第11話 盗賊ってテンプレだよね……
教会でのある一室での出来事
「なに! 暗部が返り討ちにあっただと!? 下っ端だとしてもあのガキにやられるわけ無いはずだ!」
暗部達は優にあのガキのステータスを上回っていたはずだ。なぜだ!? なぜなんだ!?
「カルロス様、返り討ちにあった暗部は焼け焦げ、焼死体となっておりました。あの小僧は火魔術を習得していなかったので、恐らくは、あの小僧に引っ付いている少女の魔術によって殺られたと思われます」
「ほう、その少女はそんな手練なのか。ちと面倒だな、どうすればいいと思うか?ラザルよ」
忌々しいガキめ、手を煩わせやがって。
「はっ、あのガキを殺るためには乱戦に持ち込むのが得策と存じます。例え手練でも多方向から攻めてきた相手の攻撃からガキを守ることはできないでしょう」
「ふむ、確かにな。それなら殺すこともできよう、だがその少女は6人を相手に勝ったのだぞ? 生半可な人数では切り抜けられてしまうだろう」
「心配はございません。ガキどもは近々ここを発って、フューズ王国に行こうとしています。その道中には谷を通るルートがありますのでそこで多方向から30人程度で攻撃を仕掛けます。上から弓矢での狙撃も可能ですので、まず殺れないことはないでしょう」
「しかし、また暗部使うのではないだろうな? あれの育成には結構、時間と金がかかるのだぞ」
「そこも心配ございません。あそこらで盗賊をやっている奴らに殺ってもらいます。奴らのほうが地形を理解してますし、多少殺られたところでこっちは痛くも痒くもありません。ハハッ、金を渡したら快く引き受けてくれましたよ」
「貴様は抜かりない奴だのう。頼りにしとるぞ」
「はっ!」
「さあ、怯えて震えるがいい! ハッハッハ!!」
◆ ◆ ◆
「ご主人様おはようございます!」
「トウマおはよう」
「ああ、カンナ、リアンおはよう」
俺は1階のテーブルで待っていたカンナとリアンに挨拶をして、メニュー表を眺める。んー、今日はどうしよっかなー。やっぱり、肉サンドかな、それともオークステーキかな。よし、オークステーキにしよう。にしてもこんなに美味いのに500ゴールドしか掛からないってほんとお得だよな。
「はーい、お兄さんはオークステーキですね!」
最初は若干、魔物肉ってことで抵抗があったんだが、味は普通に美味かったし、見た目は完全に厚切りの豚肉だから慣れてしまった。味は牛肉と豚肉の間みたいで、そこまで重くない感じだけど、ジューシーで丁度いい。豚ほど淡白じゃないけど、牛をほど脂くどくはない感じだ。まあ豚バラとかは脂結構あるんだけどね。
ご飯を食べ終わったあと俺たちは防具を取りに武器屋に来ていた。
防具を取りに来た場所が武器屋ってなんかおかしいけど、そこは気にしないでいく。
「いらっしゃい! おう、坊主じゃねぇか。なんかお嬢ちゃんが増えてんな」
「ああ、ちょっと色々あってな。今日は防具を受け取りに来たんだ」
「おう、ちょっと待ってろ。確かここらへんに置いてあったはず……」
そう言いながら、おっちゃんは奥の方でゴソゴソ探している。
おっちゃんはあんまりこっちの事情に踏み込んで来ないからやり易い。
「これだな。オーク皮のレーザーアーマーだ」
おお! これぞ冒険者って感じだな! 自分専用の武器もそうだったけれど、防具もこう、なんか心を揺さぶられるなぁ。
「どうだ? カンナ」
「いい感じです!」
カンナは試着のために変化を解く。カンナのキツネ耳はピョコピョコ動き、尻尾がゆらゆら揺れている。嬉しいと犬みたいになるのか。カンナの反応がいちいち可愛い。
おっちゃんニヤニヤすんな! 俺もしてるけどね!
