ユリア流「頂点に立つための散財法」
クララから百タレント(約六十億円)という、軍隊を養える規模の借金をユリアがした結果、ローマ市民は修繕されてきれいになった街道と、コロッセオでの剣闘士の白熱する試合を一カ月連続で享受することができた。
ついでと言っては何だが、街道修繕には多数の人足が動員され、雇用が生まれた。
特に喜んだのは、戦がなくて体がなまっていた兵士たち。彼らは、戦場での兵舎づくりで鍛えられた、いずれ劣らぬ土木工事のプロフェッショナルでもあり、大規模修繕が提供されると、彼らは潤うのである。
「ユリア様とクララ様のおかげで、仕事ができて助かったなあ」「戦争していない俺たちに、いい稼ぎ口を作ってくれたよ」「また頼むぜ」
兵士たちは、口々にユリアとクララに感謝していた。
ユリアはまだ自分の軍隊を持っていない。ローマの軍は基本的に「ローマ共和国」の軍隊であって、金で雇った私兵でないかぎりは、個人の軍隊というものは存在しない。
しかし、彼女の『カエサル』としての仕事には、どうしても軍事力が必要だ。
それも半端な軍隊ではない。これから彼女とガリアの蛮族と戦って苦楽を共にし、やがてローマ元老院から反逆者の烙印を押されることになろうとも、彼女に付き従ってくれる強固な絆で結ばれた軍隊が必要なのだ。だから、兵たちの人気が高まるのは彼女の今後のキャリアを考えても、とてもいいことだと思う。
剣闘士の試合については、思っていたよりもお金がかかった。
細部にいたるまでの企画にユリアだけではなく、クララも口を挟んできたからだった。
「剣闘士の鎧はぜんぶ黄金で作るのよ! エジプトの王族の催し物みたいにね!」
「クララの意見もすばらしいが、私はぜひ銀揃えにしたいな」
「銀より金のほうが、お金がかかっていいじゃない!」
クララもその気になれば、けっこうな散財家のようだった。
散財家と散財家の対話はヤバそうなので、口を挟む。
「金だと柔らかいから、試合の最中に変形の恐れがあるのでは?」
「セイヤ、よく知っているな。銀であれば硬度は保てるし、日の光を浴びてまるで太陽の軍隊のように白く輝く。これは目立つぞ」
クララは不満そうだったが、武器や鎧の問題となるとユリアのほうが詳しい。結局、剣闘士たちは、銀一色の堂々たる姿で戦うことになった。
だが、クララの提案で実現したものも多い。試合ではアフリカからライオンやトラを連れてきたり、試合場に来た観客たちにはパンと肉の入ったスープを提供したりした。
こちらも大盛況の大成功。連日連夜、満員御礼だった。
かくして百タレントのお金はそのほとんどが見事に使われ、ユリアとクララの名前はローマ市民たちのあいだで人気者の代名詞として広がっていったのだった。
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