第四話 蘇る巨人
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日本皇国
首都 東京 首相官邸
ここは、日本全体の行政において必要不可欠とも言える施設であり、地下から屋上にあるヘリポートで構成されていた。国の方針やガイドライン、いかにして国体を維持するかを内閣の閣僚達または、意見がある議員や各省庁の官僚達が話し合う場所である。
日本が転移してから二ヶ月と三週間あまり過ぎた頃、官邸の地下では緊急会議が開かれていた。
内閣総理大臣たる西條をはじめとする閣僚達がテーブルを囲んで座っていた。
「総理、先日から情報に上がっていたボリシェ・コミン主義連合共和国とやらが最後通牒をイタリ・ローマ王国そして、我が国に対して突きつけてきました。通牒の内容は、服従か戦争です」
『谷岡秀平』防衛大臣の一言を耳にした閣僚達は呆れると同時に緊張した表情になった。
「……どうやらその国は我々や王国を軽くみているようですね。それよりも谷岡大臣、現地の状況はどうですか?」
「はい、ここからは防衛総省でまとめた情報です。国境付近に位置する都市や集落などの住民の方々はすでに国防陸軍や王国陸軍による誘導のもと、ナッポリや王都の方に避難したそうです。話は変わって、我が軍の動向ですが。
空軍が戦闘機や哨戒機を飛ばして二十四時間警戒態勢に入り、海軍は潜水艦隊が王国と共和国間にある公海で警戒に入っています。
陸軍は国境付近にある王国の要塞に布陣させ、いつでも撃てるようにしています。
最後に王国軍の動向ですが、自国内の警戒と我が軍との共闘を宣言しています」
「八十年以上前の満州で起きた惨劇を繰り返さないために、住民の方の避難や国防軍の早期展開を感謝いたします。
そしてついに、"あの巨人"が七十年以上の眠りから目覚めるのですか。偉大なる先人達の知恵と浪漫の結晶が王国に受け継がれることになりますな」
「ええ、そうですね。幻の超弩級戦艦が色丹島にあったとされる帝国時代の極秘海軍ドックから、いつでも使用可能な状態で見つかるとは思いもよりませんでした。
まるで侵略の危機に晒されている国のために蘇ったかのようです」
閣僚達の目には先陣をきって航行する"巨人"の姿やこれに撃滅される敵艦の姿が目に浮かぶのであった。
イタリ・ローマ王国
ベネティア
この都市は王国最大の港街であると同時に王国海軍最大の軍港でもあった。
毎日のように色とりどりの海の幸が商店に並び、それを漁獲してきた漁船などで賑わっており、夜中であろうがその賑わいは絶える事がないほどである。
さらに外国との貿易が盛んに行われ、外国人が多く訪れている場所でもあった。
しかし、今となってはその賑わいは無くなり、ゴーストタウンのように静まり返っていた。
街の様子も大きく変わっており、王国軍や日本国防軍の車輌や兵士達が毎日のように行き交っていた。
ここから北東部に位置するボリシェ・コミン主義連合共和国領のラコ半島に強襲上陸を仕掛けるために、国防軍海兵隊や陸軍そして、制海権や制空権確保するために海軍の空母が動員されていた。
共和国による強襲上陸や艦砲射撃に対抗すべくベネティアの中心部では、国防陸軍の88式地対艦誘導弾、02式地対艦誘導弾が約三十五台ほど展開し、港では約三隻からなる河内級強襲揚陸艦や合わせて四隻のRO-RO船やフェリーなどが大量の海兵隊員や車輌を載せていた。
他にも従来の兵器を装備した国防軍兵士達もいるが、そんな中でも特に目立ったのが原子力空母の武蔵である。
この空母武蔵には約九十機の航空機が搭載可能で、国際情勢や時代が変わるたびに改修が施され続け、艦載機は最新のものから何十年も使われ続けているものが配備されていた。
また、日本がこの世界に転移する前は世界から日本皇国国防海軍の象徴として世界中に知られている艦でもある。
