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お昼

ガヤガヤと賑わう廊下。香ってくるお弁当の匂い。朝ごはんを抜いたせいか、酷くお腹が空いていて、ギュルギュルとお腹の虫がなる。

購買に向かう途中「奏叶」と声をかけられる。

振り向くと有澄がいた。

「なんだ?弁当あるんじゃないのか?」

「ん?あー、気分じゃないから購買の食べるだけ」

「いや勿体な」

「いいじゃん自分で作って持ってきてるんだし」

てっきり母親か誰かが作ってくれた弁当だろうと思ってしまった自分を攻めたくなった。


その時、僕は視線を感じた。気の所為だと思い、そのまま有澄と購買を向かう。



「うーわ、なんか今までで一番混んでない?」

「まぁ、たしかに」


「なんで今日こんな混んでるんだよ」

「しょうがねーじゃん、弁当なかったんだし」

前で並んでいた男子生徒が話している会話に耳を傾ける。

「俺のかーちゃん、昨日買い物行ったきり帰ってこねぇんだよなぁ」

「まじ?俺ん家もなんだけど」

「一応警察に捜索願言いお願いしたけどさー、最近誘拐多いじゃん?もしかしたらそれかなとか思っちゃってるんだけど…」

「おま、怖いこと言うなよ……」

「だって帰ってこないなんて、誘拐の他にあるか?道間違える訳あるまいし」


僕は思わず固まった。

("誘拐"?…いやまさかな)

「奏叶」

「…え?」

「何ボーッとしてんの。何食べるの?もう順番来るよ」

「あーわりぃわりぃ」


食べたいお昼の食券を買い、その後、購買弁当を受け取った。


「2人待ってるし、早く行こ」

「おう」

できたてホヤホヤの弁当を手に、2人の元へ急ぐ。そんな中、僕はさっきの男子生徒たちの言葉が頭から離れなかった─────


「おせぇぞ2人とも!先食ってんかんな!」

「ごめーんまじ激混みだったんよ〜」

「まじ?でも大体混んでんじゃん」

「そお?今日一弾と混んでるように感じたけど」

3人の会話を聞きながら、一人黙々と購買で買った弁当を口に運ぶ。


「てかさ、最近誘拐多いってまじ?」

美月が急に言い出した。思わず驚き、美月を見る。

「あー購買で前に並んでた男子話してたなぁなんかあったの?」

「お前はまじでテレビ見ないんだな」

と大河が笑う。

「いやだって携帯あんじゃん?それで十分」

「まぁでもたしかに誘拐事件最近多いね、しかもその誘拐された人達みんな女性で20代か30代の婚約してる人っしょ?犯人は誰か探してる人でもいるんかな?」

「んー同じ人の犯行なのは確かだよな……監禁してる的な?」

「誰も見つかってないし、そうかもね」

3人の会話を聞きながら僕は考えた。

(もし父さんがやってることならば……どんな顔をすればいいんだ。今まで動揺を隠すのはできていたのに、仲の良い3人の前じゃ流石に………)

「奏叶はどう思う?」

「……」

「…かな、、と?」

「………え、あ、わりぃ、ボーッとしてたわ、なに?」

「えぇ?聞いてなかったの?」

「ごめん、次のテストのこと考えてたわ」

「うわっ、こんな時にも勉強かよ!ガリ勉か!」

「いやでもたしかにテストは近いな」

笑いながら事なきを得た感じがした。ただ、有澄だけはなにも発してくれなかった。

誘拐事件の話からテストの話に変わり、雰囲気が変化する。


話してる中で、僕はあの時の感覚を思い出してしまう。さっきまでバクバク食べれていた購買の弁当も、口に運ぶペースが遅くなっていたのが自分でも分かった。


─────キーンコーンカーンコーン


「お、昼休み終わりのチャイムか、あぁこのまま寝てぇわ〜」

「はいはい、じゃあ置いて行きますよ〜」

「はぁ?!優しくないな!美月は!有澄まなんか言ってくれよ……」

「んー、まぁこの後雨予報らしいし?びしょ濡れになってもいいならいいんじゃない?」

「げっ、まじかよそれは勘弁だわ」

大河の気持ちも分かる。逆に僕は帰りたい気持ちでいっぱいだ。

日差しの眩しい太陽を目を向け、(雨なのか…)とふと思う。そして僕達はその場を後にした。

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