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7、ゲームセンター


ファミレスをあとにした僕たちは来た道を戻っていた。

空を見上げると、この前の天気が嘘だったかのように晴れ渡っていた。

「もうすぐ夏になるんだなぁ」

僕がそう呟くと、音羽は僕を裾を掴み見上げてきた。

一瞬、空を見上げているのだろうかと思ったが違った。完全に僕と目が合っている。また何かおねだりだろうか。そんなことを思い「どうした?」と声をかける。

「ゲームセンター行こうよ!」

「……ん?…え?げ、ゲーセン?」

驚く他ない。音羽がゲームセンターに行くことはほぼない。何より、ゲームセンターの隣を歩いていても、クレーンゲームに好きな人形やお菓子、やりたそうなゲームがあっても行かなかった。

だが、ここ最近は今まで行かなかった場所にまで行こうと僕を誘ってくる。

ゲームセンターに行きたいと言われ、腕時計に目を向けると、まだ16時だった。ファミレスの滞在時間はそんなに長くはなかったのだろう。

「17時には帰れるようにな」

「わかった!!じゃあ行こう!」

あまり時間がないと思ったのか、駆け足でゲームセンターのあるお店へ向かう。置いてがれまいと僕はあとを追った。



夕方のゲームセンターはガヤガヤと沢山の人で賑わっている。

ボタンを叩く音、メダルの音、クレーンゲームの音。全てが音まみれだ。正直、僕はゲームセンターはあまり好きではない。理由は1つ。うるさいからだ。

はぐれると危ないから手、繋いでような。

「あらぁ、いいお兄さんねぇ」

「仲良しだわぁ」

近くにいる保護者らしき人達からの視線を浴び、聞こえてくる声に僕は少し恥ずかしい気持ちになる。

(はい僕シスコン…危なっかしいからしょうがないよなぁ、てか手繋いじゃ悪いかよ…)

自分自身がシスコンであると認めてはいるが、改めて周りの人に言われると…ね。


「音羽、何がやりたいんだ?」

すると、音羽は慣れたような足取りで僕を案内してくれた。人を掻い潜り、辿り着いたのは銃のゲーム。

意外な選択にポカーンと僕は立ちつくす。

「お、音羽…こんなのでいいのか?クレーンゲームとかどうだ?」

僕が動揺している反面、音羽は冷静だった。

「ん?これがいいの!おにぃちゃんと一緒にできるし!」

(他にも一緒にできるやつがあるのに、よりによってこれか…トホホ…)

最近血を見てないとはいえ、刺激が強い。まさか音羽は殺し系に目覚めてるのかとさえ勝手に思ってしまった。

生身の人間を殺している僕からしたら……



─────────ズダダダダンッッ


「キャー!!楽しいー!」

ニコニコと楽しそうにゾンビを打っていく音羽。なんか上手いなぁとも思ったが、自分のことで頭がいっぱいだ。

銃を使ったことはないが、ゲームのせいか戸惑わず打ちこめた。

(ナイフと比べたら、返り血とかないんだろうなぁ…いつか父さんに銃でとか言われるんかな……)

ゲームのステージをこなしていくうちに慣れていき、そんなことまで考えながらできるようになってしまった。

「あー!殺られたあー!」

どうやら、音羽は殺られてしまったようだ。明らかにシュンとしている様子を横目に、僕は目の前のゾンビを倒していく。

「音羽見てろー?にぃちゃんがクリアしてやるから!」

何を思って堂々と言えただろうか。だが、僕の言葉に音羽の表情を明るくなり「頑張れ!頑張れ!おにぃちゃん!」と隣で応援してくれた。




「ミッションクリアー!」


「ふぅ…」

なんとかクリアできた。音羽は大喜び。

「おにぃちゃんすごーい!!かっこいい!」

盛大に褒められ、流石に照れくさかった。

「ね!ね!もっかい!もーっかいやろ!お願い!」

おねだり音羽。でも僕も楽しかったから続行することにした。音羽にお金を渡し、2ゲーム目を僕たちは始める。




その後も僕たちは、色んなゲームをした。時計も見ずに、ただただゲームを楽しんだ。


休憩がてら僕は腕時計に目を向ける。時計は17時を過ぎていた。時計を見るまでは、高かった気分も一瞬にして凍りつく。

「音羽、まずい17時過ぎてた。帰ろう」

僕は慌てて帰る準備をする反面、音羽は「えーまだいようよ〜」と駄々をこねる。僕だってもう少し遊んでいたいが、父さんが帰ってくるまでには夕飯の準備ができていないといけない。父さんの機嫌か悪くなるのは、僕にとっては気分が悪い。

「父さん帰ってきちゃうだろ?また来ればいいじゃないか」

分かりやすく俯き、拗ねる音羽を慰めるしかなかった。

すると、急に音羽が立ち上がる。諦めて帰ることを決めたのかと思い、音羽の手を握ろうと手を伸ばした。

「大丈夫だよ。パパ、今日遅くなるって言ってたから」

僕は意味が分からなかった。今日、父さんからそんなことは言われてない。

「父さんが言ってたのか?」

「うん」

「…いつ?」

音羽はニコッとする。僕は思わず固まる。

「携帯に連絡きてるんじゃないかな?」

音羽にそう言われ、家を出てから一切触っていなかった携帯をポケットから出す。大量の通知の中に、父さんから連絡が入っていた。

僕は震えながら通知欄を開く。


"今日は遅くなる。そのまま外食しておいで"


本当だった。さっきまて焦っていたのが嘘のように、心が落ち着いた。

「でしょ?」

音羽はニコニコしている。なぜ音羽は父さんが遅くなること知っていたのだろう。なぜ父さんから連絡がきていると思ったのだろう。疑問でいっぱいだった。

「あ、ああ、連絡きてたわー。今日は夕飯も外で食べてこいだって」

「ほんと!?じゃあ夜は何食べよっかなぁ」

ウキウキ気分の音羽とは反対に、僕は怖くなった。


そう、音羽に対して─────

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