第十五話
王都アウレリアの王城、その広大な舞踏会場は、華やかなドレスを纏った貴婦人たちと、正装に身を包んだ貴公子たちで賑わっていた。僕は慣れない礼服に身を包み、会場の隅でその光景を眺めていた。
(エリス……)
「ルーク様」
声をかけられて、僕は振り返った。そこには天使がいた。白いドレスに身を包み、髪には花飾りが飾られている。その姿は、僕が今まで見たどんな光景よりも、美しく輝いていた。
「エリス・・・・綺麗だ」
この日のために一生懸命、ダンスの練習をした。貴族的な言葉遣いや、礼儀作法も学んだ。全ては、エリスと共にこの舞踏会を楽しむためだった。それなのにありきたりな言葉しか出てこなかった。
「ルーク様もとっともかっこいいです」
ちょっと、ほほを赤く染めてエリスがいった。
ああ、このままお持ち帰りしたい。
その時、一人の貴族令息が、エリスに声をかけた。
「エリス王女殿下。よろしければ、この私とファーストダンスを踊っていただけませんか?」
令息は、優雅な仕草でエリスに手を差し伸べた。ファーストダンスを踊った者が、一番の婚約の権利を得る。この世界の貴族社会の常識だ。
(僕もエリスを誘いたい……!)
(僕の下手なダンスで、エリスが恥をかいてしまったら……)
そんな気持ちが先に立ってしまった。
エリスは、令息の申し出に、少し困った表情を浮かべた。その視線は、僕の方へと向けられている。
「ありがたい、申し出ですが、お断りいたしますね。わたしの相手はもう決まっておりますので」
エリスは僕に手を差し伸べて
「私と踊っていただけませんか?英雄様」
「え、エリス……?いいの?」
「はい。私の英雄様は、ルーク様だけですから」
僕はエリスの手を取り、ダンスを始めた。緊張しながらも、エリスがリードにしてくれたのだ、ぎこちないながらもダンスを踊った。
周りの貴族たちは、その光景に驚きを隠せない。
そりゃ、そうだよね、僕は平民だしね。
「エリス王女殿下が、あの子供と……?」
「ファーストダンスを踊るなんて、一体どういうことだ?」
しかし、エリスは、周囲の視線など気にも留めなかった。二人の間には、温かな空気が流れていた。
「ルーク様、大好きです」
その様子を、会場の隅から見ていたリーリアは、ルークとエリスの幸せそうな姿を見て、少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。
そして、すぐに不敵な笑みを浮かべた。
(ふふ、今日は譲ってあげる。でも、次は私の番だからね)
リーリアは、そう心の中で呟き、ルークへの想いを胸に、こっそりと決意を固めるのであった。