そんな空母が共和国による王国侵攻を阻止するために、日本海軍を代表してやって来たのだ。
しかし、これを遥かに上回るものが王国海軍に配備されていたのであった。
「お、おい。あれってこの前見つかったばかりの戦艦大和じゃないか」
「そうだな……先人達の遺産が今ここで使われるのか」
空母からその姿を眺めていた国防軍の整備兵やパイロット達は、完全に虜になっていた。
雄々しくも美しく輝く艦橋と主砲はこれを象徴しており、艦橋から煙突を囲うように薔薇の棘の如く高射砲、対空機銃などが備え付けられている。
電探機系統は日本側による改修により、第一世代ジェット機、潜水艦程度なら軽く捕捉できるものが装備されていた。
極め付けは発動機関が蒸気タービンからガスタービンに換装され、馬力も二十八万馬力に向上し、速力は三十ノットに底上げされていた。
これらは、日本とイタリ・ローマ王国が共同で改修した結果であった。
ここまでするに至った経緯は、我々の世界が一九十八年にイギリスが世界初の空母を設計し、一九二〇年から二二年にかけて日本が前者より早く空母鳳翔を竣工させたのだが。
この異世界では空母という概念がなく、未だに大艦巨砲主義を主体とした艦隊決戦思想が強く根付いていた。
そして、これに目をつけた日本側は色丹島の極秘海軍ドックから発見した大和をイタリ・ローマ王国に引き渡したのであった。
「ヤマグチ提督、貴国の造船技術は素晴らしいものですな。この巨砲さえあればボ連(ボリシェ・コミンの略称)の艦船など一撃でありますな。しかし、よかったのでしょうか?我が国が貴国の技術力の結晶とも言える艦をいただいても」
戦艦大和改め、戦艦グランデ・ロマーナの副長、『イニーゴ・ムッソーリニ』少将は感慨に浸っていた。
「そう言われると、この艦も鼻が高いでしょうな。我が国では諸外国より早く航空主兵論や通商破壊や群狼戦術を主にした潜水艦運用に切り替えたのですが。こうしてみると、ムッソーリニ少将のように感慨を覚えます」
自身が指揮する空母武蔵と戦艦を見比べている初老の男、『山口辰馬』海軍中将はイニーゴに共感していた。
すると彼は座っていた椅子から立ち上がり、軍港兵舎の窓際まで行き、そこから見える大海原を見つめながら言った。
「提督、私は貴族の生まれですが。人情や活気が溢れるこの街には思い出があります。友人達やいとこ達と共に青春を過ごした日々や愛着などがあり、どうしてもこの街を守り抜きたい。何の罪のない人々を虐げ、革命や解放と称しながら侵略行為を平然と行う連中には指一本も触れさせたくないのです。我々はもちろん、ヤマグチ提督。是非共に戦っていただきたい」
イニーゴは自身の想いを山口に告げると、彼は静かに微笑みながら立ち上がった。
「かつて我々の祖先は前者とは違って綺麗事ばかり言って侵略行為を行わず。本心からの解放戦争を行い、勝利しました。ならば私はこれを尊重する形でぜひ共闘させていただきたい」
「感謝いたします。ヤマグチ提督」
二人は共に窓から見える戦艦を眺めながら現状の再確認をした。
「失礼します……ついに奴らが我が国やニホンコウコクに宣戦布告致しました。これより我が海軍は戦闘態勢に移行致します」
イニーゴの執務室に入ってきた彼の副官が宣戦布告を受けた趣旨を説明する。
「ありがとう。さて、提督参りましょうか」
「そうですな。我が海軍も腕がなります」
こうして二人は、自身が居るべき場所へと向かった。海軍力を増強し、尚且つ日本が参戦という盤石な姿勢をイタリ・ローマ王国は整えていたのであった。
次回は第四話を投稿する予定です。
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ここで作中のことについて触れますが、少し異世界らしさを出すべく。空母というものが誕生しなかった世界にしました。