本当にはなかった怖い話「廃れた神社の神様」
夏なので怖い話を書きたくなったので書き殴りました。特に深いこと考えず読んでいただけると嬉しいです。なにせ稚拙なもので…
高校三年生の夏。
僕はこれから受験だということで当分会えなくなるだろう実家のおじいちゃんの家に泊まることになった。
中学校に入る前に東京に引っ越した僕は一ヶ月に一回くらい実家のおじいちゃんに会いに行く。受験勉強に打ち込むようになると実家には行けなくなるから、と父さんが勧めてくれた。
来る前に地元の友達のAとBちゃんに連絡をして会う約束をしていたから、着いたら荷物を置いてすぐに出かけた。その日は普通に遊んだんだけど帰り際に友達のAがこんなことを言ってきた。
「なあ、明日の夜空いてるか?」
「空いてるけど・・・」
「なら23時ぐらいにあの山に行こうぜ」
Aが指を指したのは地元ではかなり有名な心霊スポットがある山だ。山道を登ると古びた鳥居があってその先には廃れた小さな神社がある、と聞いたことがある。おじいちゃんは子供の頃にあそこに行こうとして叱られたとか。父さんが子供の頃にはおじいちゃんと一緒に行ったらしいけど夏のお昼頃にも関わらず辺りは冷たい空気が漂っていて寒いくらいだったらしく、気味が悪くて鳥居は潜らなかったと聞いた。その話のあと父さんに「絶対にあそこには近づくなよ」と念を押されて僕は怖くて近づかなかったし、近づこうとも思わなかった。
「えー、辞めようよ。危ないって聞いたよ?」
幼馴染のBちゃんがAにそう言ったけどAは行きたいようで「大丈夫大丈夫」と肩をポンポンと叩いた。
僕も行きたくないと言おうとしたらAはそろそろ帰るわ、と言って自転車に乗って行ってしまった。
「行きたくないね・・・」
「でもAがあの調子なら行くしかなさそうだ」
Bちゃんは苦笑いするとこつこつと歩き出した。
その日はそのまま家に帰った。
次の日。
朝、父さんと野菜を収穫してる時にそれとなく話を聞いてみた。
「ねえ、あの山にある神社の話ってなんかない?」
「はぁ?急になんだ」
「えっと、暑いしなんか涼しくなる話ないかなって・・・」
すると父さんはうーんと唸った後、少し悩んだような顔でぽつぽつと話してくれた。
「たしかな、父さんが行った時は境内に入らなかったから見てないが本殿の扉は施錠されてないらしくて中に入れるらしいがそこに変なツボがあるらしいぞ」
「ツボ?」
「どんなのかは知らないけどな、噂だと御札が貼られててそれを剥がすとヤバいとか、ツボの中には生贄が入ってるとか」
そこまで言って後ろからおじいちゃんがお茶を持って来て休憩するぞーと声をかけてきた。僕と父さんはそれを一気に飲み干す。
「二人でなんの話をしてたんじゃ?」
「それがな、こいつがあの噂の神社の話を聞きたいらしくてよ。親父、なんかないか?」
「あー、あそこはのう。昔は森の神様を祀ってたんじゃがある時を境に誰も管理をしなくなったらしくてな。それ以来、近くで良くないことが立て続けに起こって外から霊媒師を呼び寄せて神様を封印したらしいんじゃよ」
真剣な顔でおじいちゃんは話すとにかっと笑って「本当かどうかは知らんけどなー」と締めくくった。
夜。僕はじいちゃんと父さんが寝静まったのを確認して家を出た。山道の入口まで行くとAとBちゃんは既に来ていて、Aが遅かったなと声をかけてきた。
「ほんとに行くの?」
「当たり前よ。明日になったらお前も帰んなきゃなんないだろ?夏の思い出作りよ」
「こんな事しなくてもプールとか行けばよかったのに」
Bちゃんは心底嫌そうな顔をしているがそれを気にも止めずAは山の中に足を踏み入れる。
そこから数十分もかからずに噂の鳥居が見えた。
「おい、あれだ」
Aが指を指す。Bちゃんがスマホのライトで照らすと木に隠れた鳥居が見えた。色褪せてしまった赤色はかなり不気味だ。
「も、もう帰らない?」
「馬鹿野郎、ここまで来て引き返せるかよ」
BちゃんがAの腕を掴むがAはそれを振りほどいて鳥居を潜って階段を上り始めた。
仕方なく僕とBちゃんもそれに続く。が、鳥居を潜った瞬間。嫌な音が耳に響いた。ギギ、という何かを引っ掻いたような音。虫の鳴き声かと思ったが今まで聞いたこともない音で僕は怖くなった。けどAは止まらずどんどん上っていってしまうので一人で帰る訳にもいかず、一段一段上っていく。
