第二話 陸軍大尉
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『黒田 浩一』陸軍大尉(二十五歳)は、国防陸軍第十一戦車連隊に所属する軍人であった。
彼は言う。
「俺は、自動車やバイクといった乗り物や銃とか戦車などの兵器が好きなんです。それに、自分のひいじいちゃんが帝国陸軍で戦車乗りだったこともあります。
あとは、この国が大好きですから国防軍の機甲科に入隊したんです」
彼は人が良く勤勉な人物像であり、彼の同僚や部下、上司に慕われていた。
二十五歳という若さで大尉にまで昇進できたのには、士官学校での成績の良さや彼なりの努力や知恵があったからである。
また、高校時代にバイクを乗り回し、大学時代には父親が乗らなくなったセダン車をフル改造して近所のサーキット場や峠で走り回るという事をしていたためか、運転技術も高く。
射撃の腕もそこそこであり、同盟諸国との合同軍事演習時に射撃手だった彼は、良い得点を叩き出している。
こんなこともあってか、戦車長を務めていたりする。
時が過ぎて、現在は異世界に転移した日本列島の隣にあるイタリ・ローマ王国という国に派遣されていたのである。
そこに派遣されて五日目。
転移してから初めての軍事演習ということもあり、黒田は張り切っていた。
演習には王国陸軍も参加しているが、国防軍が初めて本格的な演習を行うため、派遣されて来た王国軍兵士達は固唾を飲んで見守っている。
キャタピラの音を轟かせ、砂埃を巻き上げて走る国防陸軍の90式戦車は走行しながら一〇〇メートル離れている目標に向けて砲塔を旋回する。
『目標、十二時方向に在り。全車射てっ!!』
黒田の指示を受けた約二十輌の戦車の滑腔砲からHEAT-MPが甲高い音と共に一斉に放たれ、一,五八〇–一,七五〇m/sの砲口初速で目標を木っ端微塵にする。
戦車の背後から十二輌の91式装輪装甲車が現れ、戦車の数メートル先で停車した。
王国兵達が目を凝らして見ていると、装甲車の後部が開き、そこから十人の兵士達が小銃や機関銃、土管のような武器を持って飛び出して来た。
銃を持っている兵士達は、素早く伏せ撃ちの体勢になる。次の瞬間、彼らの持つ銃からありえない速さで弾が撃ち出された。
それは、イタリ・ローマ王国の標準装備である軽機関銃より速かった。
極め付けは、土管のような武器を持った兵士がその武器を構えると、何らかの方法で発射された砲弾らしきものが火花を散らしながら目標代わりにしている、王国軍で使用されていた装甲車を一瞬にして粉砕したのであった。
「銃弾すら容易に跳ね返す装甲車を一撃で……」
「隣に転移して来た国は、こんな素晴らしい兵器を当たり前のように量産し配備しているのかっ!」
「敵国じゃなくて良かった。そして、同盟国で良かった」
「この国が味方だったら、列強国なんてイチコロかな」
王国兵達は日本に対する期待や賞賛または、兵器に対して関心を抱いていた。
だが突然、東側の街道から二十輌の戦車が現れた。
その戦車は全て、黒田達国防軍や王国軍に対して砲口を向けていた。
「なんだあの戦車達は?急に砲塔をこっちに旋回してきやがって」
『大尉、俺らもあのT-34もどきに砲塔向けましょうよ。それも初期型もどきにキュウマルちゃんがなめられるなんて堪りませんよ』
「まて伊丹。指示があるまで動かすなよ。まぁ、気持ちは分からんでもないが」
黒田が、砲手の『伊丹 武雄』少尉をフォローしつつ注意を促す。
『それにしても気味が悪いですね。周りの王国兵さん達もピリピリしてますし』
「全くだ。何も起こらなきゃいいんだが。富田、一応旋回からの前進準備はしておけ、ついでに伊丹もいざという時に備えておけ」
『了解』
黒田は『富田 惣一郎』軍曹や伊丹少尉に改めて指示を出しつつ、外の様子をうかがう。
遠くの戦車はこちらに砲口を向けたっきり、変化がなく。あたかも警戒する王国兵達の反応を楽しんでいるかのようであった。
しばらく経って、別の王国軍部隊が到着したのだろう。後方からトラックのエンジン音が聞こえてくる。
すると、東側に現れた戦車達が車体を左に旋回し、森の中へと消えていった。
90式戦車の周りにいた王国兵たちも安心したのか、皆んなその場に座り込み始めた。
次に、日本国防軍イタリ・ローマ王国派遣軍・本部から無線が来た。
『こちら本部、第三中隊送れ』
「こちら三中隊、感度よし」
『現時点で演習を終了し、ナッポリ駐屯地へ戻れ』
「三中隊了解、何かあったのですか?」
『ナッポリから東に二〇〇キロ先にある国境付近で『ボリシェ・コミン主義連合共和国』という国の軍隊が大規模な軍事演習をしているらしい』
「もしかして、ソ連のT-34に似た戦車がいるとか情報に上がっていませんか?」
『ん?よく知っているな。そっちにも現れたのか。続きだが、何発か王国の国境線スレスレに着弾している。まるで日ソ戦争の前触れのようだ。共同で牽制をかけるため、一時帰投されたし』
「確かに。では、これより三中隊はナッポリ駐屯地に移動する」
こうして、黒田達国防軍は演習場から南に二五〇キロメートル先にあるナッポリ駐屯地に帰投したのであった。
次回は第三話を投稿する予定です。
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