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7話 敵愾心のある味方



途中でいつものルツの視点から、ミラフィの視点へと変わるところがあります。



「たーすけてー。誰かいませんかー?」

「誰もいねぇよ。つーか、大声で助け求めるやつもいねぇよ」

「あ、言われてみれば確かに。バレちゃうもんね」

「いや、当たり前のことだろ」


 運動場にある牢屋の前で、呆れた表情をしながらも、よそ見はしてくれないぶっきらぼうな男、ディセルと僕は色々ありすぎた、さっきのことについて話していた。


「それでね、ドーンって爆発があったわけですよ」

「おん、それはもう何回も聞いた。その原因について、俺はずっと知りたいって言ってんだけど?」

「そこは⋯⋯ね?ぜひ、名探偵ディセルに解き明かしていただきたいと思っているんですよ?」

「おう!任せろよ────って、言いたいとこだが、わからねぇから教えてくれよ。俺とルツの仲だろ?」

「そうだね!急に女性のタイプについて一方的に聞いてきて、一方的に語って去って行った仲だね!」

「ばっか!お前、それ大声で言うなって!!」


 お前の声が一番うるさいよ、という言葉は心のなかに留めておく。ディセルはかなりの女好きだが、全くと言っていいほどモテなくて、世の中のモテる男を全員嫌っている。

 そして、僕がディセルに初対面で、一番最初に言われた言葉が女性のタイプを尋ねるものだった。しかも、ディセルによる一方的な語りを、横で聞いていたあのミラフィですら、マジかこいつ、という表情をしていた。


 さっきの爆発のことについて、他の人に詳しく教えていいとは思えないので、ずっと話をそらし続けているわけだが、さすがに適当なことを言うのも、もう飽きた。


「うるさいよ、大声で叫ばないで。あたしの手元が狂ったら、この辺り一帯吹き飛ぶんだからね」

「そんなもの作るな!!」

「だーかーら、叫ばないでよって言ってるじゃん」

「作るなっ!(小声)」

「えー?あたし、耳悪いからよく聞こえなーい」

「こんにゃろ⋯⋯⋯!」

「あたし、女の子ですけど?野郎じゃないけど?」

「聞こえてんじゃねぇか⋯⋯!」


 狭い牢屋の中で道具を使って、ただただ毒を作り続けているマレアは、牢屋の前で未だにこちらを睨んでいるディセルと口論になってしまった。

 ちなみに僕が牢屋から早く出たい理由の8割は、マレアが僕の横で、いつ吹っ飛ぶかもわからない毒を作っているからである。


 あの爆発の原因はミラフィだったけど、まさか本当に爆発するものを作っていたとは思わなかった。なんてもの作ってるんだよ、こいつ。


 さすがに、爆発物を作ってるマレアの横にいつまでも居たくない。いつか、本当に爆発して吹っ飛びそうだし。今度こそ本当に死にそう。







 

 

  

「はぁ、都合よく誰かが助けに来てくれないかなー?」

「来たよ?(小声)」



 ─────っ?!


 

 ⋯⋯⋯耳元でいきなり誰かに小声で話しかけられたので物凄く驚いたが、その後にトンと誰かが僕の肩を触る感覚があったので顔には出さないように耐える。

 すると、その人物の気配はマレアのもとには行かずに、牢屋からすぐに出ていった。



 

 ⋯⋯騎士も気づいてないし、マレアだけ避けたことを考えると、多分助けてくれたのはソエだな。流石に実験体にされた恨みもあるから、マレアは助けたくなかったのかもしれない。


 

 まぁ、ソエのことはさておき。問題はいつ出るかだ。盗賊は助けてもらっても、1回外に出てから牢屋の中に入らなきゃ、他の人を助けることは出来ない。だから、今ここでマレアを助けることは出来ないし、僕がすぐ出てもディセルに捕まってしまう。


「う〜ん、誰か来てくんないかなー?」

「さっき牢屋を守ってた騎士の一人に、盗賊を追わせたからそろそろ捕まるんじゃねぇの?」

「そういう意味で、来てほしいんじゃないんだよね」


 仲間に騎士に捕まって連行されて、こっちに来てほしいっていう意味じゃないんだよなぁ。できれば目を引いてくれるような、囮が来てくれるといいんだけど⋯⋯⋯。


 心のなかで仲間を待ちわびていると、牢屋の前でディセルがすっごい悪い顔をして笑った。


 

「とにかく、今盗賊を追ってる騎士はかなり強いぜ。簡単に助けにこれる奴は絶対に居な─────」




 




 

 


