百聞は一見に如かずされど、わからないものはわからない
手を抜く以前に手が出せないだろうと言うのが、心境だがもちろんそんな事を馬鹿正直に話すこともなく、しばらくすると南野社長が戻ってきた。
「お待たせしました、お預かりしたスマホに、あるアプリを仕込むのに時間がかかりました」
そうは言っても返されたスマホの画面には、特に変わった様子はない。
そうかといって、スマホ本体がかわったという事もなく、間違い探しの間違いを見つける難しさに、首をひねるような、何が変わったのかわからない。
「キラキラデイズのバージョンが、通常では出回ることのないバージョンになっています」
言われて、キラキラデイズを起動させて、バージョンの確認をしようと思ったが、そもそもバージョンなんて覚えてなんかいないので、結局のところそれらしく頷き促した。
「そのバージョンで使えることができる様になったのは、空想再現システムとフェイバリットシステムです」
「空想再現システムってなんですか」
「簡易なマニュアルの一部です、どうぞ」
各々に1枚の用紙を渡されるが、パソコンの文字の羅列に目がシバシバしてくるが、目を通さないと困る様なきがしてくると思うと読む気がするというものだ。
空想再現システムとは、空想生物が住んでいる空想的な世界を再現する
事で、この世界のスポットと空想世界と繋がりやすくなり、空想世界の再現が高ければ高いほど、空想生物は、その力や影響を現実世界に大きく及ぼすことも可能であり、それを利用して制御していくシステムです。
「 お分かりいただけましたか」
真剣な顔から目をそらすと、魔法少女キュアトロールも、明後日の方向へと目を逸らしていた。
結城先生の方は見なくとも、きっと同じようなものだろう。
「井上君は、おバカですねぇ、ゲームばかりやっているから、そうなるんですよ」
「結城先生、まさか理解したんですか」
「まさか、一々理解する事を諦めているのよ」
それでなんで、堂々と僕を貶す事ができるんだよとも思ったが、南野社長が、咳ばらいをしたため、その言葉を呑み込んだ。
「ともかく本来そのシステムにより、空想生物達の影響を利用し契約して、現実世界の創作物は作られていき、空想生物達の影響力で、ヒット作が生まれたりするので、いかに環境を整えることができるかが業界では注視されるのですが、そのアプリを使い、井上さんは空想世界を再現した空間で、望んだ活動が可能になります」
「最後だけわかった、つまりその空間で魔法少女的活躍が出来るんだな」
「そんな感じよね」
説明の最後しか聞いてなかったんじゃないだろうか、この二人。
まぁ僕は、結城先生と違って薄っすらと理解したが、結城先生を馬鹿にする様な事をする事はしなかった、先生と違って。
「フェイバリットシステムってなんですか?」
「あーまー 絆で奇跡が起きやすくなります、格上相手に勝てちゃったりするシステムです」
説明が適当すぎる。
いや、この二人に説明するのを諦めたようだ。
「なるほど」
「わかりやすい、井上もそうだろう」
「あーそうですね」
「三人ともお分かりいただけて、何よりです、そのアプリを使って実技試験を行います」
南野社長が何処となく疲れたような声色なのは、決して気のせいではないだろう。