第20話 魔術の授業と学食
「……これでいいのか?」
そう言って俺はローブを羽織る。
「ああ、あっていると思うよ、トウマ君」
なにせこんな本格的なローブなんて初めて羽織るからな。
魔術の授業をするときには、ローブを羽織らないといけない、なんでも、このローブには魔術耐性があるそうだ。
俺は、Sクラスの委員長のグラックくんにローブの着方や、手入れの仕方を教えて貰っていた。
「よし! じゃあ、早速いこうぜ!」
「フィリップ! そんな慌てなくてもいいじゃないか! 置いてかないでくれよ!」
そう言いながら、男子更衣室からドタバタと演習場へと移動していく。
ちなみに、女子は別の更衣室だ。まあ更衣室といっても、ローブを羽織るだけの場所なんだがな。ローブをそこに保管しておく生徒も多いらしく、手入れ道具なども置いてある。
「おー、こっちの演習場は広いなぁ」
試験を受けたときにも演習場には行ったが、あれはどうやら簡易演習場のようで、こっちに比べるとだいぶちっちゃかったのである。まあそれでも体育館ぐらいの広さはあったけどな。
「あ、いたいた」
「ご主人様、似合ってます!」
「カンナも似合ってるぞ、リアンもな!」
2人はなにを着ても様になるな。
「よーし、全員揃ったかー? 始めてくぞー」
そう言いながら、ブレンダン先生はローブを羽織ろうとしている。いや……先生も更衣室で着てきなよ……
「んじゃ、何やるか説明するから聞いとけよ。まず、お前たちにはさっきの座学で教えた魔術の形状変換をしてもらう」
さっき、先生が見せてくれたやつだな。これで魔力操作も鍛えれるし、応用力もつくから一石二鳥だろう。
「じゃあ、各々得意魔術で形状変換の練習はじめ! 俺は順番にアトバイスしていくから、順番が回ってくるまでは待っててくれ」
俺は最近特に練習している土魔術の石生成で丸い石を創り出そうとする。
「うーん、難しいな」
「トウマは少し魔力を込めすぎだな。魔力を込めすぎているせいで制御が出来ず、形が歪になるんだ」
なるほど、魔力を抑えてやるのか。
「お、さっきより丸くなった!」
「お、いいぞーその調子だ」
よし、このまま尖った槍みたいな形に変換させるか。絶対尖ってた方が威力高いよね。
「よし、結構上手くいったな。ちゃんと尖っている。このまま回転させて飛ばしたら土魔術Lv6石弾みたいになるんじゃないか?」
「風魔術使って回転をかければそれっぽくなるんじゃない?」
「なるほど、よし、やってみるか」
俺は風魔術Lv2旋風を使い、尖った石を回転させる。
「よし!」
俺はそのまま風の方向を前に指定して的へと飛ばす。
ファン──ガギャンという音ともに的に石が刺さる。やべぇ、怒られるかな?
「うお、なんだ!?」
「すみません、僕です」
「周りには気をつけてやれよ。それはそうと、今のはどうやってやったんだ?まだ石弾は覚えてないはずだろ?」
「ああ、今のは石生成で創成した小石に旋風を使って回転をかけたんです」
「おー凄いな、それも立派な複合魔術だぞ。ってかその歳で同時展開出来るのか……」
なるほど、なにか2つを魔術を組み合わせると複合魔術になるのか。話を聞いていると、同時に2つの属性の魔術を行使するのは一般の魔術より難しいらしい。
◆ ◆ ◆
「よし、みんな出来たようだな。よし、とりあえず午前中の授業は終わりだ」
「おっしゃー! やっと終わった! 疲れたー!」
そうフィリップが言いながら走っていく。午前の授業が終わり、昼食の時間になったので食堂に移動するらしい。
俺たちもみんなについて行く。
「おーこれまた広いなぁ」
どうやらこの学園には食事専用の建物があり、昼食時には全生徒がここに集まってくるそうだ。その建物は3階建てになっており、1回は非戦闘クラスの経済学部や、経営学などの生徒が使用し、2階は騎士、冒険科のC、Bクラスの生徒が、3階は騎士、冒険科A、Sクラスが使用しているらしい。
どうやらクラスが違うとトラブルも起こりやすくなるため、分けられているらしい。
「おい、あの子めっちゃ可愛いぞ、誘おうぜ」
「おいおい、やめとけ、氷結のジェシカがいるんだぞ?無理に決まってるだろ」
トラブルの匂いが一瞬したが、どうやらジェシカのお陰で回避出来たようだ。ちなみに氷結のジェシカというのは、氷雪魔術を使えることと、その冷ややかな目から来てるらしい。まあ一重だから睨んでるように見えるだけらしいけどな。
