相談
いや、ほらタイミングとかあるし。
それがほらたまたま偶然に重なるとか、そういうものだから。
いちいち気にしていたら、息すら困難になってしまって、それこそ本末転倒、自縄自爆とかそういうものだ。
まぁ後味が悪いとか妙な罪悪感というのかそういったものが、服の内側に残ってまとわりついているようで、気持ちが悪い。
「そんなに繊細ぶることもないでしょ」
「生徒の相談をなんだと思っているんですか、結城先生は」
相談すべき人間を間違えたのか、結城先生は今日の天気予報の話題並みに、アッサリとながし、缶コーヒーを飲み干していく。
「生徒をよく見ているからこそよ、井上君に、もし私が結婚式に呼ばれて内心離婚しろとか思っていた友人が本当に離婚したけれど、どうしようと相談したら?」
「結城先生、何繊細ぶっているんですかと言いますね」
結婚式に結城先生を呼ぶ友人がいるとも思えない。
それはまぁおいといて、缶コーヒーをがぶ飲みし、自分でかいに行かずに僕に買いにいかせ、空になった缶をそこらへんの床に転がしているズボラで図々しく図太いような人が、離婚したのが自分のせいかもと思うなんて、想像しにくい。
「失礼な事考えているわね」
「失礼な、先生が失礼なだけですよ」
「まぁ、結局のところ井上君が繊細ぶっても何一つ得しないから気にしないほうがマシってことよ井上君のせいじゃないから安心安心」
「溜息が出そうなくらい適当ですね」
確かに気にしないほうがマシってことには変わることけれども、もう少しぐらい親身になってくれてもいいだろう。
まぁ相談されてもどうしようもないのは認めるしかない。
そう結論付けたところで、結城先生は忘れてた忘れてたとつぶやきながら新たな缶コーヒーを開け始めた。
「あっそれとさっき連絡があって明日からバイトしばらく来なくていいみたいよ」
「そうなんですか?」
「そっ、動画の爆発事故の件で警察が色々とね」
「めちゃくちゃ不安が高まって来るんですけど!」
「あぁそうだ井上君どこか旅行いかない決して雲隠れじゃないけど」
「いや、何煽っているんですか、今しがた僕のせいじゃないと結論だしたじゃないですか」
まるで僕のせいかもみたいな感じでおちょくて、本当にロクな大人じゃない。
「まぁ井上君が関係しているかは知らないけれど警察が出入りしているのは、本当よ何せ別の動画配信者もキラキラデイズの開封動画で爆発事故があったから」
「うわっ」
「だから安心して、井上君のせいじゃないわ」
そこ安心したところで、なんか不安がさらに変な場所に移るだけなんですが。
「まぁ人の不幸の上で安心できる井上君は中々に業が深いわね」
したり顔で頷く結城先生は、実にロクな大人じゃないと思い、抗議の意味をこめて先生の缶コーヒーを1本、無断であけて飲み干した。