方向性の違いって痴話げんか
手紙ともことの経緯とも取れる報告書のデータがスマホに浮かんでいる。
僕はソレを声にだして読まねばならない。
「南野社長から何も聞いていないの?あのこが何て言ってきたの?」
山小屋に逃げ込むように入ったらトムちゃんが目をまるくしたが、南野社長の言いつけで来たことを伝えると、
解散についてやめてもらえないだろうかとの趣旨を伝える前にくい気味の質問をされてしまった。
聞いたかもしれないが、覚えていないとは言えず、スマホに何か転送とかされていないかとさがしているとソレらしいファイルがあったのでソレを開いたところ、声に出して読んでと命令に近く大きな声で言われた。
時折カラカラと回る山小屋の中央にでんと置かれた糸車の音が相槌をうつだけで、キュアトロールは期待はずれのために押し黙っていたし、小豆柄のはちまきとパジャマ姿で枕を抱きしめる姿とは真逆に鋭くこちらを睨んでいた。
そして僕は息を吸いながら読み始めた。
どこへ行けばいいというのだろう
どこへ行くというのだろう。
迷うものなどありはしない。
迷ってはいけない。
変わらぬものなどありはしない。
変わってはいけない。
進むのがいやならば立ち止まってしまえば良い。
立ち止まりたくないなら
眠ったまま幸せを手に入れられるなら、それは夢とよんでもいい。
たとえ不幸でも立ち向かうことを夢とよんでもいい。
興奮につぐ興奮でよく覚えていません。
ただ色々なことが心に突き刺さり、心から抜けていくのは覚えています。
言い争う中でいつか誰かの忠告を思い出しました。
きっと後悔すると。
私が言ったのか、彼女が言ったのか、それとも別の誰かだったのか。
それでも私は彼女に対して酷いことを言ってしまったし彼女も酷いことを言ったのです。
お互いさまということにするには無理だとも思う気持ちがある反面、それでもつなぎとめたいのかもしれません。
やり直すことはできないのでしょうか。
そう思う気持ちはあります。
此処までよんでスマホから顔をあげると、いまだに鋭くこちらを睨んでいた。
からからと山小屋にあるのも不思議な大きな糸車からカラカラと回る音が聞こえるほどに答をまっていた。
まるで続きがあるのだろうということが分っているかのように。
何故二人の仲が悪くなったのか分らなかった。
いやほんの一文が残ってはいるが、そちらを見てもよく分らなかった。
それでも誤魔化しようもないだろうとため息をつきながら読んだ。
私が枕投げでもしたいねといったのが酷い侮辱だというならば、彼女が言った小豆洗いなんてゆるきゃらに成り下がった癖にといったことも侮辱だと思うのです。
この一文を読んで本当に思う。
アイドルとかの方向性の違いってよくわかんない。
「なんとか仲直りしてやりなおしできませんかね」
そう言うしかないぐらいのものである、確かに本人たちがいかに深刻だとおもっていても。
「それは無理、もう私新たなパートナーと手を組んで世界を征服してやることに決めたからそうして後悔させてやるわ、枕返しを侮ったことをね!」