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未来の記憶と謎のチートスキルで人生やり直し物語、学生に戻ったと思ったらそこは、何かが違う異世界だった件  作者: ホワイトモカ2号
それは澄みきった空に浮かぶ穏やかな雲のような
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幽玄列車、祭壇への道

 「引退したらルナと一緒にこういう温泉街でゆっくり観光するのもいいねぇ。」


 バスの外から見える温泉街を見ながらバルカンは呟いた。


 「くっさいパパと一緒に旅行なんてしてくれるのか?」

 「しますー!絶対するんだってぇのー!断られたら最終手段として仁、お前を誘えば良いしなぁ!!むかつくがルナはお前に惚れてるからよぉ!!」

 「えぇ……嫌だよ俺、お前のことお義父さんって呼ぶの。」

 「俺だってお前を義理の息子になんてしたくないってぇの!だからとっとと龍星会のやつとくっついて……。」


 またその話だ。今はまだマシだがメスガキの前でも平気でこいつこんな話しやがるし、その時のメスガキは本気で面倒になる。バルカンとメスガキは可能な限り一緒のチームにしないようにしてるのはその為だ。もっとも二人とも武闘派だから、セットで頼ることが結構あるからたち悪い。今回だって本当なら龍星会の力を借りればもっとスマートにいけたもんだろうが……。声をかけるともれなくメスガキがついてくるから断念した。


 「二人とも本当に仲が良いんだな、あー今さらだけどバルカン……さん?やっぱ敬語の方がいいのかな。仁はタメ語で話せって言うけど。」

 「俺も同じでいいよ坊主。遠慮なくバルカンって呼びな。これから俺たちは命がけの舞台に行くんだぜ?年の差なんて気にするちいせぇ奴は早死にするだけさ。」


 それに今回はレンもいる。連れてくるのは正直、気乗りしなかったが、レンの力は実際頼りになる。そんな話をしながら、目的地であるケーブルカーの駅についた。


 「チケット売り場はあっちだけど。」


 レンが不思議そうにチケット売り場とは別方向に向かう俺たちを呼び止める。


 「あーレン、乗るのはそれじゃないんだ。こっちこっち。」


 駅から少し外れたところに別のケーブルカーがあった。これは物資搬送用のケーブルカーだ。一般用と違い、貨物車両が連結している。当然行き先も違う。俺たちの目指す場所は、こちらの方が近いのだ。それに一般人と別なのも良い。あまり目立ちたくないしな。

 適当な貨物に潜入する。無賃乗車だが、異界からの召喚を放置して起きる被害を考えたら、むしろ金を請求しても良いレベルだ。まぁ勝手な言い訳だけどな。

 しばらくするとケーブルカーが動き出す。人を乗せるものではないので運転が乱暴だ。振り落とされないように注意しなくてはならない。



 「なぁ仁よ、亡霊がここで召喚儀式をするって誰から聞いたんだ?」

 「聞いたわけじゃねぇなぁ、荷物の輸送や傭兵団の動きから推察しただけだ。」


 ケーブルカーの停車地はまだ見えない。大体ケーブルカーというのは直線上に移動するものだが、このケーブルカーは大きくカーブするところもあるため、森の中に囲まれた景色が見えるばかりで、いつごろ到着するかがまるで予想がつかないのだ。


 「それじゃあ、罠に嵌められたってわけではないのかぁ、ったくどうするよ。」

 「どこでバレたんだろうな?バルカンお前硝煙の匂いがするからその筋だと勘違いされたんじゃね?」


 レンは俺たちの意味深な会話を、理解できていないのか、いまいち緊張感に欠ける顔をしていた。まぁ仕方がない。レンは一般人だ。肉体、精神ともに超常的だとしても、経験から得られる感覚は別物だ。


