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捲土重來、踊り上がる狼煙


 「なんだよそれ、試験にする意味がないんじゃないか。」


 班分けはレベルで決まる……今までの話から察するにレベルが高いほうが、強いのだろう。そして俺のレベルは1……6班なのも納得だ。


 「そこのワカメが言ってたろ、出来レースだって。そのとおりなんだよ。今回に限っての話だけどな。簡単な話だ、1班の東郷、あいつをこの試験で優遇するためのな。」


 東郷幻弩とうごうげんと……嫌なやつだった。地元の有力者らしくて、それに鼻をかけてやりたい放題していた。俺は陰が薄いから標的にされなかったが、先輩後輩男女関係なしに気に入らない奴をいじめていたな。


 「東郷もレベルは高いのか?」

 「知らね、あんな奴と関わりたくもねぇしな。」


 高橋さんはほとんど学校では見かけず、学内のそんな争いとは無縁な存在だった。いや、ひょっとしたらそんなのがあるから、学校にもろくに出なかったのかもしれない。


 「あんなむかつく野郎なんかより、お前だよ境野、やるじゃんか、惚れ直したぜ。」


 突然、高橋さんは肩に手をかけて上機嫌に微笑んだ。距離が近い、陽キャの付き合いってのはいつもこんな感じなのか……!?


 「ふん、でもた、高橋さんも凄いんじゃないの?5班とはいえ私たちより平均レベルが上の相手を一人簡単に倒したじゃない……。い、一体レベルはいくつなのよ。」


 伊集院の言うことはもっともだ。レベルの差があるなら本来は倒せない相手ではないのか。高橋さんのレベルはいくつなのだろうか。


 「あたしのレベルか?41だけど。」

 「41!?優等生じゃないの……!わ、私達を馬鹿にしてたのね……!!」

 「よ、よんじゅういち……わたしなんかが同じ視界に入るのもおこがましい天上人じゃないですかぁ……す、すいません!同じ空気を吸ってしまって……!」


 女子たちは明らかに狼狽えている。41という数値はそんなに高いのだろうか。だがそれだとさっきの出来レースの話がおかしくならないだろうか。


 「お前らなぁ……いったろ出来レースだって。要は学校の連中はあたしのことが気に入らないから潰すために6班に入れたんだよ、まぁそのおかげで境野と一緒になったわけだしざまぁねぇな。」


 突然、俺の話になって驚く。何で俺と一緒になるのが学校に都合が悪いんだ……?


 「しかし、境野お前虫も殺してなさそうなツラしといて何したんだ?境野もあたしと同じで気に入らないって理由で6班になったクチだろ?」


 高橋さんはまるで旧来の友人のように笑顔で語りかける。あぁ、そういうことか……。確かに俺は今のところ一人で格上を五人も倒しているわけで、当然レベルが高いと思われるだろう。伊集院は確かに…と呟いてこちらを見る目が変わったし、夢野に至ってはまさか高橋様より上なんですかと小さい悲鳴まであげている。ここは早く伝えたほうが良いだろう。


 「いや、俺はレベル1だよ。」


 空気が凍った。沈黙が続く。


 「レベル1だよ。」


 もう一度念の為言った。高橋さんの手が肩から離れ、真剣な表情で正面から見つめる。


 「あのさぁ……ちょっとその冗談は面白くないぜ?いや和やかにしたい気持ちがあったのかもしれねぇけどさぁ……。」


 まるで信じてないどころか嘘をつかれたと少し不機嫌になっている。


 「そ、そ、そうですよ……高橋様が一人倒してるのに対して五人も倒しててレベル1なんて……あっそうですね私みたいなクズに話したくないからですよね、ごめんなさいごめんなさい……。」


 夢野に至っては自分のせいだと勘違いし顔面蒼白にして土下座をしようとしてる。当然そんなことをされても困るので引き止める。


 「仮にレベル1だとしたら、あの動きはどう説明すんのよ?はぁ……男ってほんとつまらなくて空気読めない冗談ばかり……。」


 もう針のむしろだ。事実なのに俺は悲しい。磯上と剣に助け舟を出してもらえないか視線を向けても剣は相変わらず上の空だ。磯上は何を考えているのか。


 「まさか……身体能力だけであの動きをしてるとか!?かっけぇ!!」


 斜め上の反応だった。でもその言い訳はいいかもしれない。女子たちの方を見てみる。全員白けた顔だった。


 「い、いや本当にレベル1なんだよ!昨日橋下先生にも真面目にやれって怒られたけど実際そうだったんだから!!」


 昨日のことを思い出す。レベル1と言っただけでこれだ。先生は大分自重してたんだなと改めて思う。


 「ん?あぁそういや橋下と何か言い争ってたな、そこのヒス女は前の方だから知らねーだろうけど、あたしは境野より列順が後ろだったからな。」

 「ひ、ヒス女ってわたしのこと!?」


 伊集院の抗議を意に介さず高橋さんは思い出すように話を続けた。


 「ふぅん、まぁ境野がこんなとこで嘘つくような奴にも見えねぇし、何か理由でもあんのかな?まぁ……この際、こうして一緒に同じ班になってることをありがたく思うか。わりぃな境野疑って、今度何か奢るからそれで許してくれや。」


 高橋さんは頭を下げる。伊集院は「わ、私はまだ信じないから……。」と呟いているが、まぁいずれ分かってくれるだろう。


 「しかし話を整理すると境野っていうイレギュラーとあたしがいるわけだし、もしかするとこれはいけるんじゃねぇか?」


 いけるって何がだ?班員は皆、高橋さんに意識が向いた。


 「決まってんだろ、あのいけ好かない東郷をこの試験から落としてやるんだよ。」


 高橋さんはいたずらっぽい笑みを浮かべながらそう答えた。

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