第12話 盗賊、そして入国
遅くなりました!
「オオーン!!」
「うわ、なんでCランク魔獣がこんな所に居るんだ!?」
「グハッ!!」
まるで漫画のように人間が吹き飛ばされている。小石でも蹴っ飛ばしたみたいだな。
「ワオオーン!!」
「ゴハッ」
流石Cランク魔獣と言ったところだろうか。次々と盗賊達を無力化していっている。盗賊達が死なないよう、フォレストウルフには動けなくなる程度に抑えて攻撃して貰っている。
「ッチ、ずらかるぞ! こんな強い魔獣を使役してるなんて聞いてねぇ!」
不味い。恐らく盗賊団のリーダーである男が撤退しようとしている。盗賊団のリーダーとしては、不利だと判断したら逃げると言うのは理にかなってるので優秀なのだろうが、ここで逃げられたら後々面倒臭いことになりそうだ。
「──させません!」
「うぉ!いつの間に!! ──ゴハッ!」
カンナが一瞬にして男に追い付き、鞘が付いたままの剣でぶっ叩き、吹き飛ばす。
ありゃ、痛いわ……。腹を抑えて、くの字に倒れている。いつの間にか他の盗賊達も全員無力化されているようだった。
とりあえずフォレストウルフに回収してきて貰って一ヶ所に集めた。勿論身動きは取れないように野営道具の中にあったロープで手を縛って、武器は全て回収してある。三十人以上いたので地味に大変だった。
「さて、誰に依頼されたのか聞かせて貰うぞ?」
そう、さっきこいつは〝こんな強い魔獣を使役しているなんて聞いてない〟と言った事から、誰かから依頼されたという事が分かる。俺の予想では、ほぼ確実に教会側が絡んでいる。あとはまあほぼないだろうが、カンナにちょっかいをかけて、俺が吹っ飛ばしたエムナタぐらいかな。
捕まった盗賊達は目を瞑り、完全に黙秘をしようとしている。なるべく拷問とか血を見ることはしたくないしなぁ……。ちょっとカマ掛けてみるか。
「ふむふむ、やはりエルガレフト神国の奴らの仕業だったか」
「──ッ!?」
「俺は人の考えていることが分かるスキルを持っているんだ。黙っていようが無駄だぞ?」
盗賊のリーダー以外は明らかに動揺している。やはり、教会側が俺を殺そうと盗賊に依頼したのだろう。
人を追い出すだけ追い出して、普段から人を襲っている様な奴らに殺しを依頼するとか神に仕える者としてどうかと思うがな。
さて、コイツらどうするかな。こんなの連れていきようもないしな。
「これどうすればいいと思う?」
「さあ? 放置でいいんじゃない?」
おう……この森の中で放置とか中々鬼畜だな、リアンさんよ。
まあ実際わざわざ殺さない様に捕えた訳だし、殺すまでもないからこのまま放置しか出来ないんだけどね笑。
「おい、お前ら、依頼主にこう伝えとけ。俺たちはお前らと遊んでいる暇はない。だから付きまとってくんなってな。もしまたこういう事をして来るようならそれ相応に対処させて貰う」
何回も襲われるのは誰だって嫌だしな。こんぐらいは言わせてもらっても良いだろう。とりあえず盗賊達は縛ったまま放置して先に進むことにした。早く物騒な国からは離れたいからな。
「にしてもホント規格外よね……最初に使役する魔物がCランクなんて人ほぼ居ないわよ?」
どうやら魔物を使役する場合は基本的には索敵やサポートなどに徹するのが普通なようで、戦わせることはあまりないらしい。Dランク以上になると戦うこともあるようだが、そもそもそんな強い魔物を使役できるものは稀だ。
魔物は自分より強い奴にしか従わないから、自分の力に見合わない魔物を呼び出したりすると、命令を聞かないどころか、食い殺されることもあるらしい。使役しているってことは少なくとも主がその魔物以上の強さだということだ。使役するにはその魔物よりも強くないと行けないのが、また召喚魔術が使いづらいと言われる所以だ。俺の場合はMPの量が規格外だったせいで強いと思われて、命令に従ってくれたのかな?
