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第十五話 リーガ島上陸作戦 前編

ご覧いただきありがとうございます!

気付けば前回の投稿から四ヶ月です(( ;゜Д゜))

今年もよろしくお願いします!

ボリシェ・コミン主義連合共和国

中核都市・デオッサ

デオッサは共和国の東部に位置する港湾都市だ。日本やイタリ・ローマ王国、大敷州帝国などと開戦していたものの艦砲射撃による軍港や都市機能の破壊、空爆による攻撃といった被害を受けていない。

なぜなら戦時中の不安に耐えかねた住民達の気持ちに応えた共和国陸海空軍がいよいよルシア臨時政府軍が目前まで来ているといったタイミングで臨時政府軍側に合流したのだ。

さて、そんな住民達は現在様子を見ながら先の時代の敗北者であるはずの皇族をはじめとするその他の貴族達の帰還を受け入れるのだった。

デオッサでは帝政時代に善政を行っていた貴族が支配していたが、突然起きた革命の際に都市の無血開城を行い帝政派住民の身柄の安全の保障と共に自分達貴族に付き従う住民達と共に大敷洲帝国領の樺島へ移送された。

これと同じ動きがムルモンスクやゴルバ・グラードといった現在自由革命軍が拠点とする都市の殆どが前者のように帝政時代に善政を執り行っていた貴族が支配していたこともあってかすんなりと臨時政府軍や自由革命軍を受け入れたのだった。

こうして日本皇国国防軍やイタリ・ローマ王国軍、大敷州帝国軍などと一緒に戦線を狭めて来たことで今日ついにここデオッサで日本皇国軍とイタリ・ローマ王国軍が合流した。


「私が母なるルシアの大地から引き離されている間にこんな事があったとは……社会党め自分達がこの世界の神にでもなった気なのか?」


ルシア臨時政府軍の司令部代わりに使用されているデオッサ市役所の応接室でこれまで共和国政府が行って来た人体実験や非ヒト種に対する冷遇といった所業をまとめた資料の冊子に目を通す中年の男……『バグラテオン・アレクノフ』は全く覚えていない赤子の頃に、この地を離れて敷州帝国の樺島に身を隠し、自身を慕い担ぎ上げてくれる皇族支持派の人々の期待に応えるようにこれまで敷州帝国軍と共に奉州と樺島でアレクノフ朝復活の日々を待ち続け鍛錬を重ねて先駆的な政治思想について記された書物を数え切れないくらい手に取り続けついには自らの指揮のもと臨時政府軍を率いて敷州帝国の地からこの地へ来るまで困窮した国民やこの一方的な破滅戦争に対して迷いが生じていた東方方面軍の者達を説得して首都・クワモスの近郊にあるこのデオッサの地にやって来たのだが、ここで初めて目にした現共和国政府が帝国時代の腐敗度合いと何ら変わりない状況である証拠を突き付けられて自民族の一部が低俗化したこともあってか失望で呆れかえっていた。


「社会党の奴らは国民に自分達が行っていることは正しいもしくは必要悪なんだと教え込んで来たことが生んだ最悪の結果だと思います。その異常性に気付いた者は消され、良き者から死んでいくという身勝手な事を一刻も早く止めなければなりませんな」


「ジュコーフ大佐やその異常性に立ち向かおうとする同志が増えて良かったことで希望が保てます。しかし、愛しきクワモスはジュガーリンに対して狂信的な者達が取り囲むようにして守りを固めていることから血を見ずして再び戻るには不可能に近いという事でしょうな。やはり数百年間無傷であったクワモスの地を力ずくにでも奪い返す手しかないのでしょうか」


バグラテオンはジュコーフという同じルシア民族の血が流れる戦友と共にクワモスに攻め込む或いは、軍部や住民にたいする懐柔といった切り崩し工作で社会党の連中を一気に仕留めるか、と考えてみたものの前者の選択の方が現実的で数百年間破壊されたことがなかったクワモスの地を自分達の手で血と瓦礫の山にしかねないことから胸が締め付けられる。