中に入ると、何台ものテーブルが並んでいる。
マホガニーのように赤茶色で美しい木目の一枚板で造られたテーブルは、横に細長く、一脚当たり片側四人掛け、両側合わせて八人は座れるようになっている。
いち、にい、さん…………気になって数えてみたら、同様のテーブルが全部で三十脚あった。
それらの席のざっと七〜八割方は埋まっているので、この食堂に今、優に百人を超える生徒が集まっていることになる。
「……結構人いるんだな」
「まあ昼時だし、毎回こんな感じだよ」
俺たちが席に着くと、グラック君が机に備え付けてあるベルを鳴らす。
すると給仕さんらしき女の人が奥からでてきた。この学園は8割位は貴族だから、自分で取りに行くセルフスタイルではなくて、給仕さんに持ってきてもらうタイプなのだろう。ていうか、この人数に対応するために一体何人の給仕さんがいるのだろうか……
ちなみに席はグラック君、俺、フェルト、フィリップの順番で、向かいにはユーユー、ジェシカ、リアン、カンナの順番で座っている。
「今日のメニューは何があるんだい?」
「はい、今日のメニューはハイオークのステーキとパンのセット、サンドウィッチと野菜スープのセット、ロックバードのカラアゲとパンのセットで御座います」
カラアゲ? この世界に唐揚げがあるのか? もしかしたら過去の転移者が広めたのかも知れないな。パンケーキとかもあったようだし。にしても、貴族が多いのに結構ジャンキーだな。みんな、自分の食べたい料理を注文していく。俺は気になった唐揚げにすることにした。
しばらく、みんなで授業のことについて雑談していると料理が運ばれてきた。
「おおー美味そうだな」
「美味しそうですね!」
「ああ、ここの学食は美味いからね」
「それじゃあいただきまーす」
「なんだい?それは」
「ああ、これは俺の国でのご飯を食べる時の挨拶だよ」
俺はそれだけ言うと、唐揚げにかぶりついた。
──サクッ──ジュワ、外はカリカリ、中は柔らかく、噛めば噛むほど、旨みが出てくる。やはり、日本の肉より異世界の魔物の肉のほうが美味しいのだろうか。
「美味いっ!」
「だろー? 俺は毎日ご飯を楽しみにして生きてるんだぜ!」
「フィリップは他にも生き甲斐を見出すべきだわ」
「うぐっ……」
フィリップに対して、ジェシカがツンと澄ました表情で皮肉をいう。
まあ、確かに美味しいご飯があると頑張れるけれどな。
「ステーキも美味しいです!」
ステーキもオークはオークなんだが、オークの上位種であるハイオークのお肉だと言っていたな。やはり、ハイオークの方が美味しいのだろうか?
「そういえば、君たちはどういう関係なんだい?」
「それは私も気になりますわ」
「ええっと、どこから話すべきかな」
流石に話すと不味い部分もあるので、ぼかしながら喋らなくては。
「私はトウマたちに命を助けてもらったのよ、魔物に襲われているところを救ってくれたの」
「へぇー、トウマ君達は凄いんだね」
「まあ、実際にその時の魔物を倒したのはカンナなんだけどな」
「あら、トウマも私を背負って介抱してくれたじゃない、命の恩人には変わりないわ。感謝してるわよ」
「ま、まあね」
やべぇ、顔赤くなってないだろうか? なんか照れ臭いな。
「か、カンナさんとはどういう関係なのかい?」
若干どもりながらフェルトが聞いてくる。て言うかなんでカンナだけさん付けなんだろうか?まあ何でもいいか。やっぱり、カンナのことも聞かれるよなぁ。
「……まぁ、そっちはちょっと色々あってな。話せないんだ」
「ご主人様はご主人様です!」
「まあ、誰しも言いたくないことの一つや二つはあるわよね」
そう言えば、そろそろリアンには神様うんぬんの話をしてもいいかもしれないな。
「……トウマ」
「ん、なんだ?ユーユ」
「……召喚魔術見せて欲しい……魔物見たい」
そう言えばユーユは魔物を研究するのが好きなんだよな。でも、魔物を渡したら解剖し始めそうだなぁ。
「良いけど、解剖とかはしないでくれよ?流石にあれだからな?」
「……ざんねん……」
おいおい、解剖する気満々だったのかよ。流石に解剖するために魔物を召喚するのはなんかなぁ、凄く申し訳なくなるからな。
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