君の髪
君シリーズの三作目です。
君ってさ、いつもフードをかぶっているよね。
季節関係なしにずっと被り続けているね。
フードがもごもごと動くから気になって仕方ないんだよね。
唸り声もあげるから余計に気になるんだよね。
僕は顔が動かなすぎるって? 顔が適当だし、いつも同じ表情だって? そう言われても困るんだけどね。なにせ、僕はそれ以外の表情ができないんだからね。
何を考えているのかもわからないって? 確かに察しずらい表情ではあるかもね。でも、そんな僕に告白してきたのは君なんだよ?
君と付きあえるのは僕だけだって? 僕以外の者とは会話も成り立たないだって?
確かにそうかもしれないね。僕なら君と真正面から向き合えるからね。
次のデートの時にはフードはかぶらないでほしいな。なぜかというと君の髪を覚えていないからだよ。
フード姿の君ばかり見ているからね。
フードを被っていなければ、君の髪がどんなだったかすぐにわかるからね。
どうして怒っているんだい? 愛しているのかだって? もちろん僕は君のことを本気で愛しているよ。
髪を覚えていないのにって?
だから、君の髪を思い出すために、次のデートはフードなしでお願いしたいんだよ。
今からもう一度デートをしようだって? 別に構わないけど。
フードは脱いでくれるのかい?
脱ぐから早くデートしようだって? せっかちだな。
それじゃ、フードを脱いでくれるかい?
ああ、そんな髪をしていたね。
すっかり忘れていたよ。
やっぱり君はそっちの方が似合っているね。
ねぇ、僕の愛しいメデューサさん。
――えぇ、私の愛する案山子さん。
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