「しかしながら仮に首都を取り返せたとしても他の連中が中洋海のバルトニア諸島に逃れて他国には、被害者面という二枚舌で膠着させて我々を完全な悪人に仕立て上げる肚でしょうな」


「もともと中洋海の島々は一億人前後なら余裕で居住できる面積のほか農業に適した肥沃な土地が点在するうえ貿易にも適した土地でしたが、あの島々を取りまとめていたバルトニア諸国は今となっては社会党という寄生虫に乗っ取られて先住民族のバルトニア民族の方達に対する締め付けが続いている今、そのまま取り逃がしてしまえば今度こそ民族浄化の標的になりかねません。もしそうなってしまうならルシア民族史上最大の汚点となるでしょう」


これ以上一部の横暴なルシア民族が支配している地域の他民族に迷惑を掛け続けることにより犠牲が犠牲を呼ぶことによって自民族の子孫たちが流れ続ける血肉を利益に換えることを惜しまない吸血鬼民族と言われかない杞憂という名の毒蛇が二人のルシア人の心の中を這いずり回っていた。


「失礼いたします。ジュコーフ大佐、二ホンコウコク軍のフジタ少将がお見えになっております」


「そうか。フジタ少将、お入りください」


「失礼いたします。初めまして、ジュコーフ大佐ならびにアレクノフ皇太子殿下。お会いできて光栄であります」


「こちらこそ初めまして。ルシア臨時政府軍代表のバグラテオン・アレクノフです」


ここでジュコーフ大佐の腹心の一人であるチェパロア中尉を通して皇国国防陸軍第一機甲師団長の藤田誠也少将が一人で訪れたため、この膠着した状況を進展させるための助言者として迎え入れることにした。


「フジタ少将、わざわざ足を運んでくださりありがとうございます。只今、クワモス奪還についてアレクノフ代表と話し合っていたところです。我々ルシア人が解決すべき問題ではあるのですが……勝手を申し上げると、貴国二ホンコウコク側の意見を伺いたい所存であります」


「いえいえ。それはこちらも願ってもない事でして、実はもう作戦に関しては整っており後は臨時政府軍と自由革命軍の盟主たるご両名様に我が軍が提案する作戦の賛同を得たくて参りました。是非、我が国も伝統あるルシアの地を吸血し続ける共和国社会党という名の寄生虫を排除する為にも両軍の犠牲を無くしたいと考えております」


藤田は一台のテーブルを隔てて座っている二人の間にある椅子に腰かける前に深々と頭を下げると、一つの書類をテーブルの上に置く。

二人が日本側が提案した作戦がまとめられた一枚の冊子を手に取り内容を確かめると、感心したのか静かに頷きながら納得した表情を浮かべた。


「ここまで緻密に作戦を練られていることはともかく……我々の犠牲を避けるために二ホン軍単独で首都周辺の要塞線を破壊しつつバルトニア諸島への撤退遮断ですか」


「撤退遮断は今が絶好のチャンスです。現在、バルトニア諸島の戦力が薄まっている所に我が軍の海兵隊が強襲を仕掛ければ一網打尽にする事が可能です」


「しかし、二ホン軍だけで問題ないのですか?共和国はあの島に寄生するかのようにここぞとばかりに監視網を固めています。仮に突破できたとしても先住民の方達を盾にして卑劣な攻撃を仕掛けて来るかもしれません。我がルシア民族に泥を被せないために動いてくれることは感謝しきれない事です。私は今嬉しい反面、二ホン人の人達に対して自ら蒔いた種を拾わせていることに大変申し訳なく感じております」


「そうですか……ご安心ください。決して我が軍の戦力を誇張して自慢する訳では在りませんが、持っている力で出来る限りことを実行し、この世界で流れる血を減らそうという思いから両軍に成り変わってバルトニア諸島の寄生虫となり果てている共和国軍を放逐したいと考えています。恐縮ですが、今回はご理解をいただきたいと存じます」


バグラテオンは藤田の謙虚かつ真摯な姿勢を見て日本人という未知の存在である民族は他民族であるはずの自分達のこれ以上の労力と犠牲を減らすために動こうとする考えに対して感心し続けている反面、自分達に何かできることは無いかと考える。