「助けに来てやったぞ!!」



「⋯⋯⋯居たね」

「うわぁ〜、マジかよ。疲れなさそうだから牢屋守ってんのに、来るんじゃねぇよ」

「いや、騎士なんだから盗賊は捕まえなよ」

「めんどくせぇー」


 少し牢屋から離れた場所に颯爽と現れた、僕とマレアを助けに来てくれたヒーローは何故か、自信満々な顔をしてこちらを見ている。

 特に、僕の方を向いてはドヤ顔をしてきた。何だ、あの顔。死ぬほど腹立つ、うざい。


「ラティス、今からでも帰る気はねぇ?」

「無い!俺の成績を上げるチャンスでもあるわけだからな!」

「⋯⋯じゃあ、ルツは残してマレアだけ助けてくんね?正直、あいつが近くに居るの怖くて仕方ねぇんだよ」

「わかった」

「そうだよな、無理だよな────ってえっ、マジ?」

「マジ」


 真剣な顔でそう答えたラティスは、入学した昨日からずっと、僕の方をじっと見つめては睨んでくる男だった。

 最初は、僕とは別の闇ギルドの人間で、僕の正体を知っているのかとも思ったが、こんな奴居なかった気がするので放置することにした。


 もしかしたら、この2日で僕が気づかないうちに何かしてしまっていたのかもしれないが、それとこれとは話が別だ。マレアだけ助けて、僕は助けないというのには納得がいかない。


「いや、何で僕のこと助けてくんないの?」

「だって俺、お前のこと嫌いだし」

「はぁ?何でたった2日で嫌われないといけないわけ?」

「そういう態度が気に食わないんだよ!」

「どーいう態度だっつーの!」

「それだよ!」

「どれだよ?!」

「まーまー、落ち着けって。喧嘩なら後でしろよ。な?お前ら、一応味方だろ?」


 ディセルがラティスに近づき、両手を前に出して僕のいる牢屋から遠ざけようとする。しかし、ラティスはそんなディセルのことも睨み始め、距離を取る。


「さらっと近づいてきて、俺に触れようとするな」

「あ、バレた?」

「何でバレないと思ったんだよ⋯⋯」

「まぁ、取引は成立したしな。早くマレアだけ解放してくれ」

「わかった。おい、こっちに手を伸ばせ」


 盗賊は牢屋に連行されると、仲間に触れられるまで出られない。逆に、牢屋に助けるために入ってきた仲間に自分からでも、触れられれば出れるということだ。

 ラティスは自分が牢屋に入って、僕が無理矢理触れてくることを危惧してるのか?だからマレアだけ助けるために手を伸ばしてると⋯⋯。







 

 しかし、ラティスが手を伸ばす後ろではディセルが2人を捕まえる魔法の準備を始めている。


 

 ⋯⋯やっぱり、あいつラティスやマレアのことも捕まえる気じゃん!

 成績が影響するから、嘘ついてディセルが2人を捕まえようとするのも仕方ないが、こんなのでも2人は一応味方なので助けることにする。


「よし!これで触れられたな!」

「やったー!これでやっとあたしの()を皆に使える!!」

「おっしゃ、もらった![火の玉(ファイアボール)]!!」 

「「───えっ?」」


 牢屋から出てテンションが上がったマレアの首根っこを、さっきのガルグ先生がしていたように掴み、もう片方の手でディセルの火の玉に対抗する魔法を放つ。


 

「[影の矢(シャドウアロー)]!」

「⋯⋯あっ、おい!」

「何ボケっと突っ立ってるの?早く逃げるよ」

「お前に言われなくても、わかってるし!」

「わかってんなら、速く走ってくれる?!」


 火の玉が影の矢と正面からぶつかったことで、ボンッと言う音を立てて消滅する。

 

 影の矢で火の玉を打ち消した僕は、ラティスと口論をしなつつも、ディセルの視界から外れるように森ヘと逃げ込んだ。


 *   *   *

【ミラフィ視点】

 

「んー、オリヴィエどうする?もう残り5分切ったから、先生が騎士になっちゃったよ?」

「どうするも何も、後ろから追ってくるあの2人を何とかするしかないな」

「そうだよね!」


 私たちが全力疾走しても、後ろからずっと追いかけてくる2人に、私はオリヴィエと一緒にずっと頭を抱えていた。


「いい加減、早く捕まってくんない?俺たちも、もう疲れたんだけど?」

「無理に決まってるだろう。私だって成績を落としたくはないんだ」


 シャルファが愚痴を漏らすけど、オリヴィエはその言葉に対してすぐに言い返す。

 わー、オリヴィエすごい!私もこれぐらい早く言い返せたらかっこいいのになぁ。


「シャルファ、無駄に喋らないで」

「⋯⋯悪かったよ」


 自分の隣を走るリサラにまで言われて、シャルファはかなり落ち込んでいるみたいだった。

 でも今は敵だから、情けはかけない!私も心を鬼にして逃げ切らなきゃ!


「────じゃ、ミラフィここで」

「うん!バイバイ、オリヴィエ!」

「えっ、はっ?」

「シャルファ、オリヴィエを追って!!」


 オリヴィエと一緒に考えてた分かれ道作戦!でも、リサラは冷静だから全然混乱しなかったみたいだった。

 せっかく、ソエとメルロから逃げ切った後、合流して考えた渾身の作戦だったのに⋯⋯。


 しかーし!私たちの作戦は、ここからが本番なのであるっ!