階段を上りきるとボロボロの小さな小屋のようなものが見えた。それ以外は特に何もなく少し開けたところにその小屋だけがポツンとある感じだ。
ここまで来て気づいたが異様に寒い。夜だからってことを考えても夏だというのに半袖で寒いと感じる。流石に引き返したくなってAを捕まえようとするとAがぼそっと何か呟いたあと小屋を指さした。
「おい、あれ空いてて中に入れるみたいだぞ」
そう言うと僕の手を掴んで引っ張った。驚いたのがその力が異様に強い。振りほどこうとしても解けない。Bちゃんは怯えた顔をしてその場で立ち竦んでいる。
そしてAは扉を開けて中に入ってしまった。僕も連れてかれる形で中に入ったが酷い臭いが鼻を劈く。何かが腐ってるような嫌な臭いだ。あたりを見回してみると天井には何かがびっしりはられていてとても居心地が悪い。そして見つけてしまった。部屋の奥に蓋が閉じられた小さなツボが置いてあった。暗くてほとんど何も見えないはずなのにそのツボだけははっきりと形がわかる。僕は引き寄せられるようにそのツボに寄って行く。そのツボは蓋がされていてその上から御札のようなものが貼られていた。
「その御札を剥がして帰ろうぜ」
後ろからAの声がする。いつの間にか手は離れていた。僕は早く帰りたいと思って振り返ることなく、うんと頷くと御札を剥がしにかかるがかなり密着していてなかなか剥がれない。爪を立てて剥がそうとしたらギギ、と嫌な音がした。やっとの思いで御札をべりっと剥がした時、僕は気づいた。
そのツボの更に奥、壁際に何かがある。それを確認しようと近づこうとしたら後ろからいきなり声がした。
「このツボ開けるな」
振り返るとAがいつの間にかツボの前にしゃがんでいてツボの蓋に手をかけている。僕が何か言う前にAはツボの蓋を開けてしまった。すると更にすごい臭いが小屋に充満した。例えるなら物が腐った時の臭いか。僕はたまらず後ろに下がる。その瞬間、何かに足を触れられて、僕はびっくりして今度はAの方に駆け寄る。そして触ってきた方を見ると先程見た何かが動いていた。僕がじっとそれを見ていると、その触ってきたものが微かに声を発した。
「逃げ・・・ろ」
その瞬間、ゾッとした。この声はAだ。僕の隣にいるはずのAが目の前で倒れていた。事態を理解できずにいると外からBちゃんの声が耳に入ってきた、かなりの大声で叫んでいる。
「逃げて!!それAじゃない!」
僕はその声を聞いて我に返ると急いで小屋から出た。後ろからギギという音が聞こえたが振り返ることなくBちゃんの手を掴む。「離して!」とBちゃんが言ったがそのまま走って元来た道を引き返す。走ってる最中、後ろからギギ、ギギ、という音が鳴っていた。あの音の正体はきっとあの御札を剥がそうとしたAもどきに違いないという謎の確信がありそれが多分森の神様だったのかもしれない。そのまま僕はBちゃんを連れて家に帰ると自室でBちゃんと朝が来るのを待った。御札を剥がしてしまった、ツボを開けてしまった。あの倒れていたのはAだったのか、もしそうならあの一緒に居たAはなんなのか。それらがずっと頭を駆け巡っていた。
数時間ずっと布団で震えていたのだろう。気づけば日差しが部屋に入ってきていた。なんなら少し眠っていたのかもしれない。Bちゃんに声をかけようとあたりを見回したがBちゃんが居なくなっている。多分、僕が寝てる間に帰ったのだろう、と無理やり自分を安心させて朝食を食べにリビングに行った。ちょうど朝の早いじいちゃんが朝ごはんの準備をしてくれていたので声をかけた。
「おはよう、おじいちゃん」
「おはよう。ありゃ、お前一人かい?」
「え、なんで知ってるの?」
「わしがトイレに起きた時にお前とAがどたどた走って帰ってきたじゃろ。そういやAは最近家に帰ってなかったらしいがやっと帰ったのかね?」
背筋が凍った。じわっと身体中から冷や汗が流れ出てくる。そして昨日の事を鮮明に思い出し、気づいた。僕の後ろで鳴っていた音、あれは僕のすぐ後ろで鳴っていた。そしてBの手を掴んだ時、やけに冷たかった、体温を感じないほどに。
ギギ
僕のすぐ後ろから音が聞こえる。僕が連れて帰ってきたのはいったいダレナンダ。
ここまでお読み下さり有難う御座います。これといったこともないですがとりあえず怖い話だと思います。更に怖いお話が書けるよう精進致します。