第十六話 リーガ島上陸作戦 後編
ようやく後編が出来ました_:(´ཀ`」 ∠):
大変長らくお待たせいたしました。引き続きお楽しみください!
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同じ頃、日本と王国の混成上陸部隊はリーガ島内に舗装された四車線分の道路を伝って街に向かっていると、混成部隊の先頭を走行していた海兵隊の82式歩兵戦闘車のヘッドライトが数十メートル先の人影を照らし出す。
不審に思った隊員の一人が戦闘車の後部ハッチから出ようとした途端、「待ってくださいや」とすぐ後ろを付いてきていた装甲車から民間軍事会社『義誠連合会』の会長であり、民間人従軍者のチームリーダー的存在の『国光武之』が静かに隊員を制止する。
「あっ国光の親分さん。あそこに突っ立っている相手は、急に銃をこっちに向けて発砲するかもしれませんし……」
「立派に正業を全うされている堅気さんに代わって手を汚すのがワシら極道の仕事や。なあに、ワシに何ぞあっても後ろに同行しているウチの若い衆や舎弟連中がワシに代わって報復を入れてくれるからのう。ちょっとあそこに居るのと話してくるだけやから兄ちゃんはここで待っといてくれや」
隊員は民間人従軍者である彼をもしもの危険から守るために一度は厚意を断ったものの、二十代半ばである彼に対して温和な姿勢を崩さない三十代後半の国光は愛銃のニューナンブM60を右手に持ちながら左手で若い隊員の肩を優しく叩いた後に一人、人影へと歩いて向かって行く。
「若造っ!!そこで止まれ!!」
「言われんでも分かっとるわい。爺さんアンタ、次にそのまま今ワシが持ってるチャカを下に置けって言うつもりやろ?ちょいとチャカを使うた悪ふざけをしたくて来たんや」
「口が達者な若造だな。これくらいしなきゃ面白くないだろう」
数メートル先に居た人影……リーガ島の市長のジェマイティスが国光の一言を満足そうに受け取ると手に持っていた携行缶に入っているガソリンを自らの身体に浴びせる。
「流石は民衆思いの良い市長さんやのう。あんたがこの賭けに勝っても負けても絶対に島民の皆様には悪いことはせん。ただし、勝ったらワシはアンタの言う事を聞いてやってもええと思っとる」
「異国の……それも別の世界から来た若造が達者な口を叩きやがって。吐いた唾を呑むなよ……その下品な賭けに乗ってやる。その銃をよこせっ!」
ジェマイティスは敢えて一発だけの銃弾を入れていたニューナンブを国光から受け取ると、弾倉を勢い良く回して深く深呼吸すると躊躇することなく引き金を引いたものの、運よく銃弾が発射されなかった。
国光もそれを見てニヤリと笑うと同じ調子で弾倉を勢い良く回して躊躇なく引き金を引いた。
「爺さん。アンタは運の良い漢やな……何でも言う事を聞いたるで」
「………どうやらお主たち二ホン人の噂は信じたほうが良さそうだな。この街道をあと十五分進むと、リーガ島の中心街だ。既に武装解除の指示は出しているからそのまま街に来てくれないか?」
「爺さん。ワシらの事を信じてくれるんか?」
「殺すならワシの事をとっくに殺しているはずじゃ。それにもう共和国の見え透いた嘘っぱちのプロパガンダ何ぞ信用できんからな」
こうして国光による自分の身を顧みない賭けとそれに乗ったジェマイティスとの奇妙かつ大胆なやり取りを経た後に混成上陸部隊は中心街入りし、無事に非戦闘員の保護が行われたのだった。
この世界における日本の民間軍事会社の四割はヤクザ……即ち史実でいうところの暴力団が業界内を占めているものの、史実と違って日本が敗戦して第三国人と呼ばれる不良外国人が都市で跳梁跋扈しなかったことと一九四三年九月に第二次世界大戦が始まる数年前から国家を主体に差別解消政策や国家機構や司法による管理下によって被差別階層の者たちが多くいるヤクザの中でも博徒と呼ばれる部類が生業とする賭博が限定的に認められたことや、ヤクザが正業を持つことを推進した政策も差別解消の一環として行われたことから一般社会や善良な市民を恫喝し、恐怖させる暴力団化することが無くなった。
そのためこの世界の日本では現在、所謂ヤクザ組織と呼ばれる団体に属する人数は三万人前後であるもの八割が民間軍事会社に従事し、残る二割は司法の管理を受けた元来からの限定的な職を生業としている。
しかし、史実における暴力団対策法に類似する法律として組織犯罪対策法、通称・組犯対法が成立している。
