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クラス転移で俺だけ勇者じゃないのだが!?~召喚した配下で国を建国~  作者: kame
第二章 〜フューズ王国〜

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第23話 異変

「うおー! 美味そー」


 オークの肉を熱した石の上でジュウジュウと焼いていく。その食欲を唆る音と匂いに体が反応してよだれが止まらなくなりそうだ。

 味付けは肉の素材を活かすために、塩だけを使う。


「うまっ!」


 噛めば噛むほど、肉汁が溢れる。そこまで油っこくはないが、赤みほどさっぱりしているわけでもなく、絶妙なバランスで成り立っている。高級肉のように柔らかすぎるわけではなく、固くない程度に噛みごたえはしっかりとしているので満足感もある。まさに"肉"って感じだ。


 ご飯を食べ終わった後は就寝するためにテントを張っていく。

 ただこの作業が意外と厄介である。テントを張る時は地球と同じようにロープやペグという杭の様な物を使って設営するのだが、こっちにはペグというものがないので、そこら辺に落ちている木でぶっ刺して固定する。

 まあ朝頃にはだいたい取れかけてるのだが。あまりキャンプ慣れしていなかったので、最初の頃は設営に30分とか掛かったりしていた。

 ポールはないのだが、魔道具で布などを硬化出来るスプレーがあるので、それを使ってテントを立てていく。

 しかも、森の中は寒暖差が激しく夜は凄い冷え込むし、夜行性の魔物なども出現するので安心して寝ることは出来ない。街道での野営ならまだ幾らか楽なのだが、森の野営は結構大変だ。



「ふぅーこんなもんでいいかな?」


「速いね! トウマ君達は」


「ああ、フューズ王国に来るまでに野営は何回か経験しているからな」


 最近では慣れてきたので7分くらいで設営を済ませれるようになってきた。


「よーし、じゃあ認識阻害の魔道具撤去するからなー」


 そう言いながら、周りを囲っていた天幕のような魔道具が先生のアイテムバックの中へと収納されていく。


「じゃー頑張れよ」


「え、ちょ、先生!?」


 どうやら先生たちは少し離れた場所で様子を見守ってるらしい。……そう、生徒の俺たちだけで、この魔物がいる森で一夜を過ごせ、という訳だ。

 認識阻害の魔道具は取り去ってしまったので、もちろん魔物は寄ってくる。交代で見張りをしながら一夜を過ごすというわけだ。


「……ああ、地獄の始まりだぁぁ!」


 フィリップは頭を抱えながらぶつくさ言っている。


「早速お出ましね」


 リアンの方を見ると、数匹の棍棒を持ったゴブリンが居た。


「ギギッ」


水刃(ウォーターウィップ)!!」


 ゴブリンは大きく振りかぶって棍棒を叩きつけようとするが、リアンの魔術によってどうっと倒れる。

 残りの数匹も、近くにいたフィリップに倒された。



「ご主人様、あっちの方からもなにか来ています!」


 暗いためハッキリと見ることは出来ないが、何やら光る物がいち、にい、さん……全部で16個見える。2つずつ動いているので恐らく目だろう。どうやらこっちを警戒しているようで動く様子はない。


「チッ、ワイルドウルフか? 早々に嫌な奴らに囲まれたな」


「……わんちゃん……遊んであげる」


 いつもはどこかふざけてる空気が漂ってるフェルトも神妙な顔をしている。ユーユはいつもどうりのようで手をワキワキさせている。何気にこの2人いいコンビなのではないだろうか?


「ウ゛ワオォォォォン!!」


 月に照らされてワイルドウルフの姿が見える。

 その顔は爛れ、血が滲んでいる。その腐敗したような皮膚は黒ずんでいる。

 どうも様子がおかしい、まるでゾンビのようだ。


「あれ…は、アンデット……ゾンビウルフ!? 嘘でしょ……なんでこんな所に」


 いつもは凛としているジェシカも明らかに動揺している。


「アンデットゾンビウルフ……確か死の大地の周辺にしか存在しないはず……」


 確か……アンデットゾンビ系の魔物は死の大地の周辺にしか存在しないと授業で習った。

 アンデットゾンビウルフは確かCランクの魔物だったはずだ。

 そう、俺たちが戸惑っている間もジリジリと距離を詰めてきている。


「フゥグガァァル」


 先頭の1匹が地面を蹴り跳躍する。前足に備えられた鋭い爪はグラッグ君を捉えようとしている。


 ──ガッキィ─ン


「先生!」


「あっぶねー、おうおう、なんでこんな所にコイツがいるんだ?」


 すんでのところでブレンダン先生が間に入る。どこに隠れていたのだろうか?