「コイツどうしようかな……絶対街に入る時に警戒されるし、怖がられるよね。最悪街に入れないかも」
「送還とか出来ないの?」
「送還?」
「ええ、召喚魔術で呼んだ魔物は召喚した時と同等のMPを使うことで送還することが出来るのよ」
そんなこと出来るのか! 割と便利だな。
俺は頭の中に浮かんできた言葉を召喚した時と同じように読み上げる。呪文っていうのかな? 魔術を行使するときの言語は不思議な感じがする。英語にも聞こえるし、韓国語にも聞こえる、そして日本語にも聞こえるし、はたまた全く馴染みがない様なときもある。
「*#&ha%*+#+-@&7#!!!」
フォレストウルフの足元に円が展開するように魔法陣が広がっていき、沼に引きずりこまれるようにフォレストウルフが魔法陣の中へと沈んでいく。
「よしこれで良いだろう」
「やっぱり神秘的で綺麗ね……」
確かに魔法陣が展開されるときに光が辺りを包む様はとても神秘的だな。それ以上にカッコイイと俺は思うんだがな。
そんなようなことを話しながら俺たちはあぜ道のように荒れた道を進んでいった。恐らくこの道もここを旅する人達によって踏み固められたのだろう。
◆ ◆ ◆
「──ッ!?」
「うまっ!?」
「美味しいですね〜!」
こんなにも美味しいスープを飲んだことはあるだろうか。野菜と肉の出汁がよく出ていて味に深みがある。これは何杯でもいける。モグモグ……。パンを付けてもいけるな。丁度いい感じにパンがスープを吸って味気ないパンも美味しく頂ける。
「こんなにご飯が美味しいってことは、カンナは料理スキルを持っているのかしら?」
「はい、Lv9ですよ〜」
「道理で美味しいわけだわ……ってかLv9って宮廷料理人よりレベル高いわよ」
「そうなのか? モグモグ……その料理スキルがあるとどう違うんだ?」
「そうね、私は持ってないから聞いた話になってしまうのだけれど、スキルのレベルによってその素材の味を引き出せる能力が上がるみたいね。それほどでもない食材でも料理スキルが高いと美味しく調理することが出来るのよ」
へぇ〜、やっぱ異世界におけるスキルって便利だな。そういえば宿屋のご飯が美味しかったのも料理スキルが関係してたのかな?
やっぱり、この便利なスキルとか魔術のせいで科学とかそういうのが発展しないんだろうな。でも、異世界で懸念していたご飯の問題はこれで解決されたな。やっぱ日本人だから食にはうるさいしね……。
「よし寝るかー。その前にクリーンっと」
ふふん!実はクリーンの魔術が使えるようになったんだぜ。旅の途中では満足に風呂に入ることとか出来ないから、ギルドでクリーンって魔術を知ってから覚えようと思ってたんだ。宿ではタオルと桶でなんとか凌いでいたが結構辛かったので、街から出る前に本屋によって魔術の初級本を買っておいた。
さっき20分くらいで習得出来たので使ってみたわけだ。20分で覚えれたから、リアンには凄い驚かれたけどな。
テントは一応3人用なんだが、1人は見張りをしないと行けないからテントの中で同時に寝るのは2人だ。見張りは2時間交代でしていく感じだな。俺が最初でその次がカンナ、最後にリアンの順番だ。
この見張り時間も勿体ないので新しい魔術を習得出来るように魔術の本を読んだりして過ごした。
2日目には小さな宿場町に泊まったりして、あっという間に3日間がすぎ、フューズ王国に近づいてきた。
「大きいですね〜」
「凄いな……これは」
目の前に広がる城壁は地平線へと繋がっている。高さはビルと同じくらい高くてとにかくデカい。地球でいう万里の長城みたいなものなのだろうか?これがフューズ王国の玄関、城塞都市ガルゾディスか。
どうやら200年ほど前のエルガレフト神国との戦争の際、容易く国境を突破されたことから国の防衛力を問われたため、終戦後にこれだけ巨大な壁が築かれたそうだ。工期は20年にも及び、多くの労働者が働くため、人が集まったことでフューズ王国でも有数の都市になったそうだ。まあ仕事がある場所には人が集まるしね。
「次、」
現在俺たちは検問を受けている。強面の兵士さんにドスの効いた声で話しかけられるとちょっとビビる。
「ふむ、冒険者か。この国への滞在目的はなんだ?」
「新しい仕事を探しに来ました」
まあ、ここら辺は適当に答えといて問題ないだろう。にしても海外行く時の入国審査みたいだな。
「怪しい点は……なさそうだな。よし行っていいぞ。次、」
ふう、やっと入ることが出来たか。道中もたまに商人や旅人とすれ違うこともあったし、案の定、ある程度人が並んでいて10分くらい並んだな。
とりあえずここでの拠点(宿)決めと、あとは冒険者ギルドに寄らないとな。
相変わらずここでもカンナ達はチラチラ見られている。カンナは勿論可愛いんだが、リアンも相当美人だからな。そんなことを思っていた矢先のことだった。
「おい! そこのお前ら! 喜べ、この俺様の側室にしてやろう」
……ん?急になにを言ってるんだ?コイツ。なんか変な奴に絡まれたぞ?誰だ?周りに執事みたいなのを従えているし、貴族だろうか?
「どちら様ですか?」
「ふん、俺様を知らないのか?まあ下民だからしょうがないだろう。いいか?よく聞いとけよ?俺様はこの都市を統べるファウンダー辺境伯の三男、エゴール・フォン・オイルセン様だ!」
うわー、面倒臭いのに絡まれたぁー!!
課題に追われる日々……更新も頻度もボチボチ上げてきます。小説の基本がなってなかったようなのでボチボチ直していきます。