「えーっと、今居るのはこっちかな?」


 走ってリサラから逃げながらも、辺りの魔力を探って、目当てのものを見つける。

 

 私みたいな魔力過多症には欠点のほうが多いけど、数少ない利点もある。それが周辺の魔力を感じ取れることで、人の魔力とかで誰が何処にいるかなどを把握することができる。


 まぁ、魔法をたくさん使って魔力量がゼロの人とかだと全くわかんないんだけど、あの2人は魔力をまだ使い切ってないはずっ!


「この辺だと思ったんだけど─────あ、居た!!」

「びゃっ!ミッ、ミラフィしゃん?!」


 目当ての場所まで木々を避けながら走り続けると、そこには宝箱を抱えて縮こまっているメルロが居た。


 


 

 さっきは魔法が得意なシエラが居たから無理そうだったけど、今ならメルロと後ろから追ってきてるリサラしか居ないし、2()()2()だっ!

 



 


 

「────ソエっ!今だよ!!」

「りょーかい。[水の刃(ウォーターカッター)]」

「──ぼぼっ、[防御結界:地の下位精霊(ラグロム)]!」


 メルロの真後ろで姿を隠していたソエが現れて、水の刃を放つ。メルロは水の刃から身を守るために防御結界を張るけど、焦りすぎて宝箱を手放してしまった。


「メルロ!宝箱をこっちに─────」

「もう遅いよっ!」


 リサラが拾う前に、私が宝箱を取ってすぐさま逃げる。よしっ!作戦成功!

 魔力で位置を探った時、メルロの魔力の近くに、ソエの魔力があったんだよね。人の気配とかは全くわかんなかったけど、魔力が底を突いていなかったからソエの場所がわかった。


 ⋯⋯まさか、メルロの横で奪う機会をうかがっていたとは思わなかったけど。


「よしっ!後10秒!」


 このまま走って逃げ切れれば私たちの勝ちだ!ガルグ先生も結局こっちには来なかったし、他の人を捕まえに行ったのかもしれない。

 ⋯⋯ソエが助けに行ってたみたいだし、ルツは牢屋から出られたかなー?皆、捕まってないといいけどなぁ。



 

 そして、リサラから追われながらも宝箱を抱えて逃げると、時計の分針がちょうど開始から1周したところで、運動場の方からパァァァアン!と大きな音がする。


 あれって確か、終わりの合図の音だよね?

 

「終わったー!ソエー、運動場戻ろー?」

「あ、ミラフィ。ごめん、俺やらかしちゃった⋯⋯」


 そう言ってショボンとした顔をするソエは、かなり落ち込んでいる様子だった。


 宝箱は奪えたので、そのことを不思議に思いつつも、そそくさと早足で器用に木々を避けながら運動場へと向かうソエの後ろに、私はおとなしく続いた。


 *   *   *


「はーい、結界発表するぞー。まず捕まった人数からなー」


 そう言ってガルグ先生の横にいる8人の青い布を腕に巻いた盗賊側の皆は、全員先生の方を恨めしそうに睨んでいた。

 僕がマレアやラティスと牢屋をでたときは、残り7分のときだったから、先生のことを睨んでいるのも考えると、残り5分で先生に捕まった人かな?


「逃げた人数も含めれば、騎士がつかまえたのは10人。そのうち、俺がつかまえたのが8人。まぁ、ここかなり広いし、騎士たちも頑張ったな」

「すっごい頑張りましたよ⋯⋯」

「俺、一回気絶したし」

「お疲れさん。じゃあ次、宝箱についてな」


 そう言って、先生はミラフィが持つ宝箱に視線を向けるものの、すぐにそらした。そのかわり、先生は終わりの合図の音がなった後、運動場へと最後に来たリュアのもとへと歩いていく。


「宝箱は盗まれてねぇ。よって、騎士側の勝ちだな」

「えっ?でも宝箱ならここに────あっ?!」

「そうだ。()()なら、ここにある」


 そう言って、先生はリュアが背中に隠していた宝箱を持ち上げる。それと同時に、ミラフィが持っていた宝箱が砂となって、崩れて消えていく。


「ミラフィちゃんが持っていたのは、メルロちゃんの魔法で生み出した偽物なのです!」

「えっ?嘘っ?!」

「⋯⋯あぁ、だからメルロは偽物だとバレないようにずっと離さなかったのか」

「はぁ〜、ミラフィが宝箱を盗ったとき、リサラが笑ってるの見てわかったわ」


 運動場に来たとき、何やらソエがドヨ〜んとした雰囲気を漂わせていると思ったら、そういうことだったのか。


 

 僕が納得していると、先生は本物の宝箱を騎士側の皆の前に置いて宣言する。



  

「今回のキシトウ、勝者は騎士側!!成績はちゃんとつけとくからなー」



 

 騎士側の皆は成績があがると嬉しがっていたが、急に真顔になって、景品の基礎魔法の書を貰っても、どこに置けばいいのかわからない問題に直面し、しばらく頭を悩ませていた。


 



【キャラクター紹介】

No.5

〇ディセル

・男性

・黒と暗い紫が混ざったような髪色

・全然モテなくて、世の中のモテる男が嫌いな人

No.25

〇ラティス

・男性

・目が珍しい色彩をしている

・ルツのことが嫌いでいつも上から目線の口調の人

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