「おっちゃん、お代いくらだったっけ?」
「2つ合わせて7万ゴールドだ」
まあ、予想の範囲内の値段だな。まあ10万を超えなかったから良しとしよう。俺達はおっちゃんにお金を払い、店を後にする。
いい店だったな。もし、またこの国にくるならまた寄ろうと思った。
「おや、また依頼ですか? 昨日も一昨日も来ましたよね?休まなくても大丈夫ですか?」
町を出ようとしたら、何回か喋ったことがある衛兵さんに話しかけられた。まあ基本冒険者は2日仕事しては1日休んだりするから心配されているんだろう。
まあ休みと言っても、実際には依頼を受けないだけで、防具や武器の点検や掃除、食材の調達や情報集めなどをしてるんだけどな。
冒険者は結構ハードなので、連続して依頼を受けたりすると疲労が溜まって、思わぬミスなどで命を落としたりするための、休み休みでやる人が多い。
まあ俺はそんな疲労溜まらなかったし、他の冒険者が酒屋で騒いでるときにせっせとそういう雑務をこなしていたから問題ない。
「いや、今日はこの街を出るつもりなんだ」
「そうなんですか、寂しくなりますね。ああ、目の保養が……」
結局最後までこいつはカンナしか眼中になかったようだ。野営道具と一緒に買った簡易的な地図を広げる。えっと、今いるのがここだな?ここのまま道なりに南下していけばいい感じか。
トラブルが何も起きなかったら3日で街へと着ける距離らしい。最初の旅としては丁度いいだろう。
ここは町の門だが、関所はもうちょっと先にある。まあ近くの森やら草原やらに行くのにいちいち関所通らないと行けないとか、面倒臭いし仕事も回らないよね。
「アイテムボックスがあるだけでこんなにも旅が楽なのね」
リアンは国から亡命する時に一度こういう経験をしていたりする。そんな体力もある方では無かったので最初は凄いキツかったようだ。
まあ確かに昨日まで温室育ちだったやつが、急に10キロとか20キロ近いバッグをもって強行軍とかそりゃ無理があるよな。
それと比べたら今は必要最低限の物を小さいナップサックみたいなのに背負ってるだけだ。
「表向きにはアイテムバッグに入れてることになってるからな。そこら辺ポロッと俺の能力を言ったりすんなよ?」
「分かってるわよ。まあいくらでも物が入るアイテムボックスとか言っても信じて貰えないと思うけれどね」
アイテムバッグも結構高価なものなんだけれどな。このバッグは10キロ程しか入らないが、これだけで100万ゴールドはするらしい。
性能が性能だしな。1時間くらい歩いているとそこそこ大きい砦らしきものが見えてきた。あれが関所なのだろうか。
「身分証をだせ」
おうおう、結構無愛想だな。まあ普通こんなもんか。俺たちはそんな特別身なりが良いわけでもないしな。逆に町の門の衛兵さんが珍しい部類だろう。まあカンナのせいでもあると思うがな。
まあこの人はカンナの可愛さにひれ伏さないのだからなかなか強靭な精神の持ち主ではないだろうか?
「そちらのお嬢さんもお願いします」
あ、屈しやがった。すさまじい早さの手のひら返しだったな。手首取れないように気をつけろよ!
まあ特にトラブルがあるわけでもなく、あっさりとエルガレフト神国から出ることが出来た。国を出る前にもっかい襲撃をしてくると予想してたのになぁ。と思いながら歩いていたのだが……。
「ご主人様ちょっと立ち止まってください。この先のルートとなっている谷の周りを囲うように人が配置されています。恐らくは盗賊かと」
違う厄介事に巻き込まれた。にしても、こんな遠くからでも分かるものなのか。相変わらずカンナの索敵能力凄いな。
「分かった。どのくらいの人数がいるんだ? 危険そうならなにか対策を考えないといけないな」
「ざっと、30人くらいですね。実力的には私は大丈夫だと思いますが、ご主人様は囲まれるとちょっと危ないかもしれません」
結構大きい盗賊団だな。今の俺の力じゃちょっと強いくらいで全然無双とか出来るレベルじゃないから危ないもんなぁ。どうやって撃退しようか。神聖召喚魔術は魔力切れでぶっ倒れるしないな。あ、そういえば1個試してないのがあったな。そう普通のほうの召喚魔術だ。
「なあ、いい機会だから召喚魔術試してみていいか? 敵も間引けるし、いいだろ?」
「え? 今まで使ったことなかったの? なのにレベルMAXっておかしくないかしら?」
「まあ色々あってな」
今は説明が面倒臭いから適当に流しておくことにした。ここまで来たらもう全部ぶっちゃけちゃおうかなって考えてるしね。なにより仲間は必要だしさ!でもそれは後々ってことで今はスルーする。
「はぁ……全く規格外よね。ホント」
「それは置いておいてなにを召喚しよっかな〜」
初見じゃなにも分からないのでとりあえず鑑定するとするか。
召喚魔術LvMAX
獣や魔物などを召喚し、使役することができる。使役中は使役した対象が強さに応じてMPを消費し続ける。Cランク相当まで可能
なるほど、獣や魔物召喚して戦わせるのか。そんでもって、ランクとしては大体Cくらいの魔物を呼びだす事が出来るのか。
確かにこれを使われたら厄介そうだな。ただでさえCランクの魔物はなかなかいないから脅威だっていうのに人によっては何体も使役出来るからな。
ちなみにLv1だとせいぜいドブネズミを召喚するので精一杯らしい。だから超大器晩成型っていわれるんだろうな。にしてもどんな魔物を召喚しようかな。
「どんなのがいいと思う?」
「盗賊は谷の脇の森に潜んでいるようだから、狼系とかどう? 森の中だったら機動力は大事よ」
「そうだな。よし! じゃあ狼系にするか」
頭の中でイメージして呪文を唱えていく。不思議なことにスラスラと口から言葉が出てくる。
「いでよ! フォレストウルフ!!」
地面に魔法陣みたいなのが浮かびあがり、純白の光が辺りを包む。
「ゥア゛オオンオオン!」
ん?ちょっと今ニャ〇ちゅうみたいになってたのは気のせいかな??
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今日もしかしたらもう1話投稿する……かも?まあ時間があったらなのであんま期待しないでください笑
投稿するなら、リアンについてのお話を閑話としてだすかも……




