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4、切り捨て、切り上げ


「今からいくつか質問をする、全てきちんと答えろ」

俺の声色が変わったのに気づき、女は固まる。こくこくと首振り人形のように頷く。


「年齢は?」

「……26歳です…」

「家族は?」

「……父と母と弟が2人…」

「弟はいくつなんだ?」

「…23歳と18歳です…」

「君は仕事をしているのか?」

「…はい、看護を……」

「…」


俺は質問をとめた。頭にはてなを浮かべるように女は目隠ししながらもこっちを見ている。

女は震えながらも、きちんと俺の質問に答えてきた。これも見極めのひとつだ。これを間違えたり、怠れば悪さが帰ってくるのは自分自身なのだから。

(だめだな)

俺は椅子から立ち上がり、防犯カメラに目を向ける。

「父さん、終わったよ」

「──答えは?」


「…………ノーだ」

俺は俯き、そう答えた。


「殺れ」

戸惑うことなく父さんは"殺れ"と言う。

部屋の棚から俺はナイフを取り出す。何も分からない女は「なに、なに?なんなの」と繰り返すばかりだ。

俺は女の首にナイフを当てる。女は何かを察したように死にものぐるいで「殺さないで」と強請ってくる。俺は女の首の頸動脈目がけて、思いっきりナイフをうしろに引く。


────ブシャアアアアッッッ!!!


生々しい音を立て、女の首から血が吹き出す。まるで映画のワンシーンのように……

女は口を開け、悲鳴上げたと同時に息絶える。即死に近い。

しばらくして女の胸に手を当てると、さっきまで動いていた心臓も、いつの間にか動かず静かになっていた。

(人形のようだ……)

俺は死んだ人間を"人形"と思うようになっていた。だけど女の手はまだ少し暖かい。そりゃそうだ、さっきまで生きていたのだから。

血まみれになった服を目がいく。そこに父さんが話しかけてくる。

「また、だめか」

「うん……だめだ、だめなんだ」

「……随分、殺し方が上手くなったな。昔の私のようだよ奏叶」

僕は首だけ父さんの方に向け、ニヤリと笑う。そこで僕の意識はなくなった。





その日、僕は悪夢を見た。



「ハァハァハァハァ……!」

冷たい空気で喉が凍る。僕は必死に逃げている。誰から?分からない。見えない何かが、僕を追いかけてきているのだけは分かる。夢の中の僕は小さくなっていた。そのせいで、走る速度も遅く、すぐ追いつかれそうになる。だが、いつも追いつかれそうになると目が覚める。


「ンハッ!」

アニメで良くあるような目覚め方。汗をかき、なぜか手が震えていた。

「また夢……」

夢であることに僕は少し安心する。本当に現実なのかと疑い、僕は恐る恐る頬を抓る。

「イデッッ」

案の定、痛かった。だから現実だ。

────コンコンッ

僕の部屋のドアが2回ノック音される。

「…はい」

ドアの先には父さん、音羽の姿があった。

「お兄ちゃん…」

心配そうに音羽が僕に寄ってくる。なぜだろうか。

「昨日、うなされていただろう。音羽が起きてしまってね。夜、音羽と様子を1回見に行ったんだ。まぁ見に来た頃にはもう大丈夫だったから」

(うなされていた……?)

僕はあの夢が影響しているのかと予想する。僕の膝で下を向く音羽の頭を撫でる。

「大丈夫、心配してくれてありがとな。にぃちゃん何ともないぞ」

「……ほんとぉ…?」

涙ぐみながら心配してくれる音羽に、僕は笑顔になる。よしよしとまるで僕が母親になったかのように……



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