第2話 冒険者登録と本との出会い
「ご飯の準備が出来ました!」
どうやら寝転んだら疲れてたのもあってか、いつの間にか寝てしまったらしい。
受付の子がドンドンと扉を叩いている音が聞こえる。
ベットから出て、霞む目を擦りながら階段を降りていく。
さっきまであんなに不安だったのだが、少し寝たことで落ち着くことが出来たらしい。
既に完全に日は落ちていて1階の酒場らしき場所では、ガヤガヤと騒がしい。
中央に比べ、端の方は比較的席が空いていたので適当に座る。しばらくすると受け付けをやっていた子が、料理を持ってきてくれた。
この時間帯は酒場が混むので受け付けではなく、ウェイターをやっているそうだ。
「お待たせ致しました! 日替わりスープとパンです! お酒は200ゴールド追加で飲めますがどうしますか?」
メニューはスープとパンらしい。お酒は断っといた。一応未成年だしな。
スープといっても具の肉やら野菜やらがモリモリで全然スープには見えないけど。パンは若干硬いかな? まあ全然食えないことはない。
味のほうは結構美味しかった。スープでパンをふやかすとちょうどいい硬さになる。具もゴロゴロでスープにも旨みが出ていた。
ご飯を食べると部屋に戻って早く寝ることにした。
明日は情報収集をしないとな。こうして俺の異世界生活1日目を終えた。
◆ ◆ ◆
翌朝、早めに起きて情報収集をすることにした。
この世界で生きていくには余りにも知識がなさすぎる。
なので、さっさと朝ごはんを食べて宿屋を出た。ちなみに朝ごはんのメニューはパンとステーキみたいな肉だった。朝からステーキはかなり重く感じた。
あと今日も宿に泊まるつもりなので先にお金を払っておいた。
宿でも手に入る情報は朝の内に、他の宿泊客に聞いて手に入れておいた。
まずここは、エルガレフト神国という宗教国家で、この世界の創造神ユミラを信仰しているらしい。
そして俺と元クラスメイトが異世界召喚される原因になった魔王領が北にあるそうだ。他にもいくつも国があるらしい。
それと、この世界では冒険者という職業があって、ダンジョンや、魔物を狩るなどの依頼を達成して得たお金で生活しているらしい。
ここら辺はラノベと同じような感じかな。
やはり冒険者ギルドがあるらしく、登録すると関所を通るときの身分証明書代わりにもなるらしいので登録しようと思う。
身元が証明出来なく、早くこの国から出たい俺にとっては名前とステータスを開示するだけで身分証明をできるものを手に入れられるのは都合がいい。
早速、俺は冒険者ギルドに向かうことにした。
昨日は教会から追い出されて絶望していたこともあって、あまり周りを見ている余裕はなかったが、あの後、この世界で生き抜くことを決意し、これからの不安とかそういうのも吹っ切れたことで、今日は街を見る余裕があった。
ここはエルガレフト神国の副首都バルエルというらしい。街はけっこう活気が溢れていて、行き交う人もみんな笑顔だ。
冒険者ギルドの場所は朝のうちにどこにあるかは調査済みだ。
しばらく歩いてると冒険者ギルドが見えてきた。結構大きい木造作りの建物だな。入口も結構大きくて武器を持った人が出入りしている。
ごつい人もいて若干怖い。だって日本では武装しているごつい人なんて日常生活の中ではほぼ見かけないからね(笑)。
そんな事を思いながらも恐る恐る入ってみる。
中の広さは中学とか高校の体育館ぐらいの広さだった。確か、体育館の大きさは間口30メートル、奥行20メートルくらいだったかな?
1階にはカウンターと依頼掲示板があり、2階には酒場らしきものがある。
さらに地下にも階があるらしく、そこには訓練場があり、お金を払えば使用できるらしい。まあ今のとこ戦闘するつもりはないので関係ないか。
辺りを一通り見渡すと、真っ直ぐにカウンターに向かう。
俺は弱いので、ラノベあるあるの絡んでくるチンピラが来ないよう早歩きをする。
絡まれたらボッコボコにされるからな。
あとでわかったことなのだが、どうやらこの街のギルドで新人に絡んでくるような冒険者は滅多にいないらしい。
なんでもここのギルドはとても厳しく、前は絡んでくるようなチンピラ冒険者もいたそうだが、そのギルド長が重い罰をチンピラ冒険者に課したおかげで、このギルドでは、絡んだり暴れたりする冒険者は滅多にいないらしい。
荒くれ者の冒険者を大人しくさせるとかどんな罰を課したんだよ……。
カウンターには綺麗なお姉さんが数人座っており、冒険者のことをサポートしてくれる。俺は比較的空いてる列に並んで順番を待った。
「次の方どうぞ」
どうやら俺の番のようだ。割と回転が早くて10分くらいで順番が回ってきた。
「冒険者登録をお願いします」
「かしこまりました。こちらの用紙に必要事項をご記入の上、提出をお願いします」
記入する欄には、年齢や名前、職業や冒険者になりたい理由などを書く場所があった。ていうか、まんま日本語だな。そこら辺は神様がどうにかしてくれたんだろうか?勇者の表記もどうにかして欲しかったな。
記入し終わった用紙を渡すと、受付のお姉さんは処理をしに奥に入っていった。
「こちらがギルドカードとなります。ここに1滴血を垂らして頂ければ登録完了となります」
お姉さんが戻ってくると、カウンターにあった針を渡してきたので、親指に刺して血を1滴垂らすと、ギルドカードに文字が浮かび上がってきた。
名称:楠木斗真 年齢:17歳
種族:人族
職業:召喚士
状態:平常
ステータス レベル:1
HP:30 MP:40 腕力:20 体力:30 敏捷:30 知力:20 魔力:70 器 用:50
スキル
召喚術Lv1
称号
yge@%
装備効果なし
称号の異世界人が文字化けしてるぞ? 同じ鑑定する道具でも性能にばらつきがあるのかな?
