幸せの証明
手持ちのスマホで結城先生に連絡をする。
しかし、連絡がつかない。
近くて見晴らしがよくて、今からやっても犯罪になりにくい場所は、学校の屋上ぐらいなものだ。
どうせ学校でグタグタ、この時間帯だって何時も暇に暇をつぶして下校時間をとうに過ぎたってダラダラしているくせに、こういう肝心な時に、捕まらないことが多々ある。
現状もそうだ、何度コールしても出ない。
「おい、また来たぞあの押し売り」
「ちょっと撃退しておいてください」
僕の焦る気持ちなどどこ吹く風のように嬉々として絶好の餌を見つけたピラニアのように、いやそれともあぁいうのを猪突猛進と言うのだろう。
とりあえず迎撃をキュアトロールへと任せて、何度もコールするが全くもって繋がる気配がない。
キュアトロールが向かった場所から少々派手な音が出はじめて、やがてキュアトロールの高笑いとともにおさまりはじめた。
もう結城先生が捕まらないのはしょうがない。
これ以上体力以上に気力を消費するのもどうかと思い、必要な事だけ短くメールをした。
屋上に青いペンキもって集合。
見てくれれば御の字で、見てくれなければ、その時はその時だと諦めよりな、決断ではあった。
一分もしないうちに了承の返事が絵文字とともに返事がきたのには、脱力しそうになるし、とっとと電話に出て欲しい。
「おいこっちはひとまず終わった」
「じゃあ後は学校の屋上まで走る」
とりあえず、先生を信じてあとは、これでどうにかなる事を信じて学校の屋上まで走る。
息苦しさとか不安で振り返って僕自身の考えの正しさの根拠を見つけ、足を出す気力に無理矢理組み換える。
学校の階段を登るころには、ざけんなよと誰に対してかわからない怒りでかけあがる。
誰にも会わないように祈りながら、上手く言ったら家にかえってお風呂に入って好きなもの食べて、癒やしシンデレラやかぐや姫のカードを穴が、空くほど見てダラダラしてやる。
後ろからついてくるあの押し売りの少女の足音を聞きながら、屋上のドアを開く。
「キュアトロール」
「わかった」
階段を上がって屋上に到着するばかりの押し売りの少女を、階段転がり落とすようにキュアトロールは飛びかかった。
黄金の女神像は廊下に散乱し、押し売り少女は見事に階段下の廊下に叩きつけられ脳震盪とか心配になるが、これまでも無事であったし、何とかなると思いたい。
キュアトロールはトドメとばかりに足で小突いているが、ピクリともしない事を確認し、屋上へと戻ってきた。
「じゃあ仕上げお願いします」
押し売り少女が気絶し少しあとに、屋上の上空をくるくると旋回している鳥を指差す。
半信半疑ながら、屋上に結城先生がどこからか用意してくれた青いペンキ缶をキュアトロールへと差し出す。
キュアトロールが上空を飛び回る鳥をめがけて遠心力タップリに振り回し、あらん限りこ力で投げ出した青いペンキ缶は見ていて爽快なほどに勢いよく鳥に命中し落下していく、その中に詰まっていたペンキは鳥と屋上を盛大に青い色に染めた。
その青い鳥を拾い上げ、押し売りの少女のもとに行く。
すでに少女の姿は何処かへと消え、黄金の女神像は色合いはくすんだ銅像へと色を変え、ボロボロと崩れている。
青い鳥も僕の服を汚したまま、消えていった。
「幸せの青い鳥は近くにいるってことか」
「まぁ青い鳥ってかカラー鳥だけどな」
僕とキュアトロールの呟いた軽口は、廊下に響きようやく終わったのだ。