チャカえもん
私の名前は、のぶのぶ代。
やさぐれヶ丘中学校に通う14歳の女子中学生。
私は今日の放課後、ガキ大将の鮫島武(通称:シャーク)と舎部川ヤル夫(シャブ夫)の二人に、お気に入りコミックの初回封入特典のCDを取り上げられてしまいました。
シャークとシャブ夫は幼馴染で、二人は子供の頃から私の上履きを隠したり、スカートをめくったり、いつもちょっかい出してくる嫌な男子です。
彼らの悪戯は日増しにエスカレートしてきて、最近はスカートめくりに飽き足らず、おぱんてぃめくりなんて洒落にならない悪戯を仕掛けてきます。
「チャカえもん! チャカえもん! シャークとシャブ夫に取られた特典CDを取返すから手伝ってよ!」
でも安心してください。
母子家庭だった我が家には近頃、青いスーツを着た殿方が居候しています。彼は血塗れで路上で倒れていたところ、スナックで働いているママが仕事帰りに拾ってきました。
「チャカえもん! あいつらコミックに興味ないくせに特典CDだけ貸せとか、絶対に嫌がらせだよ!」
「のぶ代さん、またシャークとシャブ夫にいじめられたんですか?」
「特典CDの大阪ディビジョンのラップ聴きた〜い、シャークたちから特典CDを取返した〜い」
「のぶ代さんは毎日毎日、めんどくせぇな…」
私は部屋の襖を開けると、ママのベッドに腰掛けて煙草をふかしているチャカえもんに泣きつきました。
チャカえもんは本名ではなく、素性を語らない彼に私が付けた仮名です。
チャカえもんは室内でも外さないサングラス、青い派手なスーツ、ママに聞いたら背中から胸元に大虎の入れ墨があり、一見するとヤクザのような中年男性ですが、ヤクザではありません。
なぜならチャカえもんは、ママと私を守るために未来からやってきたボディガードだと、本人が言ってました。
きっとチャカえもんは人型ロボットで、性格破綻者のママと、その子供を守るように命令されている。
そんな映画もあったと思う。
「チャカえもん、特典CDを取返すの手伝って!」
「ちっ、今回だけですからね」
チャカえもんは青いスーツの内ポケットから回転式拳銃を取り出すと、弾倉に銃弾を詰めながら肩を落とした。そして彼は、拳銃を私に渡して後頭部をかきあげます。
「道具を貸しますんで、今日はのぶ代さんだけで殺ってください」
「えーっ! 私まだ捕まりたくないよ」
「のぶ代さんは14歳だし、大事にはならねえよ」
「じゃあチャカえもんやってよ、どうせ一人やるのも二人やるのも変わらないじゃん」
眉を吊り上げたチャカえもんは、無邪気に言い返した私の胸ぐらに掴みかかってきました。
「きゃっ、おかさないで!」
「日本じゃあ、一人だけなら死刑にならんのじゃ! 一人と二人は同じじゃないんじゃ! 小娘が!」
「ご、ごめんっ、な、なんでもするから…、ママには内緒にしてください。あと、痛くしないでください」
私は跪いて、チャカえもんのズボンを下ろそうとしましたが、どうやらそういう趣味はないらしく、面を上げるように言われました。彼は、とても優しい人です。でも一人目は、既にやってそうだなと思いました。
次回、ドスミちゃん登場!