 全然分からなかった。

 少し遅れてもう1人の付き添いの先生も駆け付けてきた。彼女はブレンダン先生ほどの戦闘力はなく回復専門なので助力は期待出来ない。


「チッ、おい、お前ら森の外へと逃げろ!」


「先生たちはどうするんですか!?」


「俺たちはここで時間を稼ぐ!」


 幾らBランク相当の実力があろうともCランクの魔物が8体というのはキツイだろう。


「この数は先生でも、危ないです! 僕達も戦います!」


「チッ、好きにしろ! 我が手に集え、風の妖精………風弾撃(エアーインパクト)!!」


 先生の手には可視化出来るほどの気流が渦巻いており、まるで小さい竜巻のようだ。

 詠唱が完成すると目に見えないほどの速度でアンデットゾンビウルフの向かって飛んでいく。


「フウゥゥガァァァ」


「なに!?」


 風弾撃(エアーインパクト)を避けようとアンデットゾンビウルフは身を捩るが、交わしきれずに後ろ足に被弾し、肉片が飛び散る。だが、まるでダメージがないかのように相変わらずこっちに飛びかかってくる。爪がブレンダン先生の腕を掠り、傷をおわせる。


「うぐっ、チッ、痛てぇな」


「大地に満ちる生命の躍動、汝の傷を癒せ! 治癒ヒール!!」


 もう1人の先生が詠唱をすると、ブレンダン先生が淡い光に包まれ、アンデットゾンビウルフによって切り裂かれ、血が滲んでいた腕の傷はみるみる塞がっている。凄い、初めて回復魔術を見たが、こんな感じなのか。今までこれといった怪我はしてないが、今後必要にもなっていくだろう。

 さて、どうしたものか、1匹でもなかなかに生命力が高いのに一気にこられたら大変だろう。Cランクの魔物でも上位にくる魔物だろうか。

 そう思っていると、アンデットゾンビウルフの欠損した足が再生していってるのに気がついた。


「Cランクの魔物のしては強すぎる……」


 俺は、アンデットゾンビに対して鑑定を行う。



 名称: なし 


 種族:アンデットゾンビ族 


 状態:激怒


 ステータス レベル:17


 HP:867 MP:241 腕力:526 体力:456 敏捷:765 知力:25 魔力: 261 器用:321


 スキル

 牙闘術Lv7、闘爪術Lv8、闇魔術Lv2、敏捷上昇Lv3、暗視Lv3、鋭敏嗅覚Lv4、鋭敏聴覚Lv3、痛覚鈍化Lv6、再生Lv4


 称号

 ■■■■■



 ふむ、やっぱり、Cランクにしては高い方なのではないだろうか?俊敏は700近くもある。それに比べて知力は25しかない。スキルの方もなかなかに強力だ。牙闘術、闘爪術は両方とも高レベルだし、なにより再生スキルと痛覚鈍化のスキルが強い。攻撃を受けても怯むことなく、回復する捨て身の攻撃はとても面倒だ。

 暗視、鋭敏嗅覚、鋭敏聴覚もあるので、この暗闇の環境下では非常に有利に立ち回れるだろう。それに1番気になるのは称号だ。俺の鑑定はかなりの高レベルのはずなのだが、読み取る事は出来ない。一体これはなんの称号なのだろうか?

 そう思ってると、後ろの茂みの方から物音が聞こえる。


「危ないです!」


 ブレンダン先生の背後から迫ろうとしていた1匹をカンナが斬り捨てる。腐敗したような臓器がぶちまけられ、ドサッという音ともに地面に崩れ落ちる。


雪玉(スノーボール)!!」


電球(エレキボール)!!」


 ジェシカとフィリップが魔術を使うが、アンデットゾンビウルフはヒョイとなんでもないように躱す。


「くっ、手強いわね!」


 カンナの火炎魔術が使えれば幾らかは楽なのだが、森で火魔術系統を使うと周りの木に燃え移り、自滅してしまうこともあるそうなので迂闊に使うことは出来ない。

 まともに戦えるのはカンナとブレンダン先生だけだろうが、ここには生徒含め20人近い人がいる。2人だけでカバーするなどとても無理だ。


「……仕方ないか……」


 恐らく、疑問に思われてしまうだろう、もしかしたら怪物と恐れられるかもしれないだろう。だが、誰かの命を賭けてまで隠し通すことじゃない。


「神聖なる森林より育ちしものよ……封印の鎖を解き放て……無限なる深淵より今ここに顕現を、召喚!! ラフォーレウルフ!」

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