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第二十四話 敷洲列島燃ゆる 中編

ご覧いただきありがとうございます。今回は初めて中編を投稿することになりますが、引き続きお楽しみください

イタリ・ローマ王国

ナッポリ 国防軍関係者居住地区

戦火と無縁になった王国にある国防軍関係者の日本人が居留する住宅の一角にある藤田中将の自宅では妻の華穂が見守る傍らアンナ、カリーナの三人がぬいぐるみで遊んでいる。

夫が再び前線に赴いたため彼女が養子である二人と一緒に暮らしているが、日本がこの世界に転移してからずっと一人でいたものの共和国との戦争が終結して人が家に来てからは個人的に楽しい日々が戻ったものの国の情勢としては複雑になってきている。

アンナとカリーナが無邪気に遊ぶ横にあるテレビで放送されているのは政治に関するニュースであり、アナウンサーが分かりやすくその内容を読み上げていた。


『本日開かれた臨時国会において改進党の大沢一男党首が中渕内閣総理大臣に対し、海軍の一部を大敷洲帝国にも派遣して両国の友好と強力さを誇示すべきだ。という派遣軍の追加を提案したものの中渕総理は国防軍派遣のバランスを見誤れば敷洲帝国国民の皆様のみならず接触未定の諸外国に対して混乱や動揺を与えかねないため外交面を強化した上で検討すると回答しました。次のニュースです……』


「あの人もだけど、軍も政府も大変ね……」


「お母さんどうしたの?」


「何でもないわよ。そうだ、クッキーが焼けたから三人で一緒に食べましょ」


「あーっ!おいしそうな匂いだ!お母さん早く早く!」


「わぁ!すごく美味しそう。お母さんありがとう!お父さんが帰ってきたらまた一緒に食べたいね!」


「ふふっお父さんは今、私達や皆を守るためにお仕事に行っているからそれが終わったらまた四人で一緒にご飯でも食べましょ」


「「そうだね。お父さんが無事に帰って来れますように!!」」


「二人とも良い子ね」


「えへへっだって二人が大好きなんだもん」


「私も大好き!」


華穂は休暇が終わった夫の身にも関わるニュースに関心を寄せるものの二人の娘を心配させたくなかったが、アンナとカリーナは焼けあがったクッキーを頬張りつつ母である彼女の雰囲気を理解していたのか二人で父の安全を祈る言葉を口にする。

母である彼女は嬉しくなって二人をまとめて抱きしめ、二人は揃って無邪気で愛らしい笑みを浮かべて母と父に対する好意の言葉を口にした。



大敷洲帝国

帝都・西京

宮都城

帝道派が決起と同時に西機関や特務警察、憲兵隊が監視対象とする腐敗貴族や財閥の幹部に対する襲撃及び殺害といった粛清を開始した事により帝国の宮殿にあたる宮都城周辺には近衛師団の歩兵や砲兵、装甲車輌が展開して慌ただしい雰囲気に包まれていた。

皇帝親政の実現を目指して決起したといえど、善悪の区別は徹底しているのか腐敗貴族と対峙する善良な貴族や政治家、状況を把握していない一般市民などの非戦闘員には被害が無かった。

現在の状況としては決起部隊の幹部を説得するために善良な貴族や政治家達が庁舎に呼ぶなどして政治方針での話し合いなどの穏便な対応をしているものの、一夜が明けて蝦南地方や東武地方などの腐敗分子を血祭りにあげた越智少佐率いる戦車隊が鉄道を降りて西部の帝都に向かっているほか、東部方面で決起に同調した部隊などを吸収しつつ決起部隊との対決を望み、攻撃態勢が整った部隊と睨み合いが続いている状況だ。


「粟林閣下、海軍の報告によると日本皇国陸軍から応援の部隊がもうすぐここに到着するようです。皇国軍の藤田中将から貴軍の仰せのままにという伝達がありました」


「そうか。是非、帝道派の連中を牽制するようにお願いできないか?背後からは我々が援護すべきだろう」


「しかし、帝道派なら暴虐なる共和国を三ヶ月で撃破した日本軍の強大さを理解して突っ込んで来ないと思いますが……」


「同じ言葉が通じる以上、それを見越して彼らなりの慈悲がある対応を願いたいところだな。到着して早々に貧乏くじを引かせる形になるが、彼らの健闘を祈ろう」


「承知いたしました。早速、海軍基地の方に伝達させていただきます」


敷洲帝国軍第一近衛師団団長の『粟林忠照(あわばやしただてる)』中将は国防陸軍の応援部隊がもう直ぐ到着することに喜びつつ部下に対して国防軍の後方支援を指示しつつも帝国の内情を憂い腐敗が魑魅魍魎とする現状に対して反逆を起こした帝道派といえど同じく国を愛する敷洲人であるが故に非常に複雑な心情を抱いていた。



