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ユリア・カエサルの決断  作者: 遠藤遼
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弾劾裁判 執政官キケロ

 執政官は何のためにいるのだろうと、キケロは思う。


 小カトーの演説は、普段であればそのまま議決に持ち込まれてもおかしくないくらいの迫力だ。事実、これまで小カトー派に押し込まれた政策も、いくつかある。


 正直、面倒くさい。


 だから時折、政治から身を引いて、ナポリの別荘にこもってしまえたらと思う。


 別荘に一人きりでも別にいいが、モエミちゃんは連れていってもいい。気が合うから。


(……ユリアのところのセイヤも、ユリアとケンカがつづくなら、うちで引き取ろう)


 あの男の子はモエミちゃんのお気に入りみたいだし、礼儀正しいし、誠実そうだし、ユリアにはもったいない気がする。今日の議会のあと、キケロの家にユリアを行かせてくれとよく分からない頼みをされたけど、一生懸命な男子は、嫌いではない。


 モエミちゃんとセイヤと自分の三人だけで暖かくて海のきれいなナポリでのんびり暮らすのは、何だかすてきなことのように思う。哲学の思索も著述もはかどるだろう。


(……でも、まだそれはできない)


 小カトーの演説をちょっとした妄想で聞き流し、キケロは心を奮い立たせる。


(……小カトーなりに国家を思ってところがあることはわかる)


 しかし、それで救われない人々が大勢いることも、キケロは知っている。


 だから、自分は踏ん張る。踏ん張らなければ、みんなを守れないから。


 でも、自分は弱くて、小さくて。


 だから、仲間が欲しかった。ユリアみたいな、眩しいくらいの仲間が。


(……ユリアはきっと、民主派のいい政治家になる。そう、私よりも優秀な政治家に)


 このまえ論破されたときにわかった。借金と女好きを何とかすればだけど。それはセイヤにがんばってもらおう。ああ、だったら仲直りしてもらわないとダメか。少し残念だ。


 けれども、いまは――


(……小カトーをやっつけちゃえ)


 いたずらを企んでいるみたいで、キケロは不覚にも口元がほころんだ。

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