「……承知いたしました。貴軍の健闘をお祈り申し上げます」


「ご理解とご協力を感謝いたします。それでは、失礼いたします」


バルトニア諸島に点在していた国々は、ルシア帝国時代は領土でも無ければ敵国という訳でなかったもののボリシェ・コミン主義連合共和国が十五年前にジュガーリンが国家総帥の椅子に座ると同時に共和国の領土拡張の対象となり、抵抗する間もなく併合され少しでも反対の声を上げれば蹂躙された過去があった。

しかし、今度は日本皇国という国が共和国を切り崩すためにこの島を電撃的に制圧すべく上陸しようとしている。

無論、日本側としては敵の共和国軍の戦力が八十年近く離れていることもあってか高い確率で非戦闘員の住民を巻き込むことなく制圧作戦を展開することが出来ることが大いに期待されていた。




バルトニア諸島・リーガ島

共和国軍沿岸要塞

バルトニア諸島の共和国軍沿岸要塞の開口部から夥しい数の重火器が覗き込んでいる。

沿岸要塞以外にもこの諸島はハリネズミの棘のように隠された対空網に覆われており、空中艦なども集中放火に晒すことで一網打尽にすることができる。

しかし、共和国政府派の徹底抗戦の場としての意識が昂りすぎたこともあってか未だに日本の戦力を目の当たりにしたことがないバルトニア諸島に駐留している共和国軍の司令官は本土の戦況を見て味方を心配するどころか連戦連敗の味方に毒を吐いていた。


「ジュコーフの野郎に勝てないなんてどうなってやがるんだ本国の連中は……この俺が行ってやりたい気分だが、総帥閣下からここを任された以上、ここを維持せねばならんな」


「司令官、我が軍の防御は万全です。本土から引っ張ってきた改装列車砲で上陸を図ろうとする敵に対して榴弾の雨を降らした後に僅かに上陸してきた敵を沿岸部に潜伏している部隊で殲滅し、諸外国からの仲裁を受けて停戦協定を協議させつつ異世界からのよそ者を祖国から追い出す話が出来るまで持ちこたえるには申し分ないと言えるでしょう」


「それにいざとなれば、例の”策”もあるからな」


「そうですな。奴らには異民族やヒトモドキ共に甘く優しいという共通点が有りますから……たまたま戦闘に巻き込まれた住民としておけば我が国に対する批判は何とか避けることが出来ることでしょうね」


司令官と副官の策は、弱みに付け込むという戦略的には優秀な打撃を与える素晴らしいものといえるが、逆に日本皇国やイタリ・ローマ王国、大敷洲帝国の三ヶ国の怒りに自ら火に油を注ぐ自滅の策の一つとなるのだった。

当然、史実における第二次世界大戦期直前基準を持つ共和国の哨戒技術では日本の無人機による夜間偵察と昼間における有人機に搭乗する観測隊員による肉眼での偵察を兼ねた強襲シミュレーションの実施といった目を誤魔化すことが出来るはずもなく全て筒抜けであった。




リーガ島沖

王国軍第二近衛竜騎兵隊と国防陸軍の特殊作戦群の混成部隊は共和国軍の警戒網の中を金剛型イージス艦に護衛された河内級強襲揚陸艦や大隅級輸送艦から発艦したホバークラフト式の上陸用舟艇・78式特揚陸艇が兵員や装甲車輌を載せて、島内で最も警戒が薄い部分から浸透して上陸する算段だ。

上陸の妨害となりうる警備兵を引き付けるために海軍が予め得た航空偵察隊からもたらされた情報をもとに、猫を盾に張り付けるような感覚で住民を盾にすることをさせまい為に陸軍の上陸とほぼ同時のタイミングで河内級から発艦した84式特殊攻撃機改Ⅲ型(史実におけるハリアーⅡの性能向上型)がリーガ島の防空網の破壊を行った次に海岸線に布陣する共和国軍の守備隊に対して掃射を加えてから強襲揚陸艦に戻っていった。

