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とある女子の回顧録

 「だーかーらー、6班とは手を組んだ方が良いって!」


 有栖川リサは焦っていた。プリントを配られたとき、レンは1班か2班、自分と同じ班になるだろうと高をくくっていたからだ。だが名簿にその名は無い。じゃあ3班なのか、それともまさか4班?名簿にはいない。まさか先生がミスしたんじゃないか、すみずみまで見渡すとようやく見つけた。落ちこぼれの6班の中に。


 「なんでよー!」


 思わず叫んでしまい、周りの視線が集まる。愛想笑いをして誤魔化すが平静さは取り戻せない。何故、彼が6班なのか。ひょっとしてかなりのワルだったり?そうは見えなかったんだけどな……。そんなことを思いながらぼーっとこちらの気も知らずにバスの前で並んでいるレンを見た。これが今に至るまでの回想。


 「有栖川くん、君が優秀で有能な女生徒なのは分かっている。確かに6班の高橋くんはレベルだけで言うなら1班に選ばれてもおかしくない。だが彼女一人だけのために足手まといを五人も抱えるのは戦略的に無価値だ。」


 偉そうに講釈を垂れているのが二階堂進。2班のリーダーをしていて、レベルは39。レンのことを何も知らないくせによく言えたもんだ。今すぐにでもレンのことを教えてやりたいが秘密にすると約束したからには言えなくてもどかしい。


 「それに高橋さんは素行の悪さがちょっと……ねぇ?」


 それに同調する女子が栗栖杏くりすあん。私とはいまいち話が合わない典型的な優等生。


 「君たちには有栖川さんの慈悲がわからないのか!彼女はその女神のような清い心で6班の人たちを助けてあげたいと考えているんだぞ!!俺は賛成だ!!」


 この暑苦しい男は陽炎譲かげろうじょう。私の考えに賛同してくれるのは良いが鼻息が荒い。

 6班と組むか組まないか、その話に入るのは私を含めこの四人だ。残りの二人は別にどちらでも良いと中立の立場をとっている。


 「ともかく、その話は班の中で割れているのだ、まだ試験は始まったばかりだ。状況によって決めようではないか。」


 二階堂は妥協案を出す。私は納得できないが、レンなら例え周りが落ちこぼれでも一人生き残るだろう。一人きりになったところを私が再度提案し、保護という形で一緒に行動すればいいのだ。二階堂は理知的な男だが同時に情にもろい。落ちこぼれの班で唯一残った人を助けるという名目なら喜んで受け入れるだろう。私は分かったと二階堂の提案を受け入れこの話は終わり。

 私たち2班は打倒1班を狙って動いている。下山するだけでこの試験は終わりなんだけど、それでは成績にならない。勿論格下の班を狙うのも手だけども、1班には東郷がいる。性格の悪いあいつのことだから他の班のバッジを根こそぎ奪おうとするだろう。それなら下手に他の班と戦い消耗するよりも、出来るだけ最速で1班を倒すのが先決なのだ。


 「待って、人がいる。」


 栗栖は何かを感じたようだ。恐る恐る近づくと人が縛られている。


 「腹部に一発……ひどいな昏睡してる。早速1班にやられたか。」


 彼らは5班のメンバーだ。個別行動をしたときにやられたのだろうか。二人とも意識はない。


 「え、なにこれワカメ?」


 縛られているものを見るとワカメだった。訳が分からない。


 「これは我々に対するメッセージか……?ワカメ……。」


 二階堂はワカメの意味を考えるが見当がつかないようだ。


 「どちらにしても1班は早速動いているということだな。急がなくては。」


 私たちは足を進めた。


 「またワカメだ……。」


 今度は3班がやられている。今度は全員だ。一人意識のある女生徒がいたので話しかける。


 「大丈夫か?怖かったろうに、安心しろ、東郷の好きにはさせん。必ず君たちの敵はとってやる。」


 女生徒は複雑そうな顔をしていた。どうかしたのかと二階堂は問いかける。すると女生徒は我に返ったように答えた。


 「そ、そう私たち1班にやられたの!でもごめんなさい、あっという間にやられてどんなアタッチメントだったかも……。」


 3班とはいえ彼らの実力は低いわけではない。だというのにどんなアタッチメントかも分からないほどに圧倒したというのか。1班の実力はそこまで差があるものなのかと、私は震えた。


 「しかし、またワカメっすかぁ、何なんすかねこれ、誰も分からないんすか?」


 ようやく、軽井沢詩かるいざわうたが声をあげた。流石にこの奇妙な光景には声を出さざるをえないらしい。


 「アタッチメントが見えなかったっていうけど、このワカメはアタッチメントじゃないんすか?」


 怯える3班の女生徒に問いかける。女生徒は言葉に詰まっているようだ。


 「あれれ、これ何か隠し事してるっすねぇ二階堂サン、どうします?」


 そんなこと!と女生徒は否定するが軽井沢の耳に入らない。


 「やめるんだ軽井沢くん!仮に我々に隠し事をしているのならそれは理由あってのことだ!無理に聞くのはよくない!」


 こういう奴なのだ。これならレンを保護するって言い分も簡単に通りそうである。


 「はぁ、二階堂サンはほんと真面目っすねぇ、まぁあーしも無理に聞くつもりないっすけど。」


 私たちは女生徒に1班がどこに向かったか聞いた。そこは素直に教えてくれるようで、そもそもやられたのも数分前らしい。


 「急げば追いつくな、気をつけるのだぞ諸君。」


 ついに1班との戦いだ。レンと合流できなかったのは痛いけど、今は目の前のことに集中しなくちゃ。私たちは慎重に指さした方向へと向かっていく。


 「気配がします、50メートル先、正面……反応からこちらには気づいてないわ。」


 栗栖の言葉に緊張が走る。


 「陽炎君、先陣は私と君が行く、良いな。返事は静かにな。」


 陽炎は黙って頷く。人影が見えた、私たちは同時に攻撃を仕掛ける。


 「ひぃいいいいい、た、助けてくださいぃぃいいい!!」


 攻撃する直前、女性の悲鳴が攻撃する方向から聞こえた。すぐに分かった。彼女は確か6班の夢野だ。私たちが攻撃を仕掛けていたのは6班だった。

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