 バッグから武器を取り出す。M4カービン。アサルトライフル傑作の一つ。発明から長く愛されている逸品だ。バルカンはこれを軍払い下げで調達した。バルカンはグレネードポーチに大量のグレネードを抱えて、両手にはウージーを二丁持っている。骨董品だからやめとけと言ってるのだが、本人曰く一番長く使っているのが一番信頼できるということだ。レンにはリボルバーのルガーを渡した。マグナム弾が装填してある。護身用にしては強すぎるが、レンの膂力なら軽く扱えるものだし、レンの場合、素手で戦う方が強いケースが多い。射撃訓練をろくにしていないのもあるし、銃撃戦になったら守りに徹するか投擲武器で戦うように伝えている。銃撃戦で怖いのは味方の誤射というのがある。酷い話のように見えるが、素人は戦闘に参加させない方がむしろマシということもあるのだ。


 軍服を着た集団がケーブルカーに乗り込んできた。ケーブルカーは自動運転で、運転手はいない。装備は防弾ヘルメットにプロテクター、それにカラシニコフ。腰に細かくは不明だがリボルバー式の短銃、更にスタンロッド。ポーチの膨らみからグレネードもいくつか所持している。俺たちの位置を完全に把握しているのか躊躇なく車両に乗り込み、陣形を組んでいる。


 「乗り込むのにぜーんぜん警戒してねぇの。サーモスコープか何かでバレてんのか?」

 「術式反応はねぇから、サーモかエコー辺りだろうな。」


 俺たちがそんなことを話していると、陣形を組み終えた傭兵団は、隊長と思わしき人物の合図のもとにいきなり発砲しだした。アサルトライフルから放たれる弾丸は容赦なく車両を貫く。当然、位置がバレてる俺たちは蜂の巣になるのが目に見えているのだが……。


 「掃射が終わった、行くぞ。」


 すかさず、そのタイミングで俺たちは飛び出し反撃を開始する。蜂の巣にしたと確信していた傭兵団は完全に不意をつかれた形で、何名かの死傷者を出した。なんということもない。ケーブルカーに乗る前に俺が術式で貨物を強化していただけだ。銃弾なんぞでは貫けないくらいに。


 「超便利じゃんさっきの!なぁ仁、もっとやってくんねぇかぁ!!」


 同じく術式で事前に強化しといたウージーを乱射しながらバルカンは叫んだ。


 「いや無理だ!亡霊には術師がいる!下手に術式使うと侵入者がどんな奴らか特定されちまう!できれば隠しとおしたい!!」


 俺もアサルトライフルでぶち抜く。俺たちの銃弾に防弾ヘルメットもプロテクターも無意味だ。対抗するなら対抗術式を付与したものにしておくんだな。まぁもっとも……術師が銃を使って攻めてくるなんて想定の範囲外だろうが。


 「バルカン、距離を詰める、援護しろ!」


 ある程度の掃討を確認した俺はアーミーナイフを抜いて距離を詰めた。銃の方が良いってそりゃそうだ。だが大事な事を聞かなくてはならない。そのためには皆殺しは駄目だ。傭兵連中は一人飛び出てきた俺に一瞬狼狽えるもすぐに構えて発砲した。よく訓練されている。だが残念だ。お前たちの訓練は全て、この日無為に終わる。


 持ってきた貨物を盾にする。それはただの貨物。到底、銃弾を防ぎきれるものではない。だがそれは、先程も言ったとおり普通のものではない。俺の術式で強化したもの。銃弾如きで貫けない。

 本来であれば鉄の塊も容易に貫くはずのアサルトライフルの弾丸が、ただの貨物一つ貫けない。そんな事態に傭兵たちは困惑していた。そりゃそうだろう。信頼していた筈の武器が通用しない相手がいたらな。