その次に国防海軍の駆逐艦やイージス艦などから発射された巡航ミサイルが再び島内の軍事施設に降り注いでは爆発し、瞬く間もなく戦力が大幅に削られた。

日本や王国側からすれば目が腐りそうになるほど国家防衛の名の下に他民族を容易く兵器の一つとして用いる戦法を戦闘経過と共に目の当たりにして来たが、今回のリーガ島強襲に両軍の精鋭部隊を投入することでそこまで我々をコケにしたいのなら倍返しにしてやってもいいんだ。という日イ両軍の上層部が共和国を物理的にどやしつけることや共和国による暴政の根元の一つに打撃を加えることに主眼を置いた本来の目的もあった。

この隠密な計画による急襲を予測することが出来ないでいた敵にとっては寝耳に水といえる一撃であり、自分達の周囲を覆う土煙が収まってから目にした光景は上陸用舟艇から夥しい数の装甲車輌が飛び出してきて自分達に向かってくる。

すかさず応戦しようとしたものの、91式装輪装甲車に搭載されているRWS機能付きの自動擲弾銃や82式歩兵戦闘車(見た目は史実における89式装甲戦闘車そのもの)の35mm機関砲による掃射も合わさり、三十分も経たないうちに海岸部に展開する敵は殲滅された。

海岸部に累々と横たわる敵の屍を後に上陸した部隊は、次に島の西部に位置する市街地へと向かった。




同島・市街地

同島のある市街地では、突然の停電に見舞われて混乱に陥っていた。自分達を盾代わりにするはずである共和国軍が蜘蛛の子を散らすように姿を消したかと思えば唐突な停電が起こったのだ。

さらにその直後、島の四方八方で爆破音や銃声が鳴り響き、プロペラのない戦闘機がよく分からない飛翔体を島内の軍司令部がある方角に向けて発射したり、海の方から飛んで来たと思しきよく分からない飛翔体が再び軍令部に飛んで行ったりと見たことがないものばかりも目にする情報量の多さからただ立ち竦んでしまうばかりだ。

住民の中には日本と王国に対する関心がある反面、まだ本性を知る由がないためどうせ共和国に成り変わる恐ろしき支配者になるかもしれないという不信な考えもあり、現実に嘆く者もいたが意外にもその不安はすぐに無くなることになろうとしていた。


「おい、海岸の方からが何か聞こえないか?共和国軍の奴らが戻って来たかも知れないぞ」


「海岸や発電所の方がいっぺんに爆発した中で共和国軍の連中が生きて帰って来れるわけないだろ?取り敢えず敵意がない事を見せないと……」


「そうだな。女性や子供は隠そう。共和国軍なんてもう落ち目に決まっている。奴らから支給された武器を街の広場に集めろ!!」


住民達はお互いの身を守るために力での抵抗をする事で相手を刺激するよりも共和国軍から持って戦うようにと言われた簡素な造りの銃や弾薬、武器などを街中から集めて街の中心にある広場に山積みにして集積していく。

そんな住民達を取りまとめていた市長の『アンタナス・ジェマイティス』は、共和国軍から支給されていた手榴弾を改造した自爆装置を身体中に巻き始める。それに気付いた住民の一人が彼に対して声を掛ける。


「ジェマイティス市長。貴方まさか……それ」


「いざという時は、これを押すぐらいの覚悟は出来ている。こんな老いぼれの命でこの島の島民の命を保障されるなら容易いものだよ」


「そんな。市長には生きてもらわなくては困ります!命なら我々も惜しくありませんっ!!」


「いいや。これ以上若くて将来有望な君らの血を流すわけにはいかんのだよ」


ジェマイティスは、自爆用の装置を体に巻き付けた次にガソリンが入った携行缶を手にする。住民達の引き留めに応じることなく起爆スイッチと携行缶を持って国防軍が来るであろう街道に向かってただ一人、歩み出したのだった。


ご覧いただきありがとうございました^ ^

次回は中編or後編の第十六話を投稿する予定です!

皆様の評価やご感想、ブックマークへの追加などお待ちしております!

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― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりです。更新待ってました。続きが読めて嬉しいです。 >アレクノフ朝 デオッサが廃墟にならなくてよかった。戦略的にも首都侵攻に影響しますし。敷島に流れていたのですね、納得です。 >…
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