リーガ島北部・共和国軍避難用水路
リーガ島の北部には万が一のための避難用水路が設けられており避難用の潜水艦が停泊しているが、これも上陸作戦が決行される以前から日本側が有人の潜水用いた偵察は勿論、OOZ-5の偵察仕様といった無人潜水機を水路に侵入させた上での強襲シュミレーションを重ねたこともあり、共和国軍の混乱を突いた今がチャンスだと言わんばかりに先の第六ラグエリ強制収容所解放作戦で活躍した王国軍近衛竜騎兵隊と特殊作戦群の混成部隊が複合艇で水路から突入する。
水路の中は大型の潜水艦が通行しやすいように掘削されたのか、複合艇でもやすやすと通過していける程の広さだ。
仄暗い水路の奥深くにある岩盤を削り出して作った停泊地の横には、SC型に酷似した潜水艦が停泊している。
隊員達が複合艇を止めると、降りた隊員の一部が暗視スコープ付きのガスマスクを顔に装着し、催涙グレネードを潜水艦のハッチを開けて艦内に投擲していく。
間髪を入れずにサプレッサーを付けた9mm拳銃を構えた数人の隊員達が艦内に突入していくと、艦内から悲鳴や呻き声が聞こえて来る。
それから潜水艦内に突入した部隊が戻るまでの五分間に本丸である島内総司令部を地下から制圧していくための突入準備が完了して潜水艦を制圧し終えた隊員達が戻って来ると、一斉に57式7.62mm小銃を手に取る。
本作戦において、日本国防軍側が7.62mm弾の小銃を使用している理由に至っては、イタリ・ローマ王国が日本から提供された技術を基に三点バースト式の王国軍M38小銃(7.62mm弾使用)が銃弾の共有化を図るために量産され、先行で竜騎兵隊に配備されているからだった。
全員が揃うと同時に、各々の隊員が小銃を手に持って数メートル先にある階段を駆け上がる。勢い良く駆け上がった先では混乱した共和国軍兵士達が地上に向けて走り出していたものの、背後から突くようにようにして通路から銃弾を撃ちこんでは撃ち倒したり、銃剣突撃してそのまま突破を繰り返しながら敵勢力を徐々に地上まで追い詰めていく。
「カルロ、危ないっ……!」
今回もタッグを組んでいた相馬とカルロが狭い渡り廊下の十字路に差し掛かった瞬間、小銃を構えた兵士と鉢合わせてしまう。敵の方が早く気付いたこともあり、小銃を構えて待ち伏せていた。
彼女はこの一瞬で敵の小銃の銃口が隣を走っていたカルロの頭部向けられている事を見抜いて右手で彼を逃すようにして押し出しすが、敵から合計で三発の銃弾が発射された。
この時に左腕に一発と右腹部に一発が命中して貫通し、最後の一発は命中しなかったものの左太腿を掠めた後に大きく倒れ込む。
「何するんだお前っ!!」
大事な人間を傷付けられたことで動揺する気持ちを抑え込んで持っていたM38小銃を構えて彼女を撃った敵に対して銃撃する。
一斉に発射された三発の銃弾が、敵にめり込んで悲鳴を上げる事なく後ろに倒れ込む。
まだ息がある彼女に対して敵は頭部に三発の銃弾を受けたこともあり額に風穴が空いた他、脳の一部が額から垂れ出している。
「大丈夫…?左肩とお腹に二発だけど、両方とも銃弾が貫通しているわ……」
「あぁ……大丈夫です。一旦引きましょう!!」
彼女の出血を抑えるために応急手当てを施して肩を貸してその場から脱出しようとするが廊下の奥にある階段から十数人程の足音が聞こえて来る。
「カルロ、逃げて……っ!」
「そんなの嫌ですっ!アイツらの残忍性を考えたら置き去りなんてしたくない。だったら、少しでも大事な人の側に居て弾丸とこの命が果てるまで動く事が、王国軍人としての務めであることですから……」
相馬はカルロを敵から逃がすために自分から離れようとするが、逆に彼は首を横に振って彼女を置いて逃げることを拒否する。
彼はそのまま彼女が持っていた57式小銃や持っていた複数の弾倉を手に持つと、装備の一つである22mm対装甲車小銃擲弾を差し込んで階段から降りて来た十数名の敵兵士に向けて発射する。
小銃から発射された擲弾はそのまま宙を舞って銃を構えようとした敵兵の前で炸裂し、彼らの悲鳴と同時に煙が長い廊下を覆いつくす。
「お前らが……悪いんだぞっ!」
目の前を煙が覆っている中でもカルロは小銃をフルオートで発砲し続け、弾倉一個分を撃ち尽くすと再び小銃にリロードし終えるとそのまま単身で歩み始める。