一時間後、西京都

舞鵬海軍軍港

軍港に到着した第一機甲師団の装備はクーデター鎮圧ということもあり96式機動戦闘車や82式歩兵戦闘車といった快速車輌が多くを占めており戦車に至っては五輌といった極めて少ない編成である他、他の輸送艦からは警視庁外派機動隊と書かれた旗がフロントの旗棒に掲揚された機動隊の75式特型警備車(75式偵察戦闘車の警察機動隊内における呼称)や隊員達を乗せたバスなどが走り出していく。

日本から遥に離れた敷洲に重武装の警察機動隊が居る理由に関しては、奉州において馬からオートバイと自動車に乗り換えた盗賊団を鎮圧する目的の他にも敷洲帝国の警察組織改革の研究も兼ねた相互交流の一環として奉州に配属されており、海四楼において国防軍の仮設駐屯地が建つ前より奉州に派遣されて治安の悪い地区での盗賊狩りや他の犯罪による現行犯逮捕といった敷洲側の憲兵や警察との連携プレーといった活躍も見せている。

そんな機動隊も投入された経緯に至っては、帝道派の本体である反乱軍よりも旧式装備の提供が追いつかないまま軽武装で決起した敷洲国民連盟と腐敗分子に対する不満が爆発した上で決起に参加した一部帝都市民に対する鎮圧を担うためである。


「機動隊さんが協力してくれるのは心強いよね。しかも藤田中将の後輩の方が隊長をしている大隊だからすごい事になるよこれ」


「でしょうね。高校生の時に中将が率いていた走り屋兼不良狩りチームの副長をしていた方と聞いていますから、決起した市民団体も一瞬で片が付きそうですね」


「それでも相手の事情を理解しているのか機関砲を載せて殲滅ってよりも放水砲に改装されていますね。それに輸送艦の中で行われたミーティングでも機動隊装備の四割がゴム弾らしいので、最低限の配慮はされている感じになりますね。まぁ、俺達三人は帝国軍のガード役になりますから状況を見極めて攻撃というのが問われますね。その為に82式を大量投入したんですが」


黒田や小棚木、蝶野の三人が遠くから物珍しそうに藤田中将と機動隊の大隊長を務める『大上秀一(おおがみしゅういち)』警視正が談笑している姿を眺めていると、藤田がそれに気付いたのか三人に対して手招きしてしたので、駆け足で二人のもとに向かい敬礼を交した。


「三人が先輩のところの精鋭さんですね。会えて光栄です私は警視正の大上という者です」


「こちらこそご丁寧にありがとうございます。今回の任務では改めてよろしくお願いいたします」


「おう。シュウは基本丁寧やけど、怒らせたらド外道共を粉砕して来た戦闘力が炸裂するで~」


「そ、そんなことしませんよ!でも藤田中将の後輩に当たる方ですから、そんな気はしますけど」


「もう先輩、そんなの三十年以上前の話なんですから今と昔は違いますよ」


三人も二人に混ざって何気ない冗談を交わしながら会話を再開したが、大上の右頬にある大きな切り傷を見ると昔話が事実であるかのように目立っており黒田と小棚木も色々と察したのか穏やかに笑い低頭な姿勢を取る彼に粗相が無いようにしながら同じく低頭に接する。

そんな若干和やかなやり取りを経た三十分後にはクーデター鎮圧の為に黒田の10式戦車を先頭に第一機甲師団の82式歩兵戦闘車が、帝国軍の兵士を守るようにして走り出したのに合わせて大上が率いる大隊の装甲車とバスが帝国軍に引率される形で甲高いサイレン音を上げながら走り出した。




西京都百代田区

国道一号線

百代田区では、こちらでも善悪の区別が徹底されているのか帝道派の決起に同調した敷洲国民連盟系列の市民団体がクロスボウやゲバルト棒などの軽武装で腐敗した財閥が経営する百貨店などを襲撃して財閥に愛想を尽かした店員と共に略奪した商品を貧困層に流すといった良く言えば義賊的な行動を行っているが、総体的に見るなら立派な大規模暴動である。

