ランナーハイの幸せ
幸せを考える。
哲学者じみている。
だいたい哲学者が幸せを掴んでいるのかと問われれば必ずしもそうではないだろう。
幸せとは何かと考えるのは得意でも、幸せになれているのかと問われれば、それはまた別の問題である。
役にたちそうもない哲学者はおいておいてひとまず幸せを考える。
いや、考えても結論が出なくねぇと自嘲したいが考えなければ、この状況から抜け出せないだろう。
隣を獰猛さを出して走っている暴力的な魔法少女に知恵をだしても多分ロクなことにならないだろうう。
哲学者のほうが、今のこの状況ではまだましな解答をしてくれるだろう。
さて、僕は哲学者を越えるような解答を持っているだろうか。
街中を素っ裸で走りながら答が見つかったとはしゃぐような哲学者をこえるような解答ができるだろうか。
いや、あれは数学者だったけ、確か理系だったけ、いやでも裸で走り回るなら体育会系よりな文系のような気もしてきた。
・・・現実逃避だ。
どうにもならないからどうしようもなく関係ない事に考えがいってしまう。
押し売りの少女、不幸な僕が幸せになるには女神像を購入すればいいという。
そうすれば幸せになれるというが、幸せになれそうもない。
興味本意、好事家なんかじゃなきゃ手を出さないだろう女神像。
幸せにしたいのか、不幸にしたいのかわからない。
いやいや、そうじゃない。
もっと根本的に問題を考えてみたら、僕は追いかけられているのは何故だろうか。
もっともいえば、彼女が殴り倒されたのにも関わらず、彼女は何故僕らに追いつけることが出来るのだろうか。
勘とかだったらどうしようもない。
だけれども遊園地のアトラクションのように何かしらギミックがあるならば、それをどうにかこうにかすれば、この状況から抜け出せるはず。
「何とかって?」
「わからない」
「井上そういうのを机上の空論っていうんだ」
「わかっているよ」
「これはあれだな、グランド走ってこい」
「今も走っているんだよ!」
「じゃああれだ、真っ裸で走れ」
「変態じゃねぇか!」
答えも見つかってもいないのに真っ裸で走り回る気もない。
いや、答えが見つかったとしてもそんなはしゃぎかたはしない。
「なんだって裸で走り回ったんだか」
「何だ井上、お前が過去の赤裸々な体験」
「ちげぇよ、大昔の哲学者かなんだったかが答えを見つけて喜びのあまり真っ裸で街中を走り回った学者の話だよ」
「そいつは幸せな人生だったんだろうな」
「そう?」
「自分の答えが見つかってそれが喜びだったんだから、幸せだろう」
「なるほど」
「真っ裸になるのは理解できないけどな、いやそれほど幸せを感じたんだろう」
なるほどと呟いてみた所で彼が幸せかどうかはわからない。
普通誰が見ても聞いても端からしたら気がふれたとしか思えない。
ん?
「あぁそうか、そういう事か」
「どうかしたか井上」
「いや、彼女が追いつける方法がわかった」
何の事はない、端から見ていたのだ。
端からみたら不幸である僕を。
幸福にするために。
不幸な僕に幸福を届けるために。