第十四話
新しい家を建ててから、数日が過ぎた。家には、毎日多くの訪問者がやってきた。
「ルーク様!この庭に花を植えませんか?バラなんか、とっても素敵ですよ!」
エリスちゃんは、家の庭を嬉しそうに走り回っていた。彼女は、使用人としてルークの世話を焼くという口実で、毎日やってくるって言うか、住んでいる。
ちなみに、エリス付きの侍女長さんも、エリスちゃんの家事修行についてきていた。
エリスちゃんが、一通り家事が出来るようになったら引退するそうです。
「あの、エリス様が・・・」
なにか思うことあるんだろうね。なにやったのエリスちゃん
「ルークはん。なんやのあの椅子、めっちゃ気持ちええのんやけど?」
「マッサージチェアだよ、疲れたところもみほぐしてくれるんだ」
「なぁなぁ、あれ、うりださへんの?売るよね、売らして、たのむわ」
商人の勘がうずいたらしい。
設計図を渡すと、一目散に商会に帰っていった。
「また、くるさかい、うちの部屋もよろしく!」
リーリアは、家で帳簿をつけている。
「ここは静かやさかいな、事務仕事はかどんねん」
「あらあら、ルークちゃんの周りは、いつの間にかこんなに賑やかになっていたのね。でも、ルークちゃんが可愛すぎるのがいけないのよ?」
師匠は、ルークの頭を撫でながら、ご満悦な表情を浮かべていた。
お母さんみたいだ。
賑やかな毎日に少し戸惑いながらも、その生活を楽しんでいた。しかし、ある日、エリスちゃんが寂しそうな顔で話しかけてきた。
「ルーク様……私、来週の舞踏会に出席しなくちゃいけないんです」
「舞踏会?それが、どうしたの?」
「舞踏会で、婚約者を決めるんです」
「え?だって。エ?
「はい……。私のお姉様も、お兄様も、もう婚約者がいますから、私もそろそろ、決めなくちゃいけなくて……」
エリスちゃんは、そう言って、下を向いた。
エリスちゃんが婚約するという事実に、自分の心がざわつくのを感じた。
「でも、私はすでに、でも前から計画してあって、今更中止にはできないからって」
(どうしてだろう?エリスちゃんが婚約するなんて、ただの王族の事情なのに……)
(エリスちゃんと、毎日一緒にいて、楽しかったな……誰かのものになるなんて)
エリスちゃんが自分のために一生懸命世話を焼いてくれたことや、笑顔で話しかけてくれたことを思い出した。そして、その思い出が、自分の心を温かくしていたことに気づいた。
「ルーク……さま」
「・・・・」
「あの、ルーク様、一緒にですね」
「え?」
「ルーク様、一緒に舞踏会に行ってくれませんか!?」
(……そっか。僕は、エリスちゃんのことが、好きなんだ。師匠と同じくらい)
(でも、僕は冒険者だ。エリスは王女様……僕とエリスは、住む世界が違う)
エリスの婚約話に、自分の無力さを感じた。
「師匠、もしなんですけど、この国を出ることになっても」
「いいわよ。私は国とかめんどくさいし、ルークちゃんがいるところが私の場所だしね」
「ありがとう、師匠!大好きです」
「もう、可愛いわね」
ぎゅっとされました。
そして、舞踏会の当日。一人でエリスちゃんのことを考えていた。
「ルークちゃん、元気ないわね。どうしたの?」
師匠が頭を撫でながら、心配そうに尋ねた。
「師匠……僕、エリスちゃんのことが……」
言葉に詰まってしまった。
「……ふふ。ルークちゃんは、もう子供じゃないのね」
師匠は、僕の言葉を聞いて、優しく微笑んだ。
「でも、ルークちゃん。あなたは、氷の賢者よ?自分の気持ちに正直になればいいのよ?」
師匠の言葉に、ルークはハッとした。
(そうだ……僕は、氷の賢者だ。僕の力は、エリスちゃんを守るためにあるんだ!)