そんな彼等はそのまま帝道派との合流を図ろうとしており、彼らが居る南部へ向かおうとするものの突如青と白のツートンカラーのバスと装甲車と共に帝国軍のトラックも現れる。


「軍の方及び日本の警察の方に申し上げます!そこを退くか我々と共に敷洲を変えましょう!それが無理ならあなた達を突破してでも敷洲を変えてみせる!切り込み隊、前へ!」


「敵さんが突っ込んで来るぞ!警備車は体当たりの後に群衆に放水せよ。ゴム弾装備班は発砲しつつ検挙班を援護し、支援班は帝国軍と共に催涙弾投擲を私の指示があるまで継続しろっ!!鎮圧開始っ前へ!!」


「「うぉぉぉぉぉっ!!」」


「敵車両横転!!前へ!前へ!LRADも鳴らせっ!」


「耳がっ!耳がっ下がれ!」


団体の長と思われる男性が機動隊や帝国軍に対して同情を求めるものの両者が沈黙したため切り込み隊の大型トラックが突破の為に走り出したが、大上の指示を受けた75式警備車が力強い排気音を上げながら強行突破を試みるトラックに衝突していく。大型車両といえど装甲車の破壊力は雲泥の差があるため、ボンネットが大きな音上げて凹むか重量に耐えきれずに破壊音を上げながら横転していくか、煙を上げて走行不能になる。

それに合わせて警備車の放水砲から大量の水が放たれつつLRADといった音響装置を鳴らしながら暴徒への距離をつめつつ、後部の乗降扉からゴム弾を装填した66式短機関銃(史実におけるH&K-MP5)を装備する機動隊員たちが後方から発射される催涙弾の援護を受けながらライオットシールドも盾にしながら発砲を開始する。

放水に加えてゴム弾の発砲、催涙弾という波状攻撃を受けて市民団体は瓦解しつつクロスボウを発射するか、大量突撃を図ろうとするもののなし崩し的にその場に倒れこんで行く。


「検挙開始っ!!突撃ぃ!!」


「うわぁっ!目が!放せぇ!!」


残った者達はそのまま手錠をはめられて行くか突き飛ばされる形でそのまま拘束されていき、百代田区における大規模暴動は鎮圧されていく傍ら後方支援を担当していた帝国軍の兵士達は本心から帝国を憂いて決起した彼らを殺めることなく拘束できたことに一旦安堵するのもののこれによりクーデター鎮圧が本格化し、短くも濃い時間の歯車が再び回転を始めた。

ご覧いただきありがとうございました。機動隊投入は西南戦争の警察抜刀隊をイメージしました。

次回は後編に当たる第二十五話を投稿する予定です。皆様のご感想や評価、ブックマークなどお待ちしております!


おまけになりますが、戦後の歴代総理及び議会の情勢を設定してみました。*国栄党は今後の展開を考えて憲政翼賛会という名称に変更しました。


昭和


石橋湛山(民自党)1950〜1954


大島浩(大政翼賛会)1954〜1957


山崎巌(大政翼賛会)1957〜1959


池田勇人(民自党)1959〜1964


峯信介(民自党)1964〜1967


加藤栄作(民自党)1967〜1970


浅沼稲次郎(日本民社党)1970〜1974


三木武夫(日本民社党)1974〜1976


大平正芳(民自党)1976〜1978


福井赳治(民自党)1978〜1981


田中角栄(民自党)1981〜1986


高曽根康雄(民自党)1986〜1989



平成


竹上昇哉(民自党)1989〜1992


宇根宗吾(民自党)1992〜1995


海崎敏則(日本民社党)1995〜1998


宮路紀一(日本民社党)1998〜2001


川野洋太郎(日本民社党)2001〜2003


西條知之(民自党)2003〜20XX


中渕恵二(民自党)20XX〜


20XX年現在の議席数


衆議院


民政自由党:310議席


日本民主社会党:75議席


憲政翼賛会:50議席


改進党:20議席


自由党:10議席


参議院


民自党:165議席


日本民社党:30議席


憲政翼賛会:25議席


改進党:15議席


自由党:10議席

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > 機動隊の装備に至ってはいざという時に備えて完全重武装で音響系装備は持ち込んでいない感じです。 既にエルラドのような音響装備は暴動の鎮圧に使われてるので持ち込まないというのはちょっ…
[気になる点] 暴動の鎮圧で放水銃とゴム弾で行いましたが、エルラドのような音響装置やマイクロ波装備は持ち込めなかったのでしょうか?現実では車両にも搭載可能ですが装備してなかったとかですか。 四つ足の…
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