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国士 誕生

  救世主現れる


 屈とは、珍しい名と思われるが、楚では平凡な姓だ。

 平も凡庸な名だ。頭のてっぺんが平らだったからだ。

 しかし屈平は非凡だった。国士の兆しがあるという。今で言う所の救世主である。

 見ろ。目の大きさが違う。雌雄眼だ。これは後の穎才が約束されている。

 見ろ。唇に太い縦皺がある。歓待紋だ。これは大器が約束されている。

 吉報を聞いた楚の王宮では、月旦評が開かれた。

 召集された顔相の学匠、骨相の権威、体相の碩学は異口同音「国士にござりまする」と判定した。

 次に陰陽学と讖緯学によるセカンドオピニオンが始まる。

 陰陽官も将来の活躍を保証した。讖緯官だけ首を捻った。

 讖記検索の結果「能臣」と出たが、一冊「悩臣」とある。文字通りみな「悩」んだが、すぐ解決した。

 「能」はこの本が書かれたときののいみなであった。

 緊迫後の歓喜はまた格別だ。

 かくして屈平は国士に決定した。


 首が据わり掴まり立ちが出来ようになった国士は、楚の鯨王と義親子の礼を執った。

 ヨチヨチと鯨王の下に辿り着いた屈は、臆することなく王の膝に這い上がる。

 楚世家千年の伝統を有する由緒ある王の髭をひっぱり、いやがる第41代君主の鼻孔両方に躊躇なく小さな指を差し込んだ壮挙は、まさに国士たる器だ。

 屈は鼻ツッペする鯨王を「国父」と教えられた。

 教育が始まった。1歳から彼に手習詞や楚楽を練習し、2歳で楚史と地理を口伝えで教えた。そして3歳には帝王学を学ぶ。

 4歳には講書参観があった。屈は鯨王の御前でチョコンとお辞儀をして、辿々しい口調で「国士は我身を省みず、楚に殉ぜん」と誓った。

 感極まった鯨王は屈を抱きしめる。臨席する教育係は感極まりドミノ倒しよろしく次々と卒倒した。

 5歳なると晋語・呉語・湘語・かん語を習得した。屈は語学の才能があった。難解な粤歌を流暢に歌った。

 楚宮はますます期待し、当時の楚でできうる限りの最高の教育環境で養成された。

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