表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

2、空気変化

私自身奏叶(かなと)くんの立場だったらどうなんだろうと想像しちゃいます。多分奏叶くんと同じ震えて過ごすかな?妹愛溢れるお兄ちゃんってイメージが付き始めると思います!

足早にお互い自分の部屋へ向かう。

弁当箱を出し、僕はリビングにあるキッチンへ向かった。

(今日は何も聞こえなかった。何故だ。父さんは今日家にいるはずだが……)

そう考えながらもキッチンでお弁当箱を洗う。

父さん。そう、僕の父親。僕はあいつが嫌いだ。


「おにぃちゃん」

ハッとする。

「どおしたの?顔色悪いよ?雨だったから風邪ひいちゃった…?」

心配そうに僕の顔をみる音羽は何故か泣きそうな顔に見えた。

(優しい。音羽は優しい。)

僕は音羽の優しさに涙が出そうになった。

「何でもないぞ!ほら音羽、宿題終わらせたらゲームやろうぜ!」

その言葉に音羽の表情がパッと変わる。

「ほんとー!!お兄ちゃんとゲームできるの久しぶりだなぁ音羽ね!あれやりたい!」

と言い音羽ゲームが置いてある棚からカセットを持ってきた。音羽の大好きなゲームだ。キラキラと輝かせる音羽の表情に僕は安心する。

(あーあ、俺は相当シスコンだなぁ)

可愛くて堪らない妹を目に、僕も一緒に宿題を始めた。



「きゃはは!お兄ちゃん負けー!」

楽しそうに笑う音羽と一緒に僕も笑った。

こんな日々が毎日であってほしいと僕は心の中で願う。


気づけば時計は18時を指していた。帰宅してから約3時間。時間忘れて過ごしていた。あわてて僕は夕食の支度をしようと急いだ。

────ガチャ

玄関とドアが開く音に僕は背筋が凍った。

(帰ってきたんだ)

僕は急いでキッチンへ向かった。リビングのドアが開く。


父さんだ。


「あ、パパー!」

音羽は父さんに駆け寄り、嬉しそうにしがみついた。そんな明るい展開とは裏腹に僕は心臓の鼓動がうるさい。

(今日は仕事だったのか?いや仕事着じゃない。ならなんだ?出かけてたのか、でも僕は聞いてない────)

「奏叶」

父の声に我に返る。

「はい、父さん」

「なんだ、まだ準備してなかったのか」

その言葉に冷や汗が出る。

「急いで作るから。先お風呂どうぞ」

僕の言葉に、父からの応答がない。

(まずい、まずい、まずい、まずい、まずい…)

返答の待っている間が、とても長く感じる。

「そうだな」

父さんは音羽を下ろして、風呂場へ向かった。


風呂場のドアが閉まったと同時に僕は力が抜ける。まるで魂が抜き取られるように…そんな僕の様子を音羽はどう思ったのだろう。そう思いながら、音羽の目線が僕に向いていることに気づきながらも、僕は夕食の準備を始めた。




「いただきます」


何とか父が風呂から上がる前に夕食を作り終えた。作り置いておいたハンバーグだ。

僕の恐怖は終わらない。ふと横に座る音羽の方へ目を向けた。美味しそうにパクパク食べる姿に思わず聞いた。

「美味しいか?」

すると妹は僕の方に顔を向けこう言った。

「うん!やっぱりお兄ちゃんのハンバーグは世界一!音羽、お兄ちゃんの作るご飯全部好き!」

僕は固まってしまった。いい意味でだ。僕は嬉しさを言葉て表すのが苦手だ。そのせいか、僕は音羽の頭を撫でることしかできなかった。


「奏叶」

父からの呼びに僕の笑顔が消える。

「はい、父さん」

「お前、最近勉強はどうなんだ?テストが近いんだろう。」

低い声が僕の心臓をまたうるさくする。

「今回は僕、苦手な分野多くて──」


ガタンッッッ!!


その音に僕も音羽も父を見た。

「奏叶、夕食終わったら父さんの部屋に来なさい。」

硬直している僕に父さんは言った。真っ直ぐな父さんの目はまるで獲物を狩る狩猟のように見えた。

「はい、わかりました」

いつもの返答、いつもの展開、あぁ…またやってしまったと僕は自分の言葉に後悔した。お腹が空いてるはずなのに、美味しいはずなのに、何故かハンバーグがただの味のない肉の塊のように感じた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