高科星治の憂鬱
俺はその日、確信を持った。
ーロリの何が悪いのかー と。
リア充爆発しろなんて思わない。
同性愛も否定しない。好きなだけすればいいだろう。
ただ……ロリだけはちがった。
ロリに色気を覚えるなど考えもしなかった。
学生の時、クラスメートが「〇〇のやつロリコンなんだって、ぷっくすくすww」とか言ってるのも普通だと思っていた。
ー俺はロリコンではないー
今、はっきりとそう断言できるか?
できたとしてもそれは眉唾だろう。
人間、可愛いものには目がないという。それは幼い少女にも適用されるだろう。
だが違う……。
幼女の場合、可愛いと思っただけでロリコンとなるらしい。そこに性愛的な意味がなかったとしても……だ。
それでも…………可愛いと思うことができるならば、俺はロリコンでもかまわない。
俺にそこまで悟らせるほどの少女は今、
「んふぅ……もっと//ほしいで、しゅ……♡」
ふんわりとした笑みの中に燃えたぎるほどの情欲を秘め、俺の繰り出す新たな一手を今か今かと待ち続けている。
クソ社畜となって三年目。もはや考える気力もなくなった気がする嘘です。
人一倍価値観が違うと罵られ早十年
「自分の価値は自分でしか決めれないぞ」
高校時代の担任がよく言っていた。そんな言葉に、トキめいた!!……はずもない。
本気で言ってくれてるのかどうかは分からない。
もし、担任が教師でなければ言うはずもなかろう。「教師だから」という理由でその言葉が成立する。ただの凡人には考えれもしないから、人は何かしら理由をつけて物事を行う。
そう、「理由」だ
「理由」なしにこの世界は生きていけない。
働く=生活するため 妹の世話を焼く=兄、姉だから Amazonを利用する=外に出たくない
何をするにあたっても「理由」は必ず存在する。
では「理由」を持たない人間とは何だろう。
人は「理由」を得て安心する。自分の都合が悪くなると「理由」を「言い訳」とする。
ーだが、「理由」を持たない人種もいる
思春期に入ってからよく言われたものだ。
「お前、「星治」なのに何で政治家にならんのww」
政治なんて興味のカケラすらない。
嘲笑する彼らには悪意などないだろう。
何せ彼らは、「名前が「星治」だから何となく」という考えだからだ。これは「理由」とは少し違う。言うならば「空気」だ。一人が言い出すと周りも同調し、「あいつが言ってるから何となく」という「空気」が発生する。しかし、空気を作り出せるのは一部の限られた人間のみ。その他の者は、その「空気」に乗っかるしかないのだ。
つまるところ、俺は同調圧力が嫌いだ。
「表現の自由だ〜」とか「公共の福祉に反しない限り」とかほざいてる輩には「法の下の平等」とだけ返していたが、そこは数の暴力、簡単に押し切られてしまう。
何処ぞの思想家はこう語る。
「もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ」
皆で道を作る、それ自体は別にいい。たが、道から外された人はどうなる?道から外れた場合、何が起こるか分からない。もしかしたら危険な目に合うかもしれない。そのような犠牲者を出してまで道を作ろうとする?それとも犠牲を踏まえた上での「道」なのか。
理解できない……。が、理解できないからこそ言えることもある。
ー頭に来るー
悔しい。言い返せないことが悔しい。
何故って?俺は物事を論理的に考えるくせがある。そのせいで、価値観も狂ったのだろうか。
だが、所詮俺の考えなど奴らには理解するのは不可能だ。高みにいる人間の考えは下落した者には到底、高嶺の花だろう。
「流石に二十五にもなってこれはかっこつけ過ぎか……」
これほどまでに病む(?)ことは高科星治にとって珍しくもなんともない。
だが今日は別だった。国公立の大学を卒業し、職について機械のように働いているが、自分の中で何かが爆発しようとしていた。
ー違う……俺は人のために動いているんじゃない………
俺はこの狂った世界が大嫌いだ。
自分の益のためならば、傷つけることを厭わない世界。自分の非行を顧みず、悦に入ることだけを望む世界。正義なき力が蔓延る世界。人に対するイメージを定義づける世界。
こんな世界が俺は…………俺は……………………
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!クソがぁぁぁぁっ!!こんな世界ぶっ壊してやるぅぅぅぅぅぅぅ!!!!……ゲホッ!!………はあっ………はぁ………俺が先に壊れるか………………?…………………誰か、今だけは俺を癒やしてくれ………!そしたらっ!この狂った世界を終わらしてやる!!だから、
誰か俺に救いの手をぉぉぉぉ…………!」
深夜の公園で厭世観の渦に飲み込まれる。俺の目に映るのは、薄暗い街灯以外何もない………。
コンビニで睡眠導入剤と軽食を購入、ふらふらと家路へつく。
………………明日は日曜だし、ゆっくり寝よう………。
とりあえず布団に入りたくてたまらなかった。
歩くこと二十分、ようやっと家が見えてきた。
父はパイロット、母はキャビンアテンダント。
なので、高科家に両親がいることはほぼない。
最後に会ったのは2年前、両親に家を任されたときだ。あれ以来一度も顔を合わせていないが、元気だろうか。高科邸は祖父の世代から継がれているので、ローンもなく、両親から毎月光熱費と水道代が送られてくるので、俺の負担は食費だけだ。光熱費くらいは自分で払えるのだから、親の厚意に甘えることにした。
うちの前には電灯があるので、すぐ分かる。
そうして、家の前まで来た、その時だった。
ー薄暗い視界の中で、小さな影が倒れているのを見つけたのはー
「なっ?!!」
急いで駆け寄ると、そこには少女が倒れていた。
「おい、大丈夫か?!」
軽く肩を揺すり声をかけるが、起き上がる気配はない。が、代わりに「ううっ……」と、呻き声が返ってくる。
さて、どうしようか……。現在深夜一時過ぎ。
こんな遅い時間に少女を連れていたら、即刻署行きだ。とりあえず家で様子を見るか。
大丈夫、少女はかなり幼い体つきをしている。変な気など起こさないだろう。
少女を抱きかかえ、家の中に入る。
この出会いが俗に言う「フラグ」だとはもちろん星治も理解している。
だが、その「フラグ」の大きさにはまだ気付いていなかった。