院ではなく、見知らぬ部屋のベッドの上だった。そして、目の前には一人の女性が、心配そうに顔を覗き込んでいる。


「……よかった、目を覚ましたのね。大丈夫?気分はどう?なにか、欲しいものはある?」


女性ははルークをぎゅっと抱きしめ、頬擦りをしてきた。ルークは、あまりの密着度に困惑した。


「あ、あの……あなたは、誰ですか?」


「ふふ、私はリリアーナ。魔法使いよ。あなたは魔力枯渇で気を失ったのよ」


リリアーナはルークを抱きかかえたまま、離そうとしない。ルークは少し息苦しくなりながらも、彼女の優しさに触れて、少し安心した。


「すごいわ、ルーク。三歳にして、もうこれほどの魔力を持っているなんて……。でも、もう無茶しちゃダメよ?私が、あなたに魔法を全部教えてあ・げ・る♡」


リリアーナはそう言って、ルークの額に優しくキスをした。

ルークは、熱い頬をなんとか隠そうと、顔を背ける。


「わ、わかったから、離してください……!」


「まぁ!なんて可愛らしいのかしら。ルークは照れ屋さんなのね」


リリアーナは楽しそうに笑い、ルーク頬にキスをした。


---


賢者学園の片隅にある、リリアーナの研究室。そこが、ルークの新たな生活の場となった。


「いい?ルークちゃん。魔法っていうのはね、こうやって魔力を流して……」


リリアーナはルークの小さな手を取り、魔法の基本を丁寧に教えてくれた。ルークは、前世の知識と彼女の教えを組み合わせ、すぐに魔法を習得していった。


「すごい……!ルークちゃんは、もうこんなことができるのね!」


ルークが氷魔法で精巧な氷の彫刻を作ると、リリアーナは目を輝かせ、ルークをぎゅっと抱きしめる。


「ああ、もうルークが可愛すぎて、私……どうにかなっちゃいそう!」


リリアーナはそう言いながら、ルークの頭を胸に押し付けた。ルークは、その度にもみくちゃにされ、疲労困憊になる。


「師匠、はずかしいです」


「あら、ごめんなさい。でも、ルークちゃんが可愛すぎるのがいけないのよ?」


「……僕が、悪いの?」


ルークが上目遣いで尋ねると、リリアーナは嬉しそうに微笑んだ。


「そうよ、ルークちゃんが可愛すぎるのが、ぜーんぶ悪いの。ね、ルークちゃん。賢者を目指さない?」


ルークは、リリアーナのその言葉に、少しだけ希望を見出した。彼女の溺愛は少々厄介だったが、ルークの力を真正面から認め、受け入れてくれる存在だったからだ。


こうしてルークは、溺愛する師匠リリアーナと共に、賢者学園で魔法の研鑽を積んでいくことになった。そして、彼が六歳になった時、賢者試験に合格し、「氷の賢者」の称号を得るまで、そう時間はかからなかった。

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