まあ受付の人にはバレてないっぽいけどな。冒険者ランクとかやっぱあるのか。ルールとかも聞かなきゃな。
「ギルドのルールを教えて貰えませんか?」
「かしこまりました。まず、冒険者ランクという冒険者における階級から話させて頂きます。
冒険者ランクはFからSまであります。ランクをあげるためには、そこの掲示板にある依頼を達成したりすることで上がります。ちなみにクエストを失敗した場合は違約金を払って頂きます。
またランクに応じた期間のあいだに依頼を達成しなければ自動的に冒険者の資格を剥奪させて頂きます」
冒険者であるためには一定数依頼を受けないといけないのか……俺、今まで戦ったこととかないけど、そんないきなり戦えるもんなのかな?
「依頼の種類としては、魔物の討伐、薬草の採取、護衛、清掃など多岐にわたります。自分にあった依頼を受けることをおすすめします。
次にギルドカードについてです。ギルドカードを紛失した場合、再発行にはお金がかかります。
また、ギルドカードを偽造しようとした場合永久的に権利を剥奪させて頂きます。
最後に、冒険者同士の争いには基本的にはキリがないので介入致しません。
ただし、ギルド内で暴れるなどの行為などによるギルドに不利益、または被害が出る場合は介入することもあります」
なるほど、依頼って戦い以外にもあるんだな。なんか街の便利屋さんみたいだ。
ちなみに冒険者ランクの強さを分かりやすく表してみると、
S→A→B→C→D→E→F
怪物→大ベテラン→ベテラン→上級者→中級者→初心者→見習いとなるそうだ。S ランクは世界でも10人くらいしかいないらしい。一般人からしたら、ランクCくらいから怪物扱いっぽいな。
とりあえず、ギルドでやることはすましたので、街で情報収集をするか。
歩きながら街を見渡していると、武器屋や、防具屋、なにやら怪しげな店などもある。
しばらく歩いていると、服屋を見つけた。服は現在制服であり、若干悪目立ちしていた。よし、ここで服を買うか。
中には、おばさんがいて色々な服が置いてあった。
今所持金は4000ゴールドしかないのでその中で買えるものを探すと、2000ゴールドぐらいの服があったので、それを購入した。結構お金がやばいな。今日は大丈夫だけど、明日はヤバいから依頼受けなきゃな。
ちなみに服は上が青で下が紺色のズボンである。……村人Aみたいな格好だな。
お金に余裕が出てきたら多少オシャレもしたいものである。
街を歩きながら見て回っていると、1軒の本屋を見つけた。普段は本なんてあんま読まないから古本屋とかは興味無いのに、この本屋には不思議と入りたくなった。ドアをあけるとそこには親と同じ世代くらいのおっさんがいた。
「いらっしゃい!」
店に入ると、本独特の匂いが香る。本の数はあまり多いとは言えないな。
そんな事を思っているとある1冊の本から目をはなせなくなった。
なぜか分からないけど、吸い寄せられる何か魅力がある。こう、まるで運命の本に出会ったかのような気持ちだ。
「おっさん、あの本を売ってくれないか?」
無意識に口が動き、思っていることを話してしまう。
「え、あの本か? あの本は中が白紙でなんも書いていないぞ。処分しようと思ってたやつだから持ってけ」
「ほんとですか!? ありがとうございます!」
「おう、いいってことよ」
いいおっちゃんでよかった。って無料とか凄いラッキーだな。
どうやらこの世界で本は若干高価なものであるから、今持っている2000ゴールドでは買えなかったかもしれない。
買えないだけならいいが、冷やかしに来たと思われるかもしれなかったな。
早くこの本を読みたい。そう思い、ゆっくり読めるよう宿に一旦帰ることにした。
そういえばなぜこの本に惹かれたんだろう。
読んで見れば分かるかもしれない。
そんな期待とは裏腹にだが、本を開くと中は白紙だった。
俺はいったいなぜ白紙の本なんかに惹かれたんだろうか……
そんなことを考えていると、本が光輝燦爛と輝く。
そして、俺を取り囲むように文字が浮かび上がり、俺の周りを飛び回る。
ヤバイ!直感的にそう思ってその場から離れようとした。だが、一足遅かった。
俺はその光の中に吸い込まれると、なぜか真っ白な空間にいた。
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