彼が目の前の階段付近まで来た時には煙に覆われて気付かなかったものの、最前列の敵兵の身体から臓物が飛び出した状態の亡骸や階段の方の息のある敵兵が身体に擲弾の破片が刺さった状態でも這って逃げようとする光景が目の前に飛び込んできた。
今のカルロには彼らに対する同情の余地などなく、階段を登りながらホルスターから拳銃を抜いて一人また一人と頭部を撃ち抜いて息の根を止めていく。
彼がこの短い時間で派手な行動を起こしたことにより、先程よりも多い規模の敵の足音が聞こえて来たもののお構いなしに再び小銃擲弾銃口に差し込んだ直後に階段から勢い良く飛び出すと同時に敵に向けて発射し、命中させては炸裂した直後に容赦ないフルオート射撃を浴びせる。
「援護するぞ!バローネ曹長!」
「……」
カルロの存在に気付いた味方の隊員達が追い付き後ろから射撃援護を開始したが、完全に目の前の殲滅対象と化した敵の頭部に容赦なく銃弾をめり込ませていくことに夢中なのか発砲を続けている。
地下フロア中に途切れ途切れで鳴り響いてきた銃声が完全に止む頃には、平常心を取り戻して目の前に広がる惨い光景から目を背けたくなるほどだった。
―ここまで自分一人でやったのか―
援護に駆けつけてくれた隊員達がよく頑張った。と賞賛の声を掛けて来るものの未だに自分の手でここまでやったという事実が呑み込めずにいたが、以前の収容所解放作戦とは違って敵も銃火器を持って自分達に危害を加えかねない相手だから仕方ない事だと言い聞かせて無理矢理乗り越えるしかなかった。
何せ、彼にとって大事な人間である相馬の身を案ずる事が脳内の殆ど支配していたからだった。
その後日本側は重軽傷者こそ出したものの死者を出すことなくリーガ島を制圧し、無事に島民の解放にも成功した。
なお、残る二つの島にも海兵隊や特殊作戦群を上陸させたうえで浸透作戦を図ったこともあり、数時間後の午前五時には制圧が完了していたのだった。
三日後・カルロの自宅
合計で三発の小銃弾を身体に受けた相馬は、上層部の指示によって王国の首都郊外にある町のカルロの自宅で療養していた。
大胆にも思春期真っ只中であろうカルロの自宅で相変わらず際どい服装で二人分の広さがあるベッドに寝かされているがいい匂いが、彼女の鼻に入ってきて自然と目が覚める。
彼女が視認した先には自分の為に作ってくれたと思しき玉ねぎのスープやミートソースが真ん中に乗ったミートパスタが置かれていた。
そのすぐ横では彼女が日本から持ち込んだタブレット端末を借りてイタリア語訳された日本の書籍を読み始めた彼の姿が目に入った。
「いつもありがとう。今日は何の本を読んでいたの?」
「えっと……一人の男の子が愛する女の子の為にその子の舎弟として支えてあげるお話です!その……戦車が戦争の道具でなく。大衆に慣れ親しんで競技として使われている世界のお話でして」
相馬が中学生から高校生の間に連載され、アニメ化もしていたいわゆるラブコメ作品をカルロが興味津々な表情で読みふけっていた事に少し驚いた。
それだけではない、この作品は今の二人の状況に似ているシチュエーションが存在するのも見どころの一つだった。
しかし、今の彼女にとってその事よりもカルロが負傷して復帰に時間が掛かる自分の為に献身的に支えてくれることが嬉しくて仕方が無かった。
「言われた期間までゆっくりしてくれても構いませんよ」
話ながら食事を終えると、彼が薬を飲ませてくれたり傷を綺麗にする消毒液や良く効く傷薬を相馬の身体に塗る。
以前の解放作戦のショックが嘘のようにメンタル的にも成長したカルロを見てさらにソワソワした気持ちと嬉しさの気持ちのパラメーターが上昇してくる。
「………ねえ、カルロ」
「どうしました?シオリさん」
「今日も一緒にお昼寝してくれるかしら」
「それは、あと一巻読み終わるまでまってくださ………んっ」
「そんな事言わないの!今度は私が甘える番なの♪」
「あ、あ、あ、アレって甘えてたの内に入るんですか……って寝てしまった。僕も眠気が……シオリさんに抱きしめられると最近落ち着くような……」
カルロは続けてタブレット端末の書籍を読み続けようとしたものの、彼を抱き枕にしたい相馬によってベッドに引き込まれてしまいそのまま抱き枕にされるようにして抱きしめられるが、彼女に対してどこか温かみを感じながら二人で白昼の眠りにつくのだった。
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