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ユリア・カエサルの決断  作者: 遠藤遼
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弾劾裁判 小カトーの演説

 その日、ローマ本土中の元老院議員がこの議事堂に集まっていた。


 執政官キケロの名前で招集された議員たちは、みな今日の議題の何たるかを知っていて、一様に厳しい表情をしていた。


 その広い会議会の隅の方で一人だけで座っている女性がいる。


 カテリーナだった。


「国家転覆を目論んだカテリーナの陰謀から、我々はローマを守らねばならない」


 執政官の証たる「市民の杖」をついたキケロの声が会議場に響く。普段は静かにしゃべるキケロだが、執政官の職務を遂行するときには朗々とした声を発するのだ。


 水を打ったような静けさを破って発言を求めた男がいた。


 小カトーだった。


 鋭く冷たい目つきで議員たちを見回し、厳冬の月のようなまなざしでカテリーナを射すくめると、小カトーは演説を始めた。


「元老院議員諸君、執政官キケロが我々を召集したいま、すでにカテリーナという女の陰謀は白日の下にさらされた。そう、陰謀である。我らの国家に、両親に、神殿に、家々の暖かな団らんに、反逆者の卑劣な戦いが仕掛けられたのだ」


 小カトーは怒りを隠すことなく、それでいながら的確に言葉を紡ぎ、その糸でカテリーナの心を縛り上げ、殺しにかかっていた。


「かつてのローマ総司令官は、実の息子を処罰した。総司令官の名に背いて敵軍を攻撃し、かえって味方を窮地に陥れたからである。誇り高き青年は、慢心した勇気を償うのに自らの死をもってした。だが、我々の目の前に現れているのは、いかなる言辞によっても誇り高いなどと言えない、卑劣な陰謀者である」


最大派閥を率いる彼が、先陣を切って弾劾演説をするのは異例だった。


 小カトーは演説の言葉通り、怒っていたのだ。彼と彼の仲間とが作ってきたローマを転覆させようという無謀を考えたカテリーナに対して。


 執政官が誰であれ、そして未来がどうであれ、小カトーは自分こそがローマを守る張本人であるという矜恃に燃えていたのであった。


「陰謀によって国家が危機に瀕し、現実に我らの妻や子、両親が、執政官と市民が残虐な殺戮の計略にさらされたことはもはや明白。私は提案する」


 小カトーが大きく息を吸い込み、結論を叫んだ。


「カテリーナに死を!」

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