第十二話
ちっちゃい賢者 第十二話
近衛騎士団詰所の地下、拷問部屋。
ルークの無残な姿を前に、リリアーナの全身から凄まじい魔力が渦を巻いていた。今にも爆発しそうなほどの激しい怒りに、周囲の騎士たちは恐怖で身動きが取れない。
「誰が……誰が私のルークをこんなに……!絶対に許さない……!」
その時、リリアーナの目の前に、一人の少女が飛び出した。エリスだった。
「待って……!リリアーナお姉様!」
いきなりのお姉様呼びにリリアーナは、一瞬戸惑った。
ショタも好きだが、美少女も大好物のリリアーナだった。
エリスはルークのそばに跪き、震える手でルークの頬にそっと触れた。
「ルーク様……ごめんなさい……。私が、あなたをこんな目に……!」
エリスはそう呟くと、両手をルークの顔にかざした。すると、彼女の手から、温かな光が放たれた。それは、この世界でも滅多にお目にかかれない、聖魔法だった。
「聖魔法!?」
リリアーナは、その光景に驚愕した。聖魔法は、神官や一部の選ばれた者しか使えない、特別な魔法なのだ。しかも、こんな美少女が。驚愕するのはそこでは無いはず。研鑽を積んだ神官でさえ、傷を元通りにするのは至難の技なのだ。
エリスの聖魔法によって、ルークの顔にあったアザや傷は、みるみるうちに癒えていく。
「この子はいったい……」
リリアーナは、エリスの正体を知らないながらも、彼女の聖魔法の力で、ルークの顔色が良くなっていった。
彼女の怒りも鎮まっていった。
ルークの傷が癒えていくのを見て、エリスは安心した。しかし、同時に、みずからのせいでルークが酷い目に遭ってしまったと、自責の念に駆られていた。
(私が、ルーク様をこんなにも苦しめてしまった……。もう、二度とルーク様を一人にはさせない)
エリスは、心の中で、ある決意を固めた。
王家の印の短剣を取り出して、長い金髪を切った。そして、おもむろに着ていた、ドレスを脱ぎ、毛布を羽織った。
「お姉様、お父様にこれを」
アメリアに短剣と切った髪、そして、ドレスを差し出した。
「お父様にお伝えください、英雄様に仇なした、王族のエリスは死にました。ルーク様にお許しいただければ、奴隷として身の回りのお世話して暮らします。と」
赦されなければ?とは、聞かなかった。
答えはわかったいる。同じ立場なら私もそうする。
「わかったわ。しっかりおやんなさい。」
ルークは許すだろう。話したことはないが、なんとなくそんな感じがした。
「リリアーナ様、ルーク様が回復されるまで、看病を手伝わせてください。」
エリスがペコリと頭を下げた。
(何?この子可愛くない?貰っちゃっていいのかな?いいんだよね)
数日後、ルークはリリアーナの研究室で安静にしていた。あの後、アメリアやエリスが事情を説明したことで、衛兵隊は、ルークを釈放。そして、責任者は、お役御免になった。
コンコン
ベッドで休んでいると、部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
扉が開くとそこに立っていたのは、着なれない使用人の服を着たエリスだった。その顔を見て、
「エリス…ちゃん…!?なんで、そんな格好を?」
「ルーク様……」
「あの、ルーク様のお世話をさせていただく事になりました。……。私、ルーク様のお世話をさせてください!」
エリスちゃんは、そう言って、深々と頭を下げた。
「でも、エリスちゃんは・・・」
困惑していると、再び扉が勢いよく開いた。
「ルークはん!」
「リーリアちゃん!?」
「ルークはん!だいじないでっか!?もう!こんなんなってるなんて、うちがもっと早う、そばにいれば……!」
リーリアはそう言って、ベッドに駆け寄った。
「え、えっと……リーリア?ちゃん」
困惑する中、リーリアとエリスは、ルークの看病を巡って、互いに火花を散らし始めた。
「せや、エリスはんとか、いわはりましたな。ルークはんの怪我あんさんのせいやって聞きましたで?」
「いえ、わたし、その・・・・」
「エリスちゃんは、僕を助けてくれんだよ。悪く言っちゃダメだよ」
「わ、私はその、・・・・ルーク様!私をルーク様の奴隷にしてください!?」
「!!」
「それが、私の贖罪です。どうか、おねがいします」
エリスちゃんは、床に這いつくばって、頭を床にこすりつけた。
この世界にも、あるんだね。土下座
「うちはな、ルークはんと仕事で関わりがあるんよ!いわゆる、ビジネスパートナーってやつやねん。当然ルークはんのお世話はうちがします。」
「こら!お二人とも、いい加減にしなさい!ルークちゃんはまだ安静にしないとダメなの。」
師匠が、二人の間に割ってはいった。助かった。
「だから、ルークちゃんのお世話は交代でしましょうね」
「「わかりました」」
「二人ともありがとね、うれしいよ」
「もう、ルークちゃんやさしい」
師匠がぎゅっとしてくれた。なんだか、やっぱり師匠が一番だな。
「あ、ずるいです、リリアーナお姉さま。わたくしも」
エリスちゃんもぎゅっとしてくれた。
「じゃ、うちもま〜ざろっと」
リーリアちゃんも
「なんか、賑やかでいいね」
僕は、にっこりした。
「そうそう、エリスちゃん、これを」
師匠が胸元からだした短剣と手紙を、エリスちゃんに渡した。
ベッドの下で、キツネのゴンは、この騒動には関わらないとばかりに、静かにあくびをしていた。