 「って馬鹿……!」


 傭兵の一人がグレネードを投げてきた。これは貨物の盾では防げない。爆風は四方から来るからな。まず銃を構えた連中の首を正確に狙う。このアーミーナイフも同じく強化した代物。まるで豆腐でも切るかのように傭兵たちの首を切断し、赤い華が咲く。次にグレネード。こいつはもうピンが抜かれている。仕方ないので俺は思い切り蹴飛ばす。蹴られたグレネードはケーブルカーの外に飛んでいき爆発した。車両が揺れる。


 「こんなところで爆薬なんて使ったら全滅じゃねぇか。新人かお前?少しはクールになろうぜ。」


 絶命していく傭兵に俺はそう教えてやった。さて残るは後ろの支援部隊と隊長だ。腰の拳銃に手をかける。この距離、数なら隊長以外全員一息の間に殺せる。そう思った瞬間、ウージーの音がした。隊長を残し全員が射殺されたのだ。バルカンか。とっくに部隊を全滅させていたのだな。


 「さて、隊長どの。楽しい楽しい尋問タイムの時間だぜ?」


 俺が近づくと、隊長は突然歯を食いしばった。最初は毒による自殺かと思ったが、まったく違った。数秒後、爆発音がしたのだ。爆発は先頭車両から発生した。しかもこの爆発の規模は……。


 「おいおい、お前馬鹿かよ!!?」


 爆発は連鎖的に起きた。それは車両を破壊するものではない。狙いは車両の脱線。ケーブルカーは山の斜面を登るもの。つまり何が起きるかというと。


 「バルカン!レン!やべぇぞ、伏せろ!」


 重力に従い、ケーブルカーは山の斜面を下っていく。とてつもない振動とともに。そしてそれは重力加速度に従い速度を早めていく。


 「おいどうすんだ仁!お前の術式で何とかしろ!!いて!舌噛んだ!!」


 結論から言うと落下を食い止める術式の展開は可能だ。だがそれはあまりにも派手すぎる。最悪亡霊が召喚儀式を一時休止するかもしれない。そうなれば水の泡だ。バレたことに気づいた亡霊は次は慎重に、俺の情報網に引っかからないように巧妙に、ひっそりとやりかねない。そいつは最悪だ。とはいえこのままでは不味いのも事実、どうすりゃ良いんだ!


 「仁!俺に任せてくれ!このくらいなら何とかなると思う!!」


 レンの叫び声が聞こえた。どうするつもりだというのか。その瞬間、突然金切り音がした。ケーブルカーの速度が……緩まっている?

 レンの方を見た。レンの手にあるのは俺が強化した貨物。それを……ケーブルカーの外にある地面に擦りつけている。金切り音は線路と資材が擦りあって生じていた音だ。少しずつケーブルカーは減速していく。思い切り叩きつけて急停止させないのは正解だ。そんなことしたら慣性の法則でレンだけがぶっ飛んで俺たちはそのまま落下するケーブルカーに乗ったまま奈落へ超特急だからな。しかし恐るべきはレンの膂力。いくら資材は俺が強化しているとはいえ、ケーブルカー全体にブレーキをかけるかのように地面に摩擦をかけるのは人の技ではない。いや厳密には肉体強化系のアタッチメントなら可能だと思うが、レンは生身でやっている。


 「ナイスだレン!その調子で少しずつ減速していくぞ!!」


 一息つける。ケーブルカーで登れないのは惜しいが、術式を使わないで済んだのは大きい。良かった良かった。


 「あー仁?レン?駄目みたいね、これ。」


 せっかくの雰囲気をぶち壊すかのようにバルカンが呟いた。ブレーキの金切り音でよく聞こえないが、俺の地獄耳は聞き逃さない。


 「どうしたバルカン!何かあるのか!!?」


 バルカンの返答を待つ前に、突然、重力がなくなった。何が起きた?いや……すぐに分かった。落下している。


 「マジかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


 ドカンと音がした。レンが即座にまずいと思い急ブレーキをかけたのだ。だが既に遅い。俺たちは宙に投